VIX地獄爆心地:XIV即死条項と敗北宣言



XIV取引停止処置


昨夜、99ドルでクローズしたものの、時間外取引で15.42ドルまで急落したXIV・・・。

1日で前日の20%まで下落すれば強制償還という即時償還条項、いわゆる即死条項に該当・・・。

取引が停止され、当該ETNを管理するクレディスイスから即時償還のアナウンスがされた。

証券会社のアカウント上は15.42ドルのまま固定され、5万ドルのマイナスが乗ったまま・・・。

この時点でも損失額はすでに5万ドル(≒550万円)以上・・・!!!



ああ、もう利根川ごときではこの苦しみを表現しきれない・・・。




こうなったらあの人に登場してもらうしかない・・・。






敗戦の弁


まさに忸怩たる思い・・・。

一回使ってみたかった・・・、忸怩たる思い・・・。

ただ、強がりを言うようだが、後悔はない。

忸怩たる思いで反省はするが、リスクを取りにいった勇気を、その行動を悔いてはいないのだ。

そもそもリスクを認識した上で、そのリスクを取って勝負しているのだから、思惑と逆に動けば最大損失がどのくらいになるか覚悟の上で戦っている

たとえ断頭台でギロチンを落とされようと、後悔の顔は見せないのである。



そのリスクが1%にも満たないものだと予測していた。

99%はいつか反発して戻すと思っていた。



そしてその1%が起こった。

それだけのことである。

思惑と期待値


もう少し詳しく今回の敗戦を振り返ってみたい。

VIX急騰前のXIVの価格は140ドル~145ドルで推移していた。



最初のポジションニングは127.97ドルで200本(=25,594ドル)。

即死となる即時償還が適用されない限り、時間が経って恐怖が去れば元の水準に戻るので128ドルが143ドルで売れれば1.11倍になるイメージでいた。

一方で即死条項が適用される即時償還は前日比より20%にまで下落した場合で、これが起きるのはリーマンショックや世界恐慌並みの下落が一日で起きる場合

逆に言えば数日かけて下げても即死条項は適用されない。

今回の暴落は好調な雇用統計と長期金利の上昇によるインフレ懸念によるもので、○○ショックのように既存経済システムが破綻するような話しではない

実際、米国経済は好調で、ハイイールドの社債スプレッドもほぼ無風※なので、企業信用リスクの観点から言えば暴落になるような地合いには程遠い(※下図、2016年初の石油ショック時と比べると全く影響が出ていないことがわかる)。



こんな堅調なファンダメンタルズの中でリーマンショックや世界恐慌並みの下落が1日で起きる確率は1%より遥かに低いと見た。

多めに取ってその確率が1%だとしても、期待値は1.11倍 × 99% + 0倍 × 1% = 1.10で、リスクを取って張るだけの期待値に達しているとの認識であった

私の投資スタイルは、割安に評価されていて、リスク度合いに比して高い利益が見込めるもの、すなわち投資の「期待値」が高いものに投資をすることだ。投資判断の基本はすべて「期待値」にある。


が、リーマンショックやドットコムバブル、世界恐慌を凌駕する歴史上最大の暴落が1日で起きてしまった

ダウ平均株価は、取引中に1500超、終値で1175下落し25000の水準を下回り、同平均株価の歴史上最大の値下げ幅を記録した。

NYダウ過去最大下落、続いて日経平均も値下がり加速

チャートで見ても我ながらよくこんな下落の中に飛び込み、巻き込まれていったものである。

むしろ逆に清々しい。



これは純粋に負けを宣言するしかない。

覚悟していたリスクだ。

晴れの日もあれば雨の日もある。

粗にして野だが、卑に非ず。

負けは負け、潔く負けを噛み締めたら、あとは前へ進むだけである。

即時償還条項


2月6日、取引停止処置になったXIVはマーケットがオープンしても値が付かず。

しばらくしてクレディ・スイスから償還のアナウンスがされた。



償還条項をひとつひとつ読み込んでいく。

償還日は2018年2月21日を予定・・・。

Credit Suisse AG Announces Event Acceleration of its XIV ETNs
New York February 6, 2018 Credit Suisse AG (“Credit Suisse”) today announced the event acceleration of its VelocityShares™ Daily Inverse VIX Short Term ETNs (“XIV”) due to an
acceleration event. The acceleration date is expected to be February 21, 2018.

次に償還理由を解説。

2月5日のマーケットクローズ後のIndicative Valueが先日のClosing Indicative Valueから20%以下に達したためと説明される。

Since the intraday indicative value of XIV on February 5, 2018 was equal to or less than 20% of the prior day’s closing indicative value, an acceleration event has occurred.

