ペダリング考察:ぼくは筋肉で嘘をつく

前回と前々回の反省・・・


ペダリング考察と銘打っておきながら前置きだけで前回、前々回ともに筋肉雑誌の話で終わってしまいました・・・。

すでに前回までの前菜(筋肉エントリ)だけでお腹いっぱいになっちゃった状態なのですが、せっかくですのでペダリング考察についてちゃんと話を終わらしておきたいと思います。

ということで今回は脱線もなく真面目にいきます。

というかそもそも冷静でクールなこのスタイルが初心者ロードレーサーの姿なのです。

聡明な読者の方は察していらっしゃると思いますが、前回までは無理をしてわざと変態のフリをしていたのです。

元々変態なのと変態のフリをしているのとでは天と地の差があります。

たとえばあなたの目の前に全裸にネクタイの男がいきなり現われたとします。

間違いなく彼のことを変態だと思うはずです。

でもちょっと待ってください。

実は違うんです!

なぜ彼が全裸でネクタイなのかに想いを馳せてみてください・・・。

そう!病床の息子を元気付けるためにわざと全裸にネクタイの格好をしていたのです!

それを知った瞬間、彼への変態の評価は180度変わり、感動と尊敬の念を抱くことになるでしょう。

ということで、今回は脱線もなく真面目にいきます。

ストリクトとチーティング


そもそもなぜ筋肉の話になったかというと、ストリクトとチーティングの違いを意識した状態でそれをペダリングに反映させるというアプローチを取りたかったからです。

ウェイトトレーニングをしたことがある方はご存知かと思いますが、通常ワークアウトで用いられるのはストリクトです。

ストリクトとは、トレーニング対象の筋肉にのみ効かせるようにウェイトを挙上することで、部位を決めてトレーニングをする場合にはストリクトの考え方は必須です。

一方でチーティングとは、対象部位以外の筋肉を連動させたり、反動を使って挙重する方法で、ストリクトよりも重い重量を持ち上げることができます。

しかし、単純に重量だけ見ればストリクト以上の重さを持ち上げていても、実際にターゲットとして鍛えたい筋肉は逆にストリクトよりも使われていないということが起こります。

その結果、「重量と挙重回数だけでみれば十分に行っているのに、いつまで経ってもターゲットにしている筋肉が成長しない」という悲惨な状態に陥るのです。

チーティングとその対策の具体例


ストリクトとチーティングの例としてわかりやすいのはアームカールです。

アームカールは上腕二頭筋をターゲットにしたワークアウトですが、反動を使うことで高重量を挙げられてしまいます。

そのため、反動を使えないようにしたカール台を使ったアームカール(プリチャーカール)を行うことでチーティングを防ぐことができます。



また、カール台といった設備がなくても手軽にストリクトを実現するために、アームブラスターという器具も売られています。



身近なところの例としては、誰もが体育の時間にやったことのある腕立て伏せやスクワットもチーティングをしているケースが多いです。

腕立て伏せははたから見るとピョコピョコしているような速さで上体を反動で上下させてるだけというケース。

スクワットも両手を大きく動かした勢いでしゃがんで立って、単なる屈伸のようになってしまっているケース。

レッグプレスでは、勢いをつけたり妙に背中を反って押し出したりするケース(高重量の場合は関節を痛めるので良い子は決してマネしないでください)。

体育の授業で腕立て伏せをしている小学生の子たちは、「チーティング」という用語すら知らずにチーティングをしていることでしょう。

このように、そもそもストリクトとチーティングの違いを意識していないと、そこらかしこでいつの間にかチーティングをしてしまっているという事態が多発することになります。

