ありきたりな旅行はしたくないという香港旅行者には、この「香港サイクリング」をお勧めしたい。
いわゆる「観光名所を回って飲茶してショッピングしておしまい」というフツーの香港旅行とは違い、まさしく「地元の人と同じような余暇」を過ごすことができるだろう。
Wikipediaの広東語ページにも、「『到沙田踏單車』亦是不少香港人假日的消節目之一」(「沙田まで行ってサイクリングをする」のを休日の過ごし方の一つにしている香港人も少なくない )と記載されているほどである。
実際、川、湾沿いの自転車専用道路を走っていると、香港人のカップルやグループと度々すれ違う。それだけ「地元の人の遊び」なのである。
■なぜその場所まで行ってサイクリングをするのか
山がちで交通量が多く、(都市部の※)土地が狭く、人が多い香港では、ニューヨークのようなサイクリングシティと違って自転車専用道路がどこにでもあるという状況ではなく、新界といった限られた地域の沿岸部などで整備されているのみである。
一方で、中国人の足である自転車は依然として人気があり、都市部の喧噪の中で暮らしている香港人としても自然の中でサイクリングをするのは望むところなのである。
※日本人は香港と聞くと、人混みで溢れかえっていて看板で埋め尽くされているのをイメージする人が多いが、それは自然保護の裏返しであり、香港の陸地の4割は自然保護区域で自然に溢れかえっているのである。そのせいもあり、もともと狭い香港の、人が住めるエリアに人が溢れかえるという状況になる。
もともと、輪行はできずともレンタル自転車でも借りて、香港島一周や九龍半島を走りたいと思っていたのだが、香港人の義理の姪に聞いたところ、香港は道が狭くロードバイクで走れるような道は少ないこと、ニューヨークと違って車道など走ってたら香港警察に捕まることもあるということを教えてもらった。実際、車道を見るとタクシーやら2階建てバスやらで道路が埋まっており、自転車が走れるような状況ではない。地元の人の足としての自転車は、ロードバイクとはほど遠いスピードで歩道をチリンチリンと走っているママチャリである。というか、ニューヨークでなぜ華僑の中国人は歩道を走るのかの理由がやっとわかった。彼らは香港から来てるから、「自転車は歩道を走るもの」という観念ができてしまっているのである。
という背景もあって、アメリカのように道路が延びる限り好きなルートを走りまくれるという状態ではなく、整備されたサイクリングロードを走るという楽しみに方に限定されてくるわけである。
■おすすめのサイクリングプラン
レンタル自転車屋は、サイクリングロードが整備されている場所に集まっている。
そしてほとんどの店で、他の場所で返却ができるようになっている。(借りた自転車屋まで戻ってくる必要がない)
つまり、「A地点まで電車で行って自転車を借り、B地点まで走って自転車を返却し、B地点で電車に乗って帰る」というのが香港人も利用する王道パターンである。
で、「A地点」のお勧めは大圍(Tai Wai)である。
大圍は駅とレンタル自転車店の距離が短く、駅から徒歩1分圏内に数件の店が集まっている。大埔の場合、自転車屋が集まっている東昌街には駅から徒歩10分弱かかる。その上、大圍からは城門河を起点として馬鞍山方面と、大埔方面への2コースがある上、距離を伸ばしたい場合には大埔の先の大尾篤で返却することもでき、コース的にも選択肢が豊富である。
ちなみに最長のコースを行きたい人は、馬鞍山から大圍を通過して深圳近くまで行って馬鞍山まで帰ってくるという選択肢もある。
■自転車の借り方&コミュニケーション
ちなみに広東語で「自転車」は「單車(daan ce ダーンチェー)」という。中国語(普通話)の「自行車(ce xing che)」とは異なるので注意。
ここまで説明しておいてなんだが、広東語は声調が9つ(解説によっては6つ)あり、イントネーションで全く意味が変わるので、広東語に自信がない人はカタカナ読みをせずに、英語で話した方が店の人に怪訝な表情をされないで済むと思う。
カタコトでいいので、Rent bicycle, Return bicycleに加えて、Sha Tin、Tai Wai、Tai Poなどの地名を言えば通じるはずである。日本人ならではの筆談という手もあるので、単語と地名が漢字で書ければ意思の疎通はできる。筆談用広東語を後掲するので参考にしていただきたい。
■筆談用サバイバル広東語
租單車 (自転車を借りる)
交單車 (自転車を返す)
幾錢(いくら)
在~ (~で)
大圍 (Tai Wai)
馬鞍山 (Ma On Shan)
沙田 (Sa Tin)
大埔 (Tai Po)
大尾篤 (Tai Mei Duk)
身份證 (身分証)
護照 (パスポート)
廁所 (トイレ)
■体験記
あいにくというか、なんというか、香港のテレビでも暑かったというほどの酷暑の日に走ることになってしまったが、天気予報を見ると、その他の日だと気温は低くなるものの雨が降るとのことで決行。Garmin Edge 500の温度記録をみたら華氏100度を超えていた。
