だが外は雨模様。天気予報を見ても雨。
ただロードバイクはオールウェザースポーツ。We ride rain or shine.である。そもそも道路が濡れていれば、ドラフティングでびちゃびちゃになるので、道路が濡れている時点で雨が降っていようがいまいが関係ない。
あらかじめ雨だとわかっていれば気持ち的にも問題ないので、ジップロックのビニール袋に携帯や紙幣を入れて出発。
サングラスも、紫外線量で色が変わる(紫外線が少ないと透過率が高くなる=レンズの色が薄くなる)調光レンズに切り換える。そもそもサングラスは前の自転車が跳ね上げる石や当たってくる虫等から目を保護する役目があるので、雨の日は逆に必須である。(といいつつ着けてない人もレースでは見かけるが…)
外を走っていると、ザアザアではないが、ポツポツでもない。普通の雨。
レース会場に到着。昨日よりはさすがに少ない。シリーズレースの最終回ということもあり、総合優勝に関係ない人たちは敢えて参加しに来てないのかもしれない。ということは逆に、総合優勝争いに残っているようなレーサーが参加しており、強敵揃いということである。心配だ。
スタートラインに並ぶと、レーサーのうちの誰かが「みんな、クラッシュするときは他人を巻き込まずにクラッシュしてくれよ」と叫ぶ。
雨のレース。クラッシュ確率はあがるので気をつけたい。が、地面は濡れているのでもし転倒しても擦過傷は少なくて済むかもなあなどと考えてしまうのであった。
■レーススタート
レーススタート。
だが、いきなり1周目のヒルクライムから脚が重い。
ステージレースの最終回となっては、山岳賞もスプリント賞も個人的には関係なし。昨日はアタック、逃げにスプリントと無理をしたので、集団の中で休み休み行こうと考えながら周回を重ねる。
5周目、山岳賞の鐘が鳴ると、次の周の山岳賞に備えてドンから指示が飛ぶ。「先頭を牽いてデヴィッドをアシストするぞ!」と。デヴィッドは山岳賞ジャージを着ており、今日もキープすれば総合山岳優勝が決まる。
チームプレイとくれば自分も頑張らざるを得ない。「Follow me!」の掛け声に従ってドンと一緒に先頭に上がり、集団を牽き始める。
途中まで牽いたところで、「最後のヒルクライムでアシストしてもらうから今は後ろで休んでろ」と言われて後ろにつく。
ドン、ジョー、デヴィッド、自分の順で、うちのチームメンバー4人が先頭でトレインを組む。というかデヴィッドの後ろにいたのではデヴィッドを牽けないので、デヴィッドに一声かけてデヴィッドの前に出る。
ドンが途中で後ろに下がり、ジョーがヒルクライムの手前まで牽く。
ヒルクライムが始まる15秒前のあたりで自分が代わって先頭を牽く。
ぶっちゃけエースクライマーのアシストは気が楽である。というのも、山岳王ラインを切るときにちょうど全力を出し終わるのと違い、どこでフィニッシュするかを考えずに、とりあえず上れるところまでひたすら全力で上ればいいからである。ひたすら全力で上っていって、疲れが出てきてペースが落ちるときにエースクライマーを発射させればいい。
ヒルクライムで駆け上る。
ペダルを踏み、
さらにペダルを踏む。というかこうしてみるとReynolds Thirty Twoの低いリムハイトもシンプルな感じで良い。
自分の脚が尽きてきたところでデヴィッドが「Thank you!」と叫んで後ろから飛び出していく。というか速い。まさしくヒルスプリントである。
そのままデヴィッドがぶっ千切りで山岳を獲る。
集団はすでにかなり離れており、デヴィッドがぶっ千切り、離れて自分、またまた離れて集団という状態になっている。
3人(自分含む)のロケット発射台がずいぶん効いたらしい。
その勢いで自分も山岳を2位通過。
デヴィッドはけっこう前を走っており、それ以上に後ろとの差は空いているが、デヴィッドもまた集団に合流するのだろうと思い、自分も脚を休めながら単独走行。(思えばここが判断の分かれ道だった…)
しばらくして集団が追いついてきて、集団に合流する。
そして集団の中で走りつつ数周。2回目の山岳賞の周回に入る。
と、周りを見渡すとデヴィッドがいない。
