ニューヨークのロードレースコース紹介:セントラルパーク

■世界一有名な公園は?

世界一有名な公園といえばどこであろうか。

思いつくのは、アメリカではグランドキャニオン国立公園ヨセミテ国立公園イエローストーン国立公園エバーグレーズ国立公園といったところであろう。

他にもイグアスの滝がある南米のイグアス国立公園、アフリカのヴィクトリアフォールズ国立公園、ギアナ高地にありエンジェルフォールを含むベネズエラのカナイマ国立公園などを挙げることができる。

しかし、これらはどれも、公園そのものがユネスコの世界自然遺産に指定されていたり、東京都○個分という広さであったりして、市民の憩いの場としての公園というよりは、むしろ自然保護区域といったイメージに近い

一方で、世界一有名な都市公園といえば、まず挙がるのがセントラルパークであると思う。


■一般的な「セントラルパーク」

セントラルパークはニューヨーク観光の名所にもなっている。

セックス・アンド・ザ・シティ、ホーム・アローンといった映画やテレビからサリンジャーの小説まで、様々なメディアへの露出も多く、メトロポリタン美術館やグッゲンハイム美術館、アメリカ自然史博物館といった世界的に有名な美術館、博物館の類も周囲に擁する。

園内でもシェークスピアやメトロポリタン・オペラ、ニューヨーク・フィルハーモニーによる無料野外公演が行われる。



これらの一般的な名所、イベントについては、いろんなサイトで既に紹介がされているので、ここではセントラルパークのもう一つの顔、春から秋にかけて毎週のように行われているロードレースという視点からご紹介をしていきたいと思う。


■ロードレースコース、「セントラルパーク」

全長6.07マイル、約9.7kmのサーキット。

セントラルパークループと呼ばれる、園内の一番外側にある道路を一周することになる。



マンハッタンという名前が「丘の多い島」という意味に由来するように、全体的に適度なアップダウンが続く。

現在のスタート・フィニッシュラインは、東側の79丁目付近に位置する丘の上である。


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スタート後、メトロポリタン裏手の丘を下ると、フラットのようだが微妙に上り勾配になっているイーストドライブのストレートが伸びる。(写真はメトロポリタンの正面側)


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クレオパトラの針を左手、グッゲンハイムが右手に見えるあたりがストレートの中間を越えたあたり。



ストレートを越えると左右の緩いコーナーが2回続き、イーストハーレムに入るとセントラルパークで一番きついシケインが登場。


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このシケインは下り勾配での左右コーナーとなっているため、クラッシュ、落車の発生頻度も高い。

シケインを越えるとセントラルパークの北端、110丁目のセントラルハーレムに突き当たる。


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そこから8%程度の短いヒルクライムを経てウエストドライブを南下することになる。


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ウエストドライブは東側に比べてアップダウンが多いが、シケインのような減速区間もないため、リズム良くスピードを乗せながら駆け抜けていくことになる。


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湖を左手に見ながら南下していくと、59丁目のコロンバス・サークルの南端に突き当たり、センタードライブの1車線となるレーン縮小コーナーを経てイーストドライブに入り馬糞ゾーン※に突入!北へ進路をとる。


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左右に緩く曲がるコーナーで72丁目のテラスドライブを横切るとそこからは上りが続き、ヒルクライムの頂上、79丁目で一周終了となる。


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■※馬糞ゾーンについて

ちなみに、イーストドライブの南側にある馬糞ゾーンについてだが、観光客向けの馬車が撒き散らしているもので、まるで万年雪が如く存在し、雨だろうが雪だろうが常に馬糞がある。特に新鮮な馬糞があったときは最悪で、乾燥前の柔らかいものがタイヤにへばりついたら涙目である。

なぜこのゾーンにだけ馬糞が多いのか考察したことがあるが、おそらく観光客の多いミッドタウンから馬車に乗ってセントラルパークに入るのが南東の入口であること※1、馬車のコースとしてイーストドライブの59丁目入口から72丁目のテラスドライブまでが一番メジャーであること※2、車が行き交う公道から園内に入って馬がリラックスすることなどが原因であると思われる。