まずは大圍の駅から徒歩1分のところに自転車屋が並んでいる。
数件ある自転車を覗いていると「自転車レンタルするかい?」と声をかけられたので条件等を聞く。一台50香港ドルで、大埔で返却するということでレンタル。レンタルにあたっては、名前と身分証番号、電話番号を伝える。電話番号などは途中でアクシデントがあったり、いつまでも戻ってこなかったりするリスクがあるので、ある意味聞かれるのは当然かもしれない。ちなみに香港ではセブンイレブンで簡単にプリペイド電話カードを買えるので、簡単に一時的な電話番号を持つことができる。
自転車を乗り捨てる際の引き替え券には、返却場所(というか大埔の支店)の地図もついている。
自転車はどれを選んでもいいというので、ロードバイク(もどき?)を選択。
出発前に、旅行中に自転車に乗るためにわざわざ持ってきた、Garmin Edge 500を取り付ける。
まずは台座から。Garmin Edge 500は705などと違ってゴム紐で固定するので簡単に取り外しができる。705系のケーブルタイ(別名では、結束バンド、タイラップ、インシュロックなど)では外すのが大変なので、このような一時的な装着には最適といえる。
次に本体を接続。
そして出発。大圍から流れている城門河の北側にある川沿いのサイクリングロードを走り出す。
コースとしてはこのような感じ。Garmin Edge 500のGPSログより。
ちなみにこのロードバイクには手前にもブレーキがついている。
暑い香港の夏も、自転車で風を受けながら走ると爽快になるから不思議だ。
ところどころトンネルを迂回して通る。
ひたすら川沿いを走る。というか荒川沿いを走っていた頃を思い出す。
沙田付近を走っているとサイクリングロード沿いにもレンタル自転車屋がある。
サイクルウェアにレーパンを装着している地元の香港人ライダーとすれ違う。が、見るとわかるようにロードバイクに乗ってる人が少ない。
サイクリングロードではまさしく自転車専用道路。歩く人のスペースはかなり狭くなっている(道路右側に注目)。
冒頭で紹介したとおり、香港人カップルにも人気があるデートコースとなっている。
さらに中学生らしきグループもサイクリングを楽しんでいる。
しばらく進むと吐露港(Tolo Harbor)という湾岸沿いの風通しのいい直線に入る。
白石角海濱長廊という名称がついている。
側には科學園(Science Park)という、オフィスエリアとその他施設が一体になったような場所が。
サークルKもある。
サイクルショップもある。が、品揃えは・・・入って1分で出てきた程度だと思っていただければ・・・。一応水とジュースも売っているが、それならサークルKに行けばよいかと・・・。ちなみに品揃えの割にリカンベントが多かった。
飲み物を補給がてら休憩。
こちらはジャスミンウーロン茶。
ちょっと苦めの白茶。
ふと見ると本格派サイクリストが。といってもやはりロードバイクではない。
ちなみに結構奥まった湾になっているので景色も綺麗。
こちらは馬鞍山方面。
再び走り出すと、やっとローディーに遭遇。
また、と思ったらこちらはロードバイクではなかった。
ここから大埔まではストレートコースが続く。
道ばたで飲み物を売ってる人も。
そして目的地の大埔市街に近づいていく。
目的地の自転車屋に到着して無事返却。ちなみに大埔ではこの東昌街という通り周辺に自転車屋が集まっている。
最寄り駅の大埔墟から電車に乗って終了。
■結論
ぶっちゃけ普段Zone5で心拍数トレーニングをしているような人には、トレーニングにはならない。
ただ、香港で自転車に乗ってサイクリングする機会なんて滅多にないんだから、自転車好きであればぜひ一度は味わってみていただきたい。
熱帯の風を受けて、椰子の木が揺れる中をサイクリングするのはこれまた気持ちがいいものである。
地元の香港人に混じって走れるのも、ジモティーになったような感じでなかなか面白い。
今回は事前に調べて行ったのだが、英語のページにしろ広東語のページにしろ情報が少なくて困ったので、チャレンジしたい人はコメントいただければ詳細を載せるのでご連絡いただければと思う。
ブログ記事を見て、香港に行ったような気分になりました。
返信削除筆談用サバイバル広東語 を見ますとやはり、北京語とは大分違うようです。
トイレは同じようです。
ありがとうございます。臨場感が出せるように写真を多く載せるように心がけていますので、そう言っていただけるとブログ冥利に尽きます。広東語は香港と広東省でも単語が異なったりします(冷氣機と空調など)。あと香港は繁体字で大陸は簡体字ということも大きい違いですね。日本語はどちらかといえば繁体字と共通している漢字が多いので、日本人にとっては繁体字の方が筆談しやすいかもしれません。
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