チーティングはフォームを崩し、特に高重量を扱っている場合は筋断裂や関節損傷の原因にもなるので、通常はチーティングを行わないように意識してトレーニングします。

BIG3でも、ベンチプレスは胸骨損傷、スクワットは膝関節損傷、デッドリフトは腰椎損傷の危険性をチーティングは孕んでいます。



あえてチーティングをする場合


このように、基本的にチーティングは避けるべきトレーニング方法なのですが、上級者の場合は敢えてチーティングを行う場合があります。

これがチーティング法と呼ばれるもので、筋肥大停滞期に陥ったときに、反動を使って通常以上の高重量を挙重することで筋肉に刺激と負荷を与え、プラトー状態を打破するのに使ったります。

また、通常のレップスを終えて最後のもうひとレップというときに、ストリクトでは確実にフェイル(挙重失敗)する際にあえてチーティング法を使って限界突破をする場合もあります。

一方、ボディビルディングにおいてはむしろデメリットの方が多いチーティングですが、ウェイトリフティングの世界ではチーティング法の方が王道といえます。

ご存知の通り、ウェイトリフティングは筋肉部位の優劣ではなく、純粋な挙重重量での勝負になります。

競技を実際にご覧になった方はわかると思いますが、スナッチにしろクリーン&ジャークにしろ、全身をバネのように反発させ、爆発的な瞬発力で一気に頭の上にまで高重量をもってくるわけです。



そしてチーティング法が有効なのは自転車競技にもあてはまります。

ペダリングでチーティングを意識しているか


自転車競技におけるペダリングもウェイトリフティングと同じく、「反動でも他の筋肉でもなんでも使っていい」わけです。

剛性やフレームの反発、しなりといったものも、換言すれば「反動によるチーティング法を使うために適した機材」を追求しているということになります。

ダンシングでバイクを振る(振れてしまう)のも、重力と反動により筋肉をセーブしたチーティング法といえるでしょう。

たしかにチーティング法など知らなくても、乗り込むことで自然と体が効率的なペダリングをするようになるかもしれません。

一方で、ストリクト的なペダリング癖がついてしまっていると、本来ならもっと出力が出せるのにそのテクニックを使ってないがゆえにすぐに筋肉が疲れてしまって出力が続かないという場合もあるかもしれません。

ストリクトとチーティングという違いを意識しているかどうかで、ペダリング時の理論的な裏付け、引いては効率的なペダリングの再現性にも影響を及ぼしてきます。

自分は今どの「力」を使ってペダリングをしているのか、大腿四頭筋中心なのか、それとも重力、反動、反発といった力を使って「チーティング」しているのか。

また、ストリクトにより個々の筋肉部位が意識できていると、ペダリングに使っている主動筋を切り替える意識を持つこともできるようになります。

内側広筋をメインに使ってきて疲労してきたら大腿二頭筋に切り替えたり、腸腰筋や腹斜筋、はたまた上半身の筋肉を動員して下半身の筋肉を休ませるといった引き出しをつくることができます。

私自身、ここ1、2年全くロードバイクに乗れていないのに、過去の自己リザルトと比べてそれなりにパフォーマンスを落とさずに維持できているのはこのチーティング意識の効果によるものかと思っています。

イメージとしては「ペダルを回すために使えるものがあればなんでも使う」

それが重力だろうが反動だろうが他の筋肉だろうが。

大腿四頭筋が使えなくなればハムストリングを使うし、



下半身が使えなくなれば上半身を使う、



各筋肉の疲労具合と相談しつつ、まだガソリンが残っている筋肉を動員して各筋肉をローテーションさせながらリサイクル・・・。

それはあたかも自分の筋肉と会話をしているかのようです・・・。



特に長いタイムトライアルやヒルクライムでは自分自身との戦いになります。

意識は内へ・・・

自分の筋肉たちとの対話をしながら乗り越えていく・・・



それはまさにヨガの境地にも通ずるものがあり・・・

ある意味最高の自己修行の場なのかもしれません・・・。

7月後半には40kmのタイムトライアルが待ち構えています。

1時間、内なる自分とのコミュニケーションを楽しみたいと思います。


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