��※1:セントラルパークループは時計回りなので、南の入口から入ると必ずイーストドライブを北上するルートを取ることになる)

��※2:72丁目からは徒歩でメトロポリタンまですぐに行けるし、セントラルパークを散歩しながら反対の西側に行けばアメリカ自然史博物館、そしてすぐ横が地下鉄の駅という、観光コースとしては完璧なルートなのである。)

セントラルパークといっても広いので、テラスドライブを越えて治安の面でも良いとは言えないハーレム方面にまで馬車が行くことはほとんどなく、実際、テラスドライブ以北を走っている馬車は見たことがない。



なにはともあれ、都会のオアシスであるセントラルパークは、ロードバイク乗りにとっても格好のトレーニングの場となっており、週末はもちろん、平日でも朝からマンハッタンのローディー達が走っている。

ところが、ニューヨーク市警の取締強化事件もあり、自由に走れるトレーニング環境が制限されているのも確かで、ニューヨークのローディーの悩みの種となっている

■読者投稿1 セントラルパークローディーさん

昨日、近所のセントラルパーク行ったんです。セントラルパーク。
そしたらなんかニューヨーク市警がめちゃくちゃいっぱいで自由に走れないんです。
で、よく見たらなんかサイクリストを止めて、250ドルの違反切符切ってるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前らな、取締り強化如きで普段来てないセントラルパークに来てんじゃねーよ、ボケが。
観光地だよ、観光地。
なんか親子連れとかもいるし。一家4人でセントラルパークか。おめでてーな。
よーしパパもう一周しちゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、観光マップやるから美術館でも行けと。
セントラルパークってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
勝手にドラフティングしてきた奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、
差すか差されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。
で、やっと巡航できたかと思ったら、犬の散歩してる奴が、横断歩道でもないところでゆっくりと横切ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、セントラルパークで犬の散歩なんてベタすぎるんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、犬の散歩だ。
お前は本当にセントラルパークで犬を散歩させたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、ニューヨーカーを演じてる自分に酔い痴れたいだけちゃうんかと。
セントラルパーク通の俺から言わせてもらえば今、セントラルパーク通の間での最新流行はやっぱり、
時速40km巡航でドラフティング、これだね。
高速でドラフティングしながら前のロードバイクが跳ね上げた馬糞を被る。これが通の走り方。
40km/h越え巡航ってのは一周14分半で走れる。そん代わりスピード制限違反※。これ。
で、それに信号無視。これ最強。
しかしこれをやると次の周回から警察にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前らド素人は、馬糞を垂れ流す観光馬車にでも乗ってなさいってこった。

��※セントラルパークの制限速度は時速25マイル(40km/h)です。)


一方で、「自由に走れるトレーニング環境」というのは、裏を返せば、非ローディーから見れば傍若無人な振る舞いであり、特に犬の散歩やジョガー、観光客、家族連れにとっては迷惑な存在になり得るのも事実である。

