日本のドーピング事情と認識のズレ

昨日のニュースから一夜が明け、ツール・ド・フランスの順位表からフランク・シュレクの名前が消えて寂寥を感じる。

ちなみに宇都宮ブリッツェンの監督でもある栗村修氏のブログでも触れられていた。

が、その中のこの言葉に妙な違和感を持ってしまった。

 「薬物使用とは無縁の国内レース界」

もちろん、自分のチームのことならご自身が一番わかっているので「無縁」と言い切れるのかもしれないし、日本のロードレース界を牽引する者としての自負も含んでいるのかもしれない。

が、忘れてはならないのは、世界的に見た日本への評価は正反対で、日本はいわゆる「ドーピング対策後進国」と思われているということである。

確かに日本人は古来から続く武道にしろ、スポーツに精神的な強さも求める傾向にあり、精神性も重んじる真面目な国民性に対する認識から、日本人であればドーピングをする人は少ない(決して「いない」ではない)という認識を持つであろうが、別の国の人からしてみれば、「うちの子に限ってそんなことするはずありません」って言ってる母親と大差ない。

ちなみに日本のドーピングに対する意識の低さは古くからあり、1964年の東京オリンピックでは「あがり止め」として精神安定剤を飲んだ選手が退場扱いに、1984年のロサンゼルスオリンピックでは男子バレーボール選手がトレーナーから渡された漢方薬を検査で摘発され、1989年のスキージュニア選手権では風邪で新ルルA錠を服用した女子選手が「運悪く」ドーピング検査対象として選ばれてしまい失格となった。



1995年の札幌国際ハーフマラソンでは、意図的な利尿剤の摂取が優勝者から検出されたにも関わらず、IOCが規定する2年間の出場停止に対して日本が下した措置は3ヶ月の出場停止。結果、当該選手は1996年のアトランタオリンピック代表に選ばれている。

また、管理者側のドーピングに対する認識の甘さに加え、日本は絶対的な検査数自体が少なく国際的な批判も浴びている。事実、1996年のIOC総会では、日本が名指しで当時の医事委員長から「日本のドーピング対策は遅れている」と批判された

日本の国技とされる相撲ですら、ドーピング検査が実施されるようになったのは2009年からとごく最近である。

なにはともあれ、冒頭の言葉が日本語の記事で良かったと思う。これがもし英語のインタビュー等で欧米の関係者に目を通されるものであったなら、「無縁」と言い切ってしまう日本のドーピングに対する認識の甘さを露呈する格好の的となり反発必至であっただろう。


7 件のコメント :

  1. とある自転車乗り2012年7月20日 1:12

    意外ですね、自分も日本人はドーピングと無縁とは言わないまでも、かなりクリーンという認識でした。
    実際にどうなのかはさておき、世界的にはドーピング後進国なんですねぇ。
    確かにドーピングに対する各選手の知識ってそれほどでもなさそうなイメージですし、厳しく罰する雰囲気もないかもしれません。
    ちなみに自分は学生選手ですが、たまに試合会場などでドーピング講習やってたりします。
    大きな大会では検査もあり、実際出場停止になった選手もいますが、頻度は少ないと言わざるを得ません。
    もちろん学生連盟の予算の少なさが一因ではありますが。。。

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  2. 初心者ロードレーサー2012年7月20日 10:03

    私も一般的には日本人はドーピング違反をしないクリーンな方だと思ってます。一方でドーピングをしない傾向があるというのとドーピング検査をしなくてもいいかというのはまた別問題として捉えられているようです。特に風邪薬等、故意でない場合に知識不足から失格になってしまった実例があるだけに、ドーピング講習含めて知識の底上げが必要になるのかもしれません。
    あとは現在は簡単にインターネットで中国やアメリカから個人輸入できる時代だけに、物流がボーダーレスになるなら規制の方も国際基準に合わせる必要があるのでしょうね。実際、その中国は広島アジア大会で集団ドーピングが見つかった国でもありますし。

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  3. 格闘技はまさにそうでしたね。日本発のK-1、PRIDEはドーピング検査は一切やっておらず、UFCは第三機関に検査を依頼するなど、天と地でした。
    ��参考URL:http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/other/text/200902210007-spnavi.html、
    http://allabout.co.jp/gm/gc/212920/)
    格闘技と一緒にするなという意見も多く出そうですが、例のマラソン選手のwikiでも、選手を擁護する内容ですしね。そういう意味では、ドーピング「対策」後進国(ドーピングの使用の有無ではなく対策が)
    プロ選手の認識もこのブログ(http://probike.cocolog-nifty.com/teamukyo_tsuji/)を読む限り不勉強感がありまくり。
    フェアプレーに関する認識の違いなのかもしれませんが。

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  4. 初心者ロードレーサー2012年7月22日 0:26

    番長さん、格闘技のドーピング情報ありがとうございます。たしかにWikiを見ると、合成物質の(通常の飲食物にはまず含まれない)フロセミドが検出されたのにも関わらず「不運にも」と運扱いにされてしまってますね…。格闘技にしても他のスポーツにしてもやはり意識の違いというのがあるのだと思います。辻選手の記事は私も読んで同じ思いを感じました。もう少し掘り下げおきたい箇所なので早速今日のエントリにて取り上げさせていただきます。

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  5. 日本には悪質なドーピング常習者が多数存在する?
    えっ

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  6. 偽物ニンゲン2012年12月12日 19:50

    初めまして。
    日本人は無知無関心を高潔・健全と勘違いすると言えますね。
    不適切なトレーニングが横行し、筋肉嫌いという珍妙な嗜好がよい例です。
    日本の場合は、ドーピングよりも未成年崇拝によるホルモン抑制の薬物が好まれたりして。
    それでは。

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  7. 初心者ロードレーサー2012年12月13日 3:28

    はじめまして。たしかに日本と比べるとアメリカではマッチョがむしろ市民権を得ているというか、フィットネス雑誌を見ても、筋肉ムキムキのモデルが誌面を飾っています。この点、細マッチョのCMが流れていたような日本だと筋肉隆々の体は逆に敬遠されてしまうのかもしれませんね。

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