Jコインの本質:電子マネーとポイントとビットコインとの比較

Jコインの特徴


みずほフィナンシャルグループのJコインが2018年に発行されるらしい。

みずほフィナンシャルグループ(FG)はデジタル通貨「Jコイン」を2018年に発行する。来年3月までに実証実験を始める。スマートフォンでQRコードを読み取り、決済する仕組みを整える。コイン加盟店が負担する手数料は、クレジットカードより安く設定する。ほかのデジタル通貨や電子マネーと交換できるようにもし、20年の普及を目指す。

「Jコイン」決済手数料、カードより安く 18年発行へ

特徴のひとつはスマホでの決済に特化しているということ。QRコードを読み取るだけでスマホで支払えるという、どこか隣の国で普及しまくってるやり方を日本でも実現させる気らしい。

スマートフォンでQRコードを読み取り、決済する仕組みを整える。コイン加盟店が負担する手数料は、クレジットカードより安く設定する。ほかのデジタル通貨や電子マネーと交換できるようにもし、20年の普及を目指す。



Jコイン手数料、カードより安く デジタル通貨 みずほFG、来年発行

もうひとつの特徴は、ブロックチェーン技術を使わないということ。

ブロックチェーンを使わないのだから、決済処理は集中管理され、台帳も公開されないし、第三者にサーバーがハッキングされれば改竄も可能。

つまり、ブロックチェーン技術のメリットと呼ばれるものは全てなくなる。

さらに1円=1Jコインで価値が固定される

この二つの特徴により、ビットコインに代表される他の仮想通貨とは一線を画することになる。

が、実用性を考えるとむしろその方がいいと思う。

日常の決済手段としては価値が円に固定されていた方が使い勝手がいい。

ブロックチェーンが使われない点についても、実際、EdyやSuica、ビックカメラのポイントカードまで、現金決済の代わりに使える電子マネーやポイントは集中管理方式だが大きな問題もなく現在も運用されている。

となると、電子マネーと何が違うの?ということになる。

基本、電子マネーと変わらない


Edyでは、Edy内にチャージされた額が「○○円」と表示されるが、Jコインでは「○○Jコイン」という単位に変わる。

が、単位が違うのは表示上でしかなく、1円=1Jコインなので実質的な価値としては同じである。

また、Jコインでは決済手数料が安くなるということだが、「Edyで支払うとポイントがつくからEdyにチャージしてから使う」というのと何も変わらないわけである。

そして相手がそれに対応していないと駄目(EdyならEdy支払いを受け付けていないと、JコインならJコイン支払いを受け付けていないと)というのまで一緒。

さらに消費者にとっては消費者負担の手数料はない(Edyで支払っても手数料を取られない)わけだから、消費者視点ではさらにその違いはなくなる。

唯一違うのは、Jコインでは利用者間で送金ができるということだが、そもそも日本円であれば普通に送金ができる。

メリット・デメリットを比較


この点、それぞれのメリットとデメリットを比較したものが以下になる。

日常生活における利用において、他の手段に比べてメリットになっている場合は背景を緑、逆にデメリットになっている部分は赤にしてある。

Jコイン電子マネーポイントビットコイン日本円
利用場所対応店舗対応店舗対応店舗対応店舗どこでも
利用者間
移動
口座要不可不可口座要口座不要
価値の担保発行体か供託?供託発行体なし国家
対円
価格変動
なしなしなしありなし
物理的利用不可不可不可不可可能
円との交換双方向?一方通行不可双方向交換不要

次にそれぞれについて掘り下げてみたい。

利用場所


まずは使える場所だが、仮想通貨や電子マネーやポイントは対応店舗でないと使えない。

コンビニ支払いが可能な電子マネーは支払い可能な場所が多いが、逆にポイントは利用範囲が限られ、例えばビックカメラのポイントはビックカメラでしか使えない。

一方、楽天ポイントのように他のポイントと交換可能な場合は、他のポイントに交換するというワンクッションおけば複数個所にまで利用範囲を広げられる。

ちなみにビットコインが使える店はやはりオンラインショップが多く、実店舗でもマルイ、ビックカメラなど増えてはいるもののまだまだ少ないと言わざるを得ない

Jコインはまだ導入前なので使える店は皆無だが、電子マネーやビットコインと同じような感じになるのだと思われる。

なお、最も利用範囲が広いのは法定通貨の円。オンラインショップはもちろん、コンビニだろうが駅ビルだろうが田舎の商店街や駄菓子屋でだって使うことができる。対応店舗数を比較できたらその数は圧倒的だろう。



