UCIレース日記第七戦目:Cat5流ロードレースの楽しみ方

時間軸的関係でAeolusのホイールのエントリを掲載していたので、既に先週の土曜日のことになってしまったがレースレポートである。


■天候のコンディション

前回記載したように、金曜の早朝に出勤前ライドをしてホイールの調子を確かめて、いざ土曜日の本番。

と思って天気を確認すると、かなりの強風予報になっている。しかもレース会場は強風をモロに受ける旧飛行場のFloyd Bennett Field



リムハイト90mmのホイールにとっては最悪のコンディションかもしれないが、すでに出発時間も迫っているし、これも良い経験になるかと思い、Aeolus 9.0のまま出走することに。

Floyd Bennett Fieldまで南下していくとやはり強風で、突風でホイールが取られたりして大変である。そしてビニール袋やチラシが飛んできたり、丸型のゴミ箱がゴロゴロ転がってきて道を塞いだりと、レース前から不穏な空気が漂う。

そうこうしていると、他のレーサーと思しき人が前を走っている。しばらくして彼がスピードを落としてこっちを見ている。よく見たら、何度も同じレースを走っている黒人くんであった。「今日は強風だなぁ」などと会話をしつつ進む。すでに顔馴染みなのに名前も知らなかったのでそれぞれ名乗りあう。その彼、ラフィーは木曜夜のナイトシリーズのレースにも出ているとのこと。自分は仕事があって平日夜は無理なのでうらやましい。翌日のタイムトライアルは申し込んだかなどと話しをしていると到着。ちなみにこちらが彼のロードバイク。SpecializedのAllezである。ホイールはマビックのキシリウムを履いている。



思えば日本で普通に学校に通って、普通に就職した自分が、片やストリートギャングが闊歩しドラッグと暴力が支配するアメリカの黒人街で育ってきたラフィー(想像)と、ニューヨークで肩を並べてレースをしているというのは不思議な感覚である。人生なんてどこでどうなるかわからんなぁと思うと感慨深い。満員電車のサリーマン生活を送っていた頃には想像もしていなかった。



レース会場に到着してからも、受付の書類(ゼッケンの束等)が風で飛ばされたりと強風振りを発揮している。



Aeolus 9.0は目立つようで、他の参加者たちから何度か質問を受ける。どこのメーカーだとか、いくらするんだとか、チューブラーかとか。中には「おいおい、この強風の中をこのホイールで走るのかよ」と驚きながら話しかけてくる人もいて、「自分もこんな強風だとは思わなかったから心配だよ」と話す。



まだ10分近く時間があったのでゆっくりと一周する。路面状態が悪いFloyd Bennett Fieldでは水はけも悪いところが多く、ところどころ水溜りができている。試走をしておいてよかった。



一周したところで「Riders to the line」コール。スタート位置に並ぶ。女性も一緒に走るが、推定身長175cm前後で自分よりよっぽど体格がいい。




■レース&弱点分析

レーススタート。いきなりみんな飛ばす。自分も負けじと踏むが・・・。全然追いつかない。

なぜだなぜだと思ってギアを上げるも加速の伸びが悪い。と思ったら、フロントがインナーに入っていた

Floyd Bennett Fieldではオールフラットなので、あわててアウターにして追走。いきなり開きが出てしまった・・・。さらに先頭集団は結構飛ばしており、千切れてきたラフィーを抜かして追い続ける

ちなみにラフィーは基本的に自分よりも遅いレベルであると思われる。というのも、自分が千切れたレースでは必ず彼も千切れて自分よりも後ろでゴールしている。先週のセントラルパークでは数分、今回も自分より約2分ほど遅れてゴール。彼に負けたのはクラッシュに巻き込まれた時と、最終ラップで先頭を引き続けて力尽きた時くらいである。だが、すごいのは彼はそれでもめげずに走り続けてるということである。間違いなく参加しているレース数は自分よりも多い。その根性は感服に値するし、レースは最高の実践的トレーニングだとすれば、今後確実に伸びていくと思われる。自分自身、不本意な結果で塞ぎこんだりモチベーションが上がらないときもあるが、そんな彼を見習って気合を入れようと思う。

一周目中盤でなんとか集団に復帰するも、既にリズムがずれてしまい、こちらが疲れているところで集団は加速。さらに水溜りができているカーブでも遅れてしまい再び離されてしまった。

先頭集団から離されてしまったことを悔やみながらもひたすらペダルを回し続ける。

しばらくすると集団から千切れてきたライダーを何人か抜く。先に自分が集団から千切れたのに、後から千切れてきたライダーを抜いているということは、自分の弱点は単独走よりもドラフティング能力なのだろうなどと分析しながら走り続ける。