■読者投稿2:セントラルパークファミリーさん

このあいだ、家族で近所のセントラルパークに行ったんです。
そしたらメガネかけた太った男性が、こっちをじーっと見てるんです。
最初は、4歳になるうちの娘を見てるのかと思ったんですが、何か違います。
「お前らな、観光マップやるから美術館行ってろ。」とかブツブツ言ってるんです。
園内は涼しいくらいなのに汗だくだし、とにかく気味が悪いんです。何なんでしょうか?
「お父さん早く~。もう疲れてるの~?」息子の声で我に帰りました。「よーしパパもう一周しちゃうぞー」
「わー、お父さんすごーい」 家族4人、楽しいひとときのはじまりです。
一家団欒ってのは、こういう事を言うんでしょうね。
すれ違う人たちとも思わず微笑んだり微笑み返したり、
セントラルパークはこういう雰囲気がいいですね。
そのうちにさっきの彼が私の隣を通り抜けざまに、「時速40km巡航でドラフティング」と叫んでいるんです。
私も「巡航」ぐらいは知っていますが、「ドラフティング」って何なんだろう?と思いました。
しばらく走っていると、さっきの彼が警察に捕まって取締りを受けてたんです。
彼は警察官の話しを聞いていないのか、下を向きながら、、「・・・最新流行・・・・これ最強・・・警察にマーク・・・諸刃の剣・・・」とつぶやいてるんです。
その時、インターネットに詳しい会社の同僚の話を思い出しました。
この人は「セントラルパーク通ぶってる常連男」に違いない・・・。
迂闊な事をすると小1時間問い詰められ、この楽しい一時を台無しにされるかもしれない。
一家の長として、私は家族を守らなければなりません。
どうすれば、どうすれば・・・と考えていたら息子が「パパー、この人の顔、う○こついてるよー。どうして?」と大声で言ったのです!
彼の方を見ると顔を真っ赤にし、全身から汗を吹き出してぶるぶる震えていました。
もうダメだ。小一時間問い詰められてしまう!と覚悟していたら、彼は違反切符も受け取らずに泣きながら走り去って行きました。
実は小心者だったんですね。
彼は彼で、自分の世界を、「セントラルパーク通の自分」としてのアイデンティティを守るのがせいいっぱいだったのでしょう。
彼の世界は、うちの息子の一言で壊れるくらいもろいものだったのです。
遠くを見ると、彼は警察に捕まってボコボコにされた後、パトカーでしょっ引かれていきました。
私はペダルを漕ぎながら考えました。セントラルパークはもっと自由であるべきじゃないだろうか。
ゆっくりサイクリングしたっていいじゃないか!パパもう一周しちゃってもいいじゃないか!
通ぶるのはやめて、もっと自由にセントラルパークを楽しめばいいんですよね。
今度彼にあったらそう話してみようと思いました。小一時間語り合えばきっとわかりあえるはずです。
その後、セントラルパークに何度も足を運びましたが、まだ彼とは出会っていません。
いつか彼と出会ったら、いっしょにサイクリングしたいと思っています。


こういう状態の中で、レースをするにあたっての役得としては、公園管理局かつニューヨーク市警の許可を得て交通規制をした上でのレースであるため、それらの取締り等を気にせずにセントラルパークを思いっきり走れることであろう。

時速25マイルを越えようが、赤信号だろうが警察公認で走れるのはとてつもなく気持ちがいい。

それだけでもレースに参加する価値があるというものである。(クラッシュさえなければ…だが…)

取締云々は横に置いておいて、サイクリングコースや観光コースとしても素晴らしいと思う。

まだセントラルパークを走ったことがない方は、輪行した自転車でも、レンタル自転車でも良いので一度走ってみていただけたらと思う。その際に本エントリのコース紹介が参考になれば幸いである。


4 件のコメント :

  1. 白橙アクア2012年3月8日 10:59

    いつも楽しく見ています…が今回は最高でした!
    なぜかジョジョ第一部の濃い絵柄で、馬糞を宙にまき散らしながら集団ゴールスプリントする初心者ロードレーサーさんの姿が脳内にw
    セントラルパークの写真もきれいで……
    (つд⊂)ゴシゴシ
    ��;゚ Д゚) …!?
    その蒼白スペシャと2WAYにフィットなホイールは…!?

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  2. フラッシュネタだっけ?
    10年ぐらい前だよね。。。
    フォーマットの忠実度と
    完成度の高さに、笑いました。
    ぜひ、swf(動画)版も見たい!
    これの多摩サイ・バージョンも作れそう。。。。

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  3. 初心者ロードレーサー2012年3月9日 4:55

    はい。馬糞をものともせず、「俺は人間をやめるぞ!」といった感じで走ってます(笑)
    ちなみにスペシャのロードバイクとカンパのShamalのホイールは、今のマドンに乗る前にメインで乗っていたロードバイクです。今はTacxに繋げてローラー専用状態になって勿体ない使い方をしてしまっていますが…。
    そういえばウィンブルドンのニコ動リンクありがとうございました。おかげさまでテニス好きの知り合いの会話にも入ることができました(^^)

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  4. 初心者ロードレーサー2012年3月9日 4:57

    Yurossiumさん、
    はい。いわゆる吉野家コピペであります。
    定期預金バージョンだったり、いろんなバージョンがあるので、オマージュでセントラルパークバージョンを作ってみました。ぜひ多摩サイ・バージョンも。荒川でもいけそうですね。

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