利用者間の移動


電子マネー、ポイントは基本的に利用者間で移動させることは不可。

Jコイン、ビットコインは仮想「通貨」と名乗るだけあって利用者間で移動できる。

が、移動する場合でも両者ともに対応口座を持っていないといけないし、口座番号も必須となる

そして最も移動手段が豊富なのが円

口座を持っていれば振込もできるし、口座がなくても住所がわかれば現金書留で送れるし、直接渡すこともできる。



価値の担保


次の比較項目は、その価値を誰が担保しているか。

まず、ポイントカードのポイントは発行体の信用力に依存している

たとえばヨドバシカメラのポイントであればヨドバシカメラが潰れてしまえば無価値になる。

一方、電子マネーの場合は前払いで円を預けているという性格上、資金決済法で未使用残高の一部を供託することが定められているため、チャージした電子マネーは発行体の信用リスクからはある程度切り離されている(つまり、楽天が潰れても楽天Edyは無価値にはならない)。

Jコインはまだ不明ながら、銀行口座と同じように扱われるのであれば日本国から1000万円までの預金保証がつくものの、仮想通貨に国の補償が付くとは思えないので考えられる選択肢は二つで、みずほ銀行主体であれば1000万円以上の預金と同様に発行体が担保することになり、もっと開かれた企業体による管理になるのであれば電子マネー方式で供託のように個別の企業信用リスクとは切り離されて担保されるのかもしれない。

ビットコインは中央管理者不在という性質上、変動相場の現在価格のみが現在価値であって、特定の誰かが価値を保証してくれているわけではない。

そして一番価値の担保がされているのが円。

日本国がその価値を担保してくれているので、日本国が潰れない限り円が無価値になることはない。

日本国の信用とはすなわち国家を構成する領土、国民、主権によって支えられる国家資産の信用力であり、日本企業、日本国民、道路・港湾・土地などの有形資産、無形資産全てが資産価値を担保してくれているといえる。



対円の価格変動


ビットコイン以外は円に価値が固定されているのでその価値が担保されている限りは円と同じ価格で行使できる(うち、供託によって保全されていないポイントでは発行体が潰れれば対円の価格変動が起こりうる)。

一方ビットコインはご存知の通り大幅に価格変動し、先日も1日で29%下落したばかり

代表的な仮想通貨ビットコインの先週の下落幅は約5000ドル(約57万円)と週間で過去最大を記録。22日は1日の下落率が29%となり、リーマン・ショックなど他の市場の歴史的な急落記録を超えた。乱高下を抑える安全網が未整備で、投機マネーに翻弄される局面が続きそうだ。

仮想通貨バブルに転機 ビットコイン、1日で29%急落

もちろん、円の場合はそもそも円それ自体なので「対円の価格変動」を考える必要すらない



物理的な利用


仮想通貨だけでなく、電子マネーやポイントはあくまで電子的な記録でしかないので、物理的に保管したり、物理的に移動したりということができない

一方、円の場合は、ATMで引き出せば電子的な記録から物理的な硬貨やお札に「現物化」することができる。

タンス預金よろしく自宅に保管しておくこともできるし、友達に渡すことも思いのまま・・・。



円との交換


電子マネーは基本一方通行で、電子マネーにチャージすることはできても戻すことは通常不可(解約や破綻時の払い戻し等では可能だろうが)。

一方、ポイントは購入時等に付加されるため直接現金を使ってポイントにチャージすることは基本できない(アメリカではマイレージを金で買えたりと例外はあるが・・・)。

ビットコインは仮想通貨というだけあって、もちろん円からビットコインにすることも、ビットコインを円にすることも可能だが、そもそもBidとAskのスプレッドは大きく手数料は高い

Jコインも仮想通貨と謳う以上、ビットコイン同様に双方向で交換可能になると思われる。というかチャージしかできないのだったらそれこそ電子マネーと変わらない。

Jコインで送金手数料が安くなっても、受領したあとにJコイン対応店舗でしか使えないなら意味がないので、ビットコインと同じく双方向で交換可能になるのだろうが、問題は手数料がどうなるかである・・・