まさか1回目の山岳のまま逃げ続けているわけでもなかろうに、もしかしたらパンクか何かでリタイヤでもしてしまったのかと思う。
とりあえずデヴィッドがいないまま、特にヒルスプリント争いも起こらずに、自分は集団の中で2回目の山岳を通過。
8周目の終盤、集団のペースが落ち着いたところでウォーターボトルに手を伸ばし水分補給。ウォーターボトルを戻そうとするところで、振動があり、雨もあって手が滑って落としてしまう。昨日散々文句を言って(というか頭の中で思って)いたが、自分も落としてしまうとは…。というか、状況によっては落としちゃうものなんだなと納得。とりあえず後で探すことにしてレースに集中。
そしてファイナルラップ。
前から5~6番目をキープしてゴール前1km。
先頭を走っていたドンが遅れ、他チームの3人が前に出る。
少し離されているが自分もそれに追いついて先頭4人。
一番前の1人が遅れ出して他の2人が右に、自分が左に出て並んでスプリント状態。(ここでも今から思えば右に出て3人トレインを継続すべきだった…)
ただ、自分たち4人の後ろで脚を溜めていたレーサーたちが追い上げてきて、混戦の中6番目でゴール。
最初にゴールした1人が両手を挙げて喜んでいたので、おそらくデヴィッドは逃げを決めていたわけではなかったのだろうか、ということは自分は6位だろうかなどと思いつつクールダウンの1周に入る。
��後でわかったのだが、彼がデヴィッドの逃げを認識していたのかどうかはともかく、2位でも1位でも総合優勝は決まっていたのでどちらにしろ両手を挙げていたのだと思う)
クリスが話しかけてきて、「最後のスプリントでは速かったなぁ。自分を発射台に使ってくれてよかったのに」とのこと。というか3年連続で総合スプリント賞を獲った人から言われると恐れ多い。彼はスプリントで脚を使っていたからで、明らかに地脚力は彼の方が上である。
クールダウンの終盤、ウォーターボトルを8周目に落とした付近で探す。レース係員にも「ウォーターボトル見なかった?」と聞くが、見ていないとのこと。結局見つからず、スタート・フィニッシュラインに戻る。
貼り出された着順表を見ると、1位にデヴィッドが入っている。
なんと彼は独りで逃げ切って、2回目の山岳賞もスプリント賞も、ステージ優勝さえも総取りしていたのだ。後で聞くと、最終的には2分の差を付ける怒濤の逃げを見せたとのこと。彼の実力と気迫には見事としか言いようがない。
と同時に、思えば山岳賞やスプリント賞で飛び出した瞬間は、集団も「山岳賞のために全力で飛び出したんだから、山岳賞ラインを切ったらまた集団に吸収されるだろう」と思っているので、絶好のアタックチャンスなのかもしれない。
1回目の山岳賞のあのとき、自分とデヴィッドが集団から大きく先行していた状態だったので、自分も集団に戻らずに、デヴィッドに追いついて一緒に走る選択肢を取っていれば、途中の山岳賞やスプリント賞も含めて2位フィニッシュができていたかもしれないと考えてしまう。
Cat4で初めての入賞、7位。1回目の山岳賞でも2位に入ったし、おかげで全体の総合ランキングにも名前が載った。
アシストクライマーとしてエースクライマーに山岳を獲らせ、チームの仕事もこなしつつ、個人でも7位でフィニッシュすることができたので上出来であると思う。
が、素直に喜べない自分がいる。
気持ち的には敗北感の方が強い。
それはやはり、デヴィッドに見せ付けられた土曜の自分との格の差である。
「やはりソロでの逃げは無謀だ」と思った翌日、彼はソロでの逃げを成功してみせた。
確かに雨ということもあり、集団のペースも土曜に比べて遅かったが、そんな言い訳など意味がないくらいのインパクトだった。
力の差を見せ付けられ、自分はまだまだだと感じざるをえない。
単独での逃げだろうが勝てる奴は勝てる。おそるべしデヴィッド、おそるべしバイシクルハビタットの店員である。
■ロードバイクという趣味でお金が入ってくるということ
一方で、7位ということで賞金が出た。USACでは、カテゴリ5に賞金を出すことが禁止されているので、カテゴリ5ではメダルくらいだが、カテゴリ4からは賞金がもらえる。
