受付を済ましてゼッケンを付けてレーススタート。もう20回以上レースをしているので慣れたものだが、やはりレースのときは気合と不安で適度なストレスが気持ち良い。
■レース開始
開始から数周はいつも通り進む。
途中、4周目で山岳賞の鐘が鳴る。が、シリーズレースの最後から2回目ということで、既に総合ポイントに食い込むような位置ではないため、ステージ優勝(入賞)に絞って走る。
そのため、山岳賞もスプリント賞も自分は集団の中盤にいてそのまま見送り。
6周目、ラスト2周か3周でアタックを仕掛けるという話しがチーム内で出ていたので前に上がり始める。その途中で、前方のレーサーがウォーターボトルを落とし、すぐ右前にいたレーサーがその上に乗り上げる。
「クラッシュ?!巻き込まれる?」と一瞬思ったが、上手く乗り上げたせいで、そのレーサーは転倒しなかった。が、ちょうど飲み口がこちらを向いていて、中身の水(透明だったので水だと思いたい)が、ブシュッと飛び出して自分にかかる。まあちょっとしたシャワーだと思いつつ、気にせず走り続け、6周目の周回中に先頭集団まで上がる。というか、結局、この日のレースではウォーターボトルを落とす場面を3回も見た。危なっかしいったらありゃしないと思いつつ、自分のウォーターボトルくらいちゃんと落とさずにしまえよと思ったのだが、これが次の日の自分への「フリ」になっていたとは…。
7周目が始まって50秒後のヒルクライムで、チームメイトのジムがアタックを仕掛ける。
自分もそれについて行き、ヒルクライムを上りきるまでに4人の逃げ集団ができる。
ジムが下がって黒人レーサーが先頭を牽き、自分がそれに続く。
そして自分が黒人レーサーに変わって前を牽く。が、ふと振り返るとジムももう1人もついてきておらず、そこから黒人レーサーと2人で牽き合うことになる。
後ろを見るが集団は見えない。2人だけでは心許ないが、このまま逃げ続ける。
3分の2周くらい牽き合ったところで、段々黒人レーサーの脚がたれてきて、自分が前を牽く時間が多くなる。
そしてついに黒人レーサーが遅れ出して、自分ひとりだけになってしまう。
さすがに独走では追いつかれるのも時間の問題だろう。と不安になりながら、7周目も終盤。
体中苦しく、肺も悲鳴を上げているが、先導車(というか先導バイク)の後ろを自分だけが走っているというのは気持ちがいい。
8周目に入るスタート・フィニッシュラインを通過するときに、すでにレースを終えたCat5のチームメイトが自分の名前を叫び、「Go! Go!」と応援してくれるのが聞こえる。
期待に応えたい思いでいっぱいだが、ぶっちゃけ「もう駄目だお。追いつかれるのも時間の問題だお」といった感じである。
そしてヒルクライムに突入。ちょうど2回目の山岳賞周回なので、少なくとも頂上までこのまま逃げ切れば2回目の山岳賞が取れる。
が、後ろからヒルスプリントをかけてきたクライマーたちが迫り抜かれてしまう。
これまで散々逃げて脚を使ってきた自分と集団とでは勢いが違い、一度抜かれると精神的な疲労もあってどんどん抜かされていくが、なんとかくらいついて集団内で落ち着く。
だがすでに残り1周半。
少しでも脚を溜めようと集団内で回復に努める。
しかし、ファイナルラップに入ると集団の速度も上がり、集団についていくだけで脚を使ってしまっている状態。
するとヒルクライムの手前で大クラッシュ発生。グシャグシャドシャバシューーーン!という、金属がぶつかり合う音と、花火のようなパンク音がこだまする。
クラッシュは集団の右側で起こり、幸い自分は左側にいたので少しラインが広がる程度で影響なし。
そして最後の気合を入れて、ゴールスプリント前には前から2列目ほどを確保。これまでの、ゴールスプリントで前を塞がれて全力を出せなかったときと違い、今度は前が空いていて全力を出せる状態。
ところが既に脚を使いすぎていて、せっかく全力が出せるのにその「全力」がもう残っていない。
少しでも順位を上げようとペダルを回すが、脚を溜めてきたレーサーに抜かれつつ、最終的には21位。
それでもチームメンバーの中では良い方だったので頑張れた方かもしれない。
■レース後
レース後、一緒にアタックを仕掛けたジムと話す。と、あのとき二人で一緒に逃げた黒人レーサーもやってきて、「やはり逃げを決めるには少なくとも4人は欲しいね」という話しをする。
自分的にはそれなりに納得の行ったレースだったと思う。