ちなみにもちろん円の場合はそもそも交換という概念自体不要なので手数料云々も関係ない



まとめ:日常使いなら仮想通貨より本物通貨


こうしてみると、Jコインといっても、円に価値が固定されている点(1Jコイン=1円)や利用範囲は電子マネーと大差なく、「仮想通貨」と呼ぶこと自体憚られる「なんちゃって仮想通貨」だが、そもそも表面的な言葉に惑わされないことが大事である

「電子マネー」自体、その本質は「マネー(通貨)」というより「プリペイド型のお財布」でしかなく、実際に資金決済法の法律上でも「前払式支払手段」と呼称されている

フィンテックという言葉もここ数年に一般化した言葉だが、フィンテックに分類されるPayPalは15年以上前から同様のサービスを始めているので「フィンテック?何を今更」という後付け感があった。

AIという言葉も最近さかんに取り上げられてきているが、「質問に答えるだけでAIが投資商品をオススメする」というサービスが、AIでもなんでもなく単にIf then構文だけで作れるYes/Noチャートをブラックボックス化しただけだったりと、言葉だけ1人歩きしている感もある。

ポイントカードに代表されるポイントも、当初は当該店舗でのみ利用可能だったのが、最近では相互で交換が可能だったりEdyにも交換できたりするので電子マネーとの境目がなくなってきている。

肝心のJコインも、そもそも1Jコイン=1円で固定されているなら円使えばいいじゃんということになる。

なぜならJコインで実現できることは全て円でも実現できるからである。

こうして考えると、法定通貨である円はなんと使い勝手が良いことか。

はっきりいって他の追随を許さず、わざわざ使いにくいJコインにする意味がどこに?と言いたくなる。

それでもあえてJコインの利点があるとすれば、スマホ対応と、決済や送金の手数料が安く済むということであり、ニュースメディアでもその利点が取り上げられている



が、賢明な読者諸君はすでにお気付きの通り、「スマホで個人間でお金のやりとり」、「QRコードを読み取るだけでスマホで支払い」のどちらも、仮想通貨にする必要性はどこにもなく、円で実現すればいいだけである。

逆にJコインでわざわざやりとりをするとなると、いったんJコインに両替する必要がでてしまうので、手順としてはむしろ手間が多くなる。

QRコードによる支払いは、単に決済手段としてスマホアプリを使ったスマホのデビットカード化ができれば実現できるので、その間にJコインという両替手順を入れることは大いなる無駄でしかない。

とどのつまり、Jコインがメリットだと訴えている本質は、仮想通貨ではなく決済手段のスマホ化なのだから、注力すべきは新しい通貨を作ることではなく、新しい決済手段を作ることなのに、「仮想通貨」を前面に押し出しているのは問題の本質からズレまくっている。

また、安い手数料がメリットというのであれば、「円自体で手数料を安くできれば最強」であるので、むしろ各企業には円のまま手数料を無料化する仕組みを作っていただいた方がよっぽどビジネスチャンスになるし消費者にとってもメリットになる

実際、アメリカでは他行口座宛の銀行振込(ACH)は手数料無料が基本(一部有料の銀行もある)の上、前述したPayPalでもPayPal残高だけでなく関連付けてある銀行口座の残高を利用してドルの国内無料送金ができるので、円でも同様のことができないはずはなく、それができるならそもそもJコインの意味もなくなる。

かくいう自分も、マンハッタンでの飲み会で手持ちが無かった人からPayPalで支払ってもらったことがあるが、Jコインで未来の姿として描かれている「飲み会の精算をスマホで」が、JコインのJの字も出てくる前にアメリカではすでに行われていたのである。

そして上記で比較した通り、ほぼ全ての面で円がその利便性、優位性、汎用性で上回っている

結局、日常使いでは法定通貨が最強なのだから、既存の円という通貨をベースに、その支払い手段だったり送金だったりといったサービス向上、手数料削減に注力するべきで、大企業が揃ってこんな無駄な舵取りをやってるから現場の残業が減らない割に日本企業の競争力も弱く、フィンテックでもアメリカや中国の後塵を拝しているのである。


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