年収別仕事の目的アンケートから見えてくるもの

PRESIDENTで特集されていた年収別仕事の目的アンケート。

お金があると幸せになりやすいのか? 年収300万円台~1500万円以上の人まで貯蓄額、残業の多さ、出世欲から性生活の頻度まで、仕事と家庭のさまざまな面からアンケート調査した。



低年収ほど仕事の目的は「給料」 -年収別 幸せ実感調査

グラフでは一覧性に欠けるので表にしてみたのがこちら。

給料面白さ自分の成長社会貢献その他
300万円台60.5%8.5%7.5%0.0%23.5%
500万円台58.0%0.0%8.5%11.5%22.0%
800万円台52.0%14.0%0.0%15.0%19.0%
1000万円台46.0%20.0%0.0%13.0%21.0%
1500万円台42.5%0.0%13.0%22.5%22.0%


そしてこの表から読み取れる傾向および以下の点に注目してみたい。

  • 1500万円台の高収入になると仕事の面白さが無くなる
  • 1500万円台の高収入が一番自分の成長を求めている
  • 年収が上がるほど社会貢献意識が高まる
  • 年収が上がるほど給料の目的比重は低下するが、それでも給料が目的の第一位

1500万円台の高収入になると仕事の面白さが無くなる


これはなんというか意外だった。

800万円台、1000万円台と面白さの占める割合が上がってきているのに1500万円台になるといきなりなくなる。

「その他」項目があるのでゼロになったということはないだろうが、「その他」は全ての年収レベルで20%前後を保っているので、多少「その他」の中に入っているとしても、「面白さ」が急減していることは明らかである。

邪推するなら、800万円台、1000万円台は大企業で出世街道を登り続けている途中の段階としたら、1500万円台は登ったあとに辿りつく場所ということで、もはや面白さを感じる段階を終えている達成後なのかもしれない。

1500万円台の高収入が一番自分の成長を求めている


これはある意味納得ではある。

一見、年収が低い人こそ、自分自身の人的資本価値を高めて高収入を得るために自分の成長を求めそうなものだが、実際にはすでに一番年収クラスが高い1500万円台の人が、さらなる高みを目指して自分の成長を求めている。

逆に言えば、自分の成長を追求する向上心があるからこそ、結果として1500万円台という高収入を達成しているとも言える。

ただここでもおかしいのは800万円台、1000万円台の人は自分の成長を求めてないということ。

大企業の中堅クラスとしてのイメージがあるこのクラスは、日々業務に追われて忙しすぎて自分の成長なんてことを考える余裕が無いのかもしれない。

年収が上がるほど社会貢献意識が高まる


これはイメージ通りで驚きはない。

衣食足りて礼節を知るというか、自分のこと(つまり給料)で満足ができると社会や他者を思い遣る余裕ができるということだろう。

ただ、「社会貢献」を文字通りに捉えてはいけない。

自己を省みずに本気で社会のためを考えているのはごく僅かで、大半の「社会貢献」を掲げる人は、その実、社会から認められて自分自身の承認欲求を満たすという我欲に裏打ちされたものだろう。

社会や人々に貢献することで自己尊厳や承認欲求を満たすという点で、マズローの欲求5段階説にも通ずるところがある。

かのドナルド・トランプも、様々な寄付による「社会貢献」をすることで、自分の尊厳を高め、偉く見せるように不断の努力をしている

ニューヨークのハドソンリバー沿いを走るヘンリーハドソンパークウェイ。

ちょうど79丁目に差し掛かる高速道路にドナルド・トランプの名前が掲げられている。



そしてニューヨークのウェストチェスターにも、ドナルド・トランプの寄付によって設立された公園、その名も「Donald J. Trump State Park」がある。

2006年に436エーカーの土地を寄付して設立されたこの公園は、公園への全入口にトランプの名前を永久的に掲示することとなっている。



もちろん、トランプは無私無欲の聖人君子なのではなく、その寄付には彼の傲慢さ、「Respect me!」という叫びが見え隠れする。

でもそれでいいのだ。

動機がなんであれ、それで資金が拠出されて道路整備や社会福祉の向上に寄与するのであれば、何も拠出されないよりよっぽど良い。

案外、富の再分配というのは、政治家や御用学者のトリクルダウン政策なんかより、こういった「持てる者」のなんちゃって社会貢献意識の方がよっぽど役に立つのかもしれない。

年収が上がるほど給料の目的比重は低下するが、それでも給料が目的の第一位


そして注目の給料という項目。

通常の生活をするにあたって支出は変動が少ないため、年収が上がるほど給与に対する欲求が少なくなるというのは相対的に当然といえる。

が、それでも給料が目的のダントツ1位というのが大きなポイント。

その点では、PRESIDENTのコメントは本質を突いていない。

仕事に求める最大の目的を尋ねたところ、低年収ほど「給料」、高年収ほど「社会や人々へ貢献」と答える割合が多く見られた。

仕事を社会や他人に貢献し、承認を得ることの手段として考えている高年収層と、仕事はお金を稼ぐ手段と割り切り、そこでは自分が必要とされているという幸福感を得られない低年収層との違いが顕著に出ている。

実際のアンケート結果を見ると、給料目的が一番少ない1500万円台ですら、給料目的(42.5%)は2位の社会貢献(22.5%)に2倍近くの差をつけてダントツ一位となっている。

よって、正しくは「たとえ高年収であっても最大の目的は依然として給料」なのである。

結局給料があるからこそ、理不尽な指示や嫌な人間関係、非効率な仕事やサービス残業にも耐えるのだろう。

世の中には「給料だけがすべてじゃない」と言う人もいるが、すべてじゃなくても多数を占めるというのは真実である。

自分が給料のために働いているかを映し出す究極の質問は、「給料がもらえなくても今の仕事を続けるか」

例えば趣味の自転車。

フレームやホイール、選手登録料にイベント参加料・・・。

むしろお金を払ってまでして乗る義務のない自転車に乗っているわけで、個人の経済活動としてみれば単に損しているだけで何の経済的利益も得ていないわけである。

それでも我々は純粋な喜びのために自転車に乗る



自転車に乗るというシンプルな喜びに勝るものなどない

お金を払ってでも乗りたい・・・。

それと同じだけのモチベーションを仕事で感じることができるか。

このアンケートはその答えが「否」であることを証明してくれているのだろう。


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