中身は35ドル。金額的にはたった35ドルであるし、これまで使ってきたロードバイク費用から見れば、ひとえに風の前の塵に同じである。
しかし、これまでお金が出て行くことしかなかったロードバイクという趣味で、自分の脚の力でお金が入ってきたというのは感慨深い。
初めてのカテゴリ4のレースでチームプレイをしたときにも分配金(6ドル)をもらったが、今回はソロで、自分が入賞しての獲得だったためその感慨も格別である。
これからは「初心者ロードレーサー」改め、「35ドルの脚を持つ漢(おとこ)」と名乗りたいと思う。
と書いていて、実際に文字に起こすと随分と貧相な脚に見えるので、思った矢先だが前言撤回したいと思う。
■Reynolds Thirty Twoのインプレッション
そういえばReynolds Thirty Twoの初実践投入ということだったので、インプレッションでも書きたいと思うが、レースレポートとはトピックも変わるので次回エントリにて取り上げたいと思う。
■ウォーターボトルその後
ちなみにウォーターボトルは賞金を受け取った後にまた戻って探したら、ゴミ箱の中に入っていた。
さっそく救出して綺麗に洗って使い続けている。
35ドルの賞金と入賞おめでとうございます。
返信削除ご挨拶が遅れましたが、いつもコッソリ拝読させていただきました。
現地での生活もそうですが、一つ一つレースをこなしていくレポートを大変大変興味深く拝読しております。
読んでいてどうなったのか一瞬不安に思ったのですが、ディビット氏はそのまま逃げ切っていたのですな。臨場感つたわりました。
今後とも、落車などには気をつけて参戦ください。レースレポート楽しみにしております。
いやーすごいね。参戦ではなく一度応援に行きたいけど、Brooklynは遠いなあ。Prospect Parkを久々に走りたいので、車買ったら一度行ってみますが。あとは、CatskillのYoutube見ましたが、一度走ってみたいですね。地獄のトレーニングということで。
返信削除35ドル漢さま>
返信削除いつも楽しく読ませて頂いております。
思うに、デイビッドを追わなかったことが、集団に蓋をすることになり、結果、デイビッドの逃げを成功させたことに繋がったと思いますがどうでしょうか?
spacewalkerさん、
返信削除ありがとうございます。
レースによってはレースマーシャル(係員)が、「~秒差で逃げられてる!」と叫んでくれたりするのですが、今回はそれもなく、レース中は状況がどうなってるのかわかりませんでした。
今後もレースレポートをあげていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
かめらいだーさん、
返信削除引越し目前にありがとうございます。これからはHenry Hudsonに繰り出しやすくなりますね。
車をお持ちになったらぜひプロスペクトパークにお越しください。久しぶりにライドをご一緒したいものです。そして来年に向けてCatskillsライドも。
ワイン漢さま、
返信削除私も気付いていなかったご指摘ありがとうございます。
逃げの体勢になった(山岳が終わった)時点で、私から見て、後方集団が振り返っても見えないほど先行、かつデヴィッドは見えるけど結構先を走っており、その後自分がペースを落として集団の中に入ったときには、集団の先頭で走らずにそのまま吸収されて集団内に収まったので蓋的な役割になったかどうかは微妙かもしれません。私に追いついた時点で集団に安心感ができてペースが落ちた可能性はありそうですが。
そんなこんなでいろんな思惑が渦まいて生き物のように進むレースがまた面白かったりします(笑)。
入賞おめでとうございます。
返信削除今回はイマイチ喜べなかったみたいですが、主さんの向上心があれば1位の栄冠に輝くのもそう遠くない事かと思います。
その日が楽しみですよ(・∀・)
しかし毎回写真が綺麗ですねー。
プロのカメラマンが撮るとこうまで違うものか。
ありがとうございます。いつか優勝できるように日々の努力を頑張りたいと思います。
返信削除写真は毎回感心するほど綺麗ですよね。彼は元カテゴリ4のレーサーだっただけあって、ロードレースの撮り方もツボを抑えている感じです。