思うに、一番嫌なレースはパンクやクラッシュに巻き込まれてDNF(Do Not Finish)になることだが、次に嫌なレースは、挑戦もせずに終わってしまうこと。
例えば、ゴールスプリントのためにひたすら集団内で脚を溜め続けるが、最後になって集団の壁に阻まれて前に出れず、脚を溜めたまま全力も出せずに終わるようなレース。
一方、今回は、アタックをかけ、逃げ集団をつくり、最後のゴールスプリントにもまがりなりにも参加できた。
アタックも失敗に終わり、ゴールスプリント時には脚が残っていなかったのでレース戦略としては駄目だったが、挑戦した結果の敗北なだけに得るものもあったと思う。
そういえば例の黒人レーサーは、「後ろに集団が見えて、もう逃げ切れないと思ったから集団に吸収されて残り2周脚を溜めるのに専念した」とのこと。
駄目と見たら別の手段に切り替える思い切りの良さもまた、有効な戦略なのかもしれない。逆に自分のように、見込みのない逃げに拘ってしまっては、勝機を逃してしまうことにもなりかねない。これもまた経験、勉強である。とりあえず23時間後(日曜)のレースでは、この経験をさっそく活かしていきたいと思う。
■血沸き肉踊る瞬間
ところで、レース後、帰宅中に思い出したことがある。
以前、あれはまだ日比谷でサラリーマンをしていたときのこと(まあ今もサラリーマンしているが)。
当時は仕事が忙しく、会社の寮からの通勤も1時間半近くかかったので、朝7時前に寮を出て、帰りは夜11時~深夜1時。
まさしく一日の大半は仕事をしていて、寝るためだけに家に帰るという状況。休日は平日の疲れが溜まっていてお休みモードである。
昼休みに同僚のT氏と、「なんか血沸き肉踊ることはないかね~」と愚痴をこぼしあうのが癖になっていた。
そしてふと思うと、そんなセリフを吐くことがない今の自分がいた。
なぜなら毎週、血沸き肉踊っているからである。
特にレース中、アタックやスプリントの瞬間は全身の血が沸騰しているような感覚がある。
生きているという感覚、すごい「生」の実感である。
そういえば最近知り合ったチームメイトのウェイは、1994年からレースをしているとのこと。彼のUSACのライセンス番号は3桁台(ちなみに自分は5桁の3万番台)である。
「すごいベテランだなぁ」と感心すると、「いやいや、でもまだカテゴリ4ってことは実力がないってことだよ」と謙遜するが、それでも17年間レースに出続けるだけの魅力がロードバイクにはあるのだろう。
レースお疲れ様です。
返信削除今はまだ結果が伴わなくとも、「挑戦する」という行為自体が充実感につながるというのは分かる気がします。
私は、まだロードバイク半年の初心者ですが、このブログを読んでいると、色々参考になる記事も多く、またいずれ自分もレースに出てみたいなー、と良い刺激を受けます。
これからもブログ楽しみにしています。レース頑張ってください。
初コメ失礼しました。
やっぱりレースは熱くなりますね。
返信削除ガンガンアタック掛けて逃げたいですがこれには日々の地味な鍛錬が必須ですしね。
先導者の後ろを走るのは自分一人なんて最高に気持ち良いですからね・・それで勝つ
楽しみを知ってしまったら少しくらいの苦しさなど飛びますしね(笑)
やるだけやって尚、結果が伴うようにがんばりましょう。。
お疲れ様でした。
返信削除クラッシュに巻き込まれなくてホントに良かったですね。
それにしても毎週レースがあるというのはホントに羨ましいです。
日本にいては到底不可能なくらい経験値が稼げますものね。
初コメントありがとうございます。やはり何か挑戦してるものがあると気合やモチベーションも違ってきますよね。
返信削除私もまだまだ駆け出しレーサーなのでえらそうなことはいえませんが、今後もレースレポート等あげていきますので良い刺激になっていただければ幸いです。
Look566さん、
返信削除ちょうど日曜のレースでもそうでしたが、アタックを成功させる人を目の当たりにすると日々の鍛錬の重要さを実感します。
私もいつか勝てるように頑張りたいと思います!
ライカさん、
返信削除クラッシュは集団のどこにいるかでかなり運に左右される部分も多いのでいつも不安です。
さすがに集団内で、すぐ前の人が倒れたら避けようがないですし…。
毎週レースがあるのはありがたいです。実戦が最高のトレーニングになっている感じです。
ちなみにベルギーでは毎日どこかで自転車イベントが開催されてるそうです(笑)。