欧州遠征記9日目:ルクセンブルクのエッシュシュルシュール

バストーニュを発った車は国境を越えてルクセンブルクに入る。



国境といってもシェンゲン協定があるEU内ではパスポートのチェックもなく、一時停止する必要もない。ちなみにシェンゲン協定は、その名が示すとおり、ルクセンブルクのシェンゲンで締結された協定である。

今では25ヶ国に広がっているシェンゲン協定も、最初に締結された1985年時点では、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、西ドイツ、フランスの5ヶ国のみであった。そういう意味では、今回訪れた3ヶ国は1985年からの「国境なき国家間」なわけだから、国境越えに違和感がなかったのも当然であるのかもしれない。



ルクセンブルクに入国しても、地形的には「アルデンヌの丘陵地帯」であることには変わりはなく、スタヴロ付近と同様に山道が続く。



ガソリンスタンドで休憩。



マンゴー風味のアイスティー。中々美味。



さらにハインツトマトケチャップのポテチ。これは今回の旅のポテチの中で一番のヒットであった。



裏を見ると、オランダ語、フランス語、ドイツ語、英語の4ヶ国語表示。




■エッシュシュルシュールへ

初めに目指すのは、ルクセンブルク北部のスモールタウンであるエッシュシュルシュール(Esch-sur-Sûre)



Diekirch地区Wiltz郡に位置する、ルクセンブルクで2番目に小さいコミューンであり、2005年時点での住人数は314人。



蛇行するシュール川に挟まれた場所に町が出来ている。



古城から撮ったこの動画を見ていただくと、蛇行する川の外側は手付かずの自然が、内側にはこじんまりと町が形成されている様がわかると思う。



古城を小高い丘の上に擁する街が見えてくる。



リカンベントでサイクリングしているおっちゃんも。




■エッシュシュルシュールの歴史

その歴史は773年にまで遡り、町の中心に位置するエッシュシュルシュール城(ドイツ語名でBurg Esch-an-der-Sauer)は、中世初期の927年にこの土地を自領と引き換えに得たMegingaudによって築かれた。



そしてその交換した場所とは、昨日ロードレースのゴール地点となったスタヴロ修道院である。昨日訪れた修道院が、今日、ここルクセンブルクのエッシュシュルシュールと歴史的に深い関係にあるとは興味深かった。



11世紀に、Esch an der Sauerの城主であったHeinrich1世が、ブイヨン城城主のGodfreyと一緒に十字軍に遠征したことで築城が滞り、結局Heinrich1世はメソポタミアでこの世を去る。13世紀にはゴシック様式で築かれ、15世紀には銃火器の登場によって城壁と二つの塔と、Lochturmと名付けられた円柱状の砦が築かれた。



城の没落は16世紀半ばに始まる。ルイ14世率いるフランス軍がルクセンブルク要塞を陥落し、ルクセンブルクにある城の取り壊しを始める。エッシュシュルシュール城もその波に飲み込まれ、城主が国外に滞在して不在が続いたこともあり18世紀には荒廃した廃墟と化した



19世紀半ばには個人所有となり、ヴィクトル・ユーゴーが1871年に訪れたときにはまだ居城していた一家がいたという。



現在は観光名所となり、日中は自由に出入りできるように開放されている。



といっても観光地化されていないのがウリ(?)の観光地のようで、まさに隠れた名所。観光センターもあるが閉まっている。



ルクセンブルクにはその場所でしか買えない観光名所コインがあり、ここでもエッシュシュルシュールのコインを買える。



エッシュシュルシュールの景観が彫られている。



ちなみにこのエッシュシュルシュール城、いや、エッシュシュルシュール城だけでなく、この後訪れることになるブールシャイト城やブランデンブルク城といった中世の騎士の城は、その手の人たちには有名で、1921年に出版された、「The land of haunted castles」の中でも特集されている。




■古城へ

車を停めて早速街を散策。小さい街なので普通に歩いていても30分~1時間ほどで街を1周できる。



つまり、最初はシュール側に沿って1周してしまったわけで、街の中心にある古城への道を見つけれなかった。



そのため、今度は中心を目指して街の中へ入っていく。



丘の上の古城に行く道を探す。



迷いながらもやっと見つける。どうやら東側からしか古城への道がないらしい。



いざ、古城の中へ。



この城壁は15世紀、日本の室町時代に築かれたものらしい。



さらに古城の内部へ。



ちなみに建物と呼べるようなものはほとんどなく、見た目通りの廃墟となっている。





丘の上にあるだけあって眺めも良く、シュール川に沿ってできている街の様子がよくわかる。





遺産保護なのか、中世からの歴史がそのまま残っている感じである。





内部もこのような感じで、もはや装飾といったものもない。





反対側にある丘の上にも砦が見える。



どうやら一度降りて別の道からいかねばならないようで、まずは古城を後にして川辺まで降りる。




■砦へ

砦の下に到着。どうやらここを上がって行くらしい。



けっこうな階段である。



上がって行く途中にもエッシュシュルシュールの白い綺麗な街並みが見れる。



丘の上に到着。



誰だかよくわからないが像が建っている。



砦の(先程の古城から見て)裏側。砦の上にはルクセンブルクの国旗が舞っている。



ここから砦まで歩いていけるようになっている。



砦は2階、3階とあり、石段で上がれるようになっている。



砦の上から。先程の銅像側。



古城側。砦からは古城と家々、それを囲むように流れているシュール川を見渡せる



あの石段を今度は下りるのかと思いながら砦を後にする。



ちなみに蛇行するシュール川の内側にほぼ全ての家々が建っていて、一歩シュール川の外側になると獣道になるのも特徴的である。




■急遽サイクリング

川辺に降りて歩いていると自転車が目に入る。



こうなると、この綺麗で小さい街をサイクリングしたいという誘惑が沸き上がってきて、嫌がる妻に10分だけ許可をもらって走ることに。



自動車からロードバイクを取り出してセットアップ。



エッシュシュルシュールの街を自分のロードバイクで走れるのは感無量で、まさしくこれぞ輪行の醍醐味。



小さい街なので、自転車だとカップラーメンを待ってる間に1周してしまう。



さすがに階段がある古城の上までは行けず。



なにはともあれ、そこには素敵な空間が広がっていた。




今回の旅でもオススメな町なので、もし近くまで行く機会があるのならぜひ行かれると良いと思う。静かなシュール川のほとりでゆっくり流れに身を任せるのも一興である。




2 件のコメント :

  1. エッシュシュルシュールに私も昨年行った事がありますが、カメラを忘れて写真を撮りませんでした。私が見た景色や感動がそのままアップされていて、感激しました。
    私はルクセンブルクに住み始めて2年近くになりますが、エッシュシュルシュールは一番素敵な町だと思います。
    素晴らしい写真を有難うございました。

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  2. 初心者ロードレーサー2012年9月5日 2:56

    コメントありがとうございます。写真技術はまだまだですが、臨場感と感動を伝えられれば幸いです。私も見返すとあの宝石箱のようにこぢんまりとした綺麗な街並みが思い出されます。
    それにしてもルクセンブルクにお住まいとは羨ましい限りです。グルントの別世界といい、上下に入り組んだ複雑な都市はアメリカにはないので憧れます。エッシュシュルシュールにも日帰りでいけますし(^^)

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