ちなみに強風の追い風のせいか、Aeolus 9.0のおかげかはわからないが、追い風区間はフラットながら時速50km巡航。最高速は時速60km越え。そこで一気に差を縮めに行くものの、コーナーで遅れが出てしまう。思えばこれまでローラー台三昧でエンジンの性能ばかり鍛えてきた上、プロスペクトパークにしろセントラルパークにしろ、たいしたコーナーもなくしかも基本的に左回り。つまり、Floyd Bennett Fieldの高速右コーナーはこれまでほとんど練習してこなかったのであった。

ちなみにFloyd Bennett Fieldはシンプルな周回コースだが、実は楕円ではなく台形のコース。単にアウトインアウトのコーナリングなら誤魔化しが効いていたのだろうが、他のライダーと競いつつ水溜りの海を避けながら鋭角コーナーを攻めるという状況になって自分の弱点が露呈したのだと思われる。

ドラフティングとレース中のコーナリング。どちらも今の自分に欠けている部分であり、実戦の中で学んでいくべき技術・経験であると感じつつゴール。



■ニューヨークのカテゴリ5レベル

気になるレース結果は去年の優勝者が惜しくも今年は三位。

・・・って、きょ、きょねんの優勝者?!

ご存知の通り(?)Cat5は10レースを完走すれば入賞してなくてもCat4へアップグレードできる。USCF(United States Cycling Federation)のサイトで名前がわかれば他のレーサーの成績とライセンス番号を確認できるのだが、去年優勝した彼は去年の他のレースでもCat5で何度か優勝、入賞しているほどの実力者。

ここで素朴な疑問は、なぜ昨年優勝してるような人がまだCat5で走っているのかということである。USCFでは、Cat4まではダウングレード(つまり自己申告による降格)が認められるが、一度Cat4に上がってしまうとCat5にはダウングレードして戻ることはできない。そのため、意図的にCat4に上がらずにCat5に留まっている人がいるのだと思う。

ちなみにUSCFのライセンス番号は登録順となっているようなのだが、去年ライセンス登録した自分は30万番台前半2003年に登録した人が20万番台前半ということがわかっている。一方、今回三位入賞した人は10万番台、シリーズレースのリーダージャージを着ている人も42歳で10万番台なので、少なくとも2002年以前にはレーサー登録して10年近くレースを走るなりしていたと思われる。

そういえばレース中でも1分前にスタートしたCat4やマスターズのカテゴリの選手を抜くことが何度かあった。今回のレースでも1分前にスタートしたCat4のレーサーを何人か抜いたが、必ずしもCat4>Cat5であるわけではないことをあらわしているのかもしれない。確かに10年近くCat5で走っていればベテランレーサーであり、周回中に前にスタートした他のカテゴリ選手を抜いたりしても不思議ではない。

なぜアップグレードしないのかについては、もしかしたらCat5に残って新人潰し&優越感に浸っているのかもと邪推することもできるが、客観的にCat4とCat5で異なる点として、走行距離の違いがある。

基本的にカテゴリが上がれば上がるほどレースの走行距離が長くなるため、レース時間も余計にかかることになる。この点、中距離を得意として長距離より中距離で競いたい人はむしろCat5に残る選択をするかもしれない

さらにそこにはアメリカの文化的要素も影響しているかもしれない。仕事よりも家族を大事にする人が多いことからも判る通り、家庭というものを重視するスタイルでは、自分の子供も含めて家族との時間を確保するためには、早めに趣味の時間(ロードレース)を切り上げなければならないのかもしれない。

実際に、自分は4時半に起きて6時半からレーススタート。近場の場合は8時頃には帰宅できるが、休日ということもあり、帰宅した時点でまだ家族は寝てたりすることもあるので、そういった意味では家庭生活に影響を与えないという点でCat5の距離はベストかもしれない。

また、キリスト教圏のアメリカでは教会等の影響もあるかもしれない。基本的にレースは日曜早朝に行われることが多いが、同じく日曜午前中にはニューヨークの至る所にある教会で日曜礼拝が行われる。教会の日曜礼拝の時間が午前中の場合には、それこそ上位カテゴリでFloyd Bennett Fieldを50周も回っていたら教会に行けなくなってしまう。

ということで、単に新人イビリや優越感という理由ではなく、上記のような家族的、宗教的な理由で趣味と家庭、趣味と宗教を両立させた結果、仕方なくCat5に留まらざるを得ない場合もあるのかもしれないと思う。

ちなみに年齢層も基本的に高い。40歳台~50歳台の人も多くいる。というかシリーズレースのリーダージャージの彼は42歳だし、上記で触れた去年の優勝者も42歳である。

彼らはまさしく生涯スポーツとしてロードレースを生き甲斐にしているのかもしれない。




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