そして気になる償還金額について・・・。

現時点ではまだ日付が延期されるかもしれないという注意書き付きながら、2月21日(水)の償還日の3営業日前を償還価格の基準日とするとのこと。

よって、2月16日(金)が償還価格基準日となり、その日の「Closing Indicative Value」を元に償還される

Credit Suisse expects to deliver an irrevocable call notice with respect to the event acceleration of XIV to The Depository Trust Company by no later than February 15, 2018. The date of the delivery of the irrevocable call notice, which is expected to be February 15, 2018, will constitute the accelerated valuation date, subject to postponement due to certain events. The acceleration date for XIV is expected to be February 21, 2018, which is three business days after the accelerated valuation date. On the acceleration date, investors will receive a cash payment per ETN in an amount equal to the closing indicative value of XIV on the accelerated valuation date.

The last day of trading for XIV is expected to be February 20, 2018. As of the date hereof, Credit Suisse will no longer issue new units of XIV ETNs. On February 2, 2018, the closing indicative value was USD 108.3681. None of the other ETNs offered by Credit Suisse are affected by this announcement.

つまり、ポイントは償還価格基準日となる2月16日の「Closing Indicative Value」がいくらになるか・・・

Closing Indicative ValueはいわゆるXIVの価格を構成するVIX先物から計算された指標上の数値で、終わり値とは異なるので要注意。

実際、VelocitySharesのウェブサイト上でClosing Indicative Valueを確認できるが、2月5日の終わり値が99ドル、時間外取引の最終値が15.43ドルだったのに対し、Closing Indicative Valueは4.22ドルだった。





これは、時間外取引では15ドル強で取引されていたのに対し、実際の理論価格は4.22ドルしかなかったということで、はたして翌日のザラ場(NY時間午後1時半から取引停止措置が解除されて取引再開された)では6ドル近くで取引された(S&P 500は上昇したので好調な地合いを受けて4.22ドルよりは高値で推移)。



Closing Indicative Valueは買い方と売り方の需給にも左右されるマーケットバリュー(Market ValueまたはTrading Valueとも)と違い、VIX先物から算出される理論上の数値となる。

逆に言えば、償還価格基準日までまだ8営業日ほどあるのがせめてもの救いで、それまでにどこまで上がってくれるかが勝負になる

さらにマーケットバリューであれば、償還が決まってしまった今となっては買い方が鈍って値がつきにくい場合もあるかもしれないが、理論上の指標価格であれば、VIX先物があと8営業日の間に落ち着いてくれればある程度値を戻してくれる希望がある

ちなみにFINRAによるClosing Indicative Valueの解説は以下の通り。後段の部分は、Market ValueとIndicative Valueが近似するように発行量を調整することが書かれている(株で言うところの、新株発行による株式価値の希薄化と同様の効果)。

Issuers of ETNs issue and redeem notes as a means to keep the ETN’s price in line with a calculated value, called the indicative value or closing indicative value for ETNs. This value is calculated and published at the end of each day by the ETN issuer. When an ETN is trading at a premium above the indicative value, issuing more notes to the market can bring the price down. Similarly, if an ETN is trading at a discount, redemption of notes by the issuer reduces the number of notes available in the market, which tends to raise the price.

If a redemption occurs, the issuer will redeem the notes at the ETN’s indicative value. Indicative values are generally based on the value of the underlying index or benchmark, minus certain fees (sometimes referred to as "daily investor fees"), which vary across ETNs and can fluctuate for a given ETN.

ETN Trading, Issuance and Redemption

とは言え本日2月6日のClosing Indicative Valueはたったの5.32ドル・・・



含み損はマイナス5万5千ドルでほぼ紙屑・・・。



上がれば儲けものという意識で、ほぼ全損の覚悟はしておきたい。


(あ、また使い勝手のいい利根川が・・・)


あとはこれが一縷の望みとして地獄に垂らされた蜘蛛の糸となるか・・・。

気分はカンダタこぶんAである・・・。




6 件のコメント :

  1. Time Decay的には値戻しの期待は少し厳しそうですが、その冷静な覚悟に敬意を評します。。
    人生にFree Rideなし、Risk Averceな人生よりもRisk Takerとしてアルファを求める姿勢が大事だと思います・・・!!

    返信削除
    返信
    1. 仰る通りたいした期待はできないでしょうね…。現実問題、よくてマイナス5万5千ドルが5万4千ドルになるかっていうレベルかと…。6ドルのものが7ドルになるだけで16%の上昇なんで今から買う人には大きいんでしょうが。。

      笑う神あれば拾う神あり、市場の可謬性を出し抜きたい自分としては引き続きベータよりもアルファを狙っていきたいと思います!

      削除
  2. あえて今XIVエントリーしてみました。
    少しでも償還額上がるといいですね。

    返信削除
    返信
    1. 今からのエントリーはかなり好い決断じゃないでしょうか。XIVやVXXのようにラグを伴って元の水準に戻していくのはむしろ「頭と尻尾はくれてやれ」で台風が収まった後にポジるのが賢明なのだと思います。すでに私は後の祭りですが・・・(ToT;

      削除
  3. なんだかまたキナ臭い状態になってきましたね。。。

    返信削除
    返信
    1. 過去2番目の下落だそうで、同じ今週に過去最大の下落が起きたことを考えるとヤバイ感じですね・・・。

      削除