この点、ベルギーは言語戦争と呼ばれるほど言語間対立が激しく、南部のワロン地域がフランス語(厳密にはフランス語の方言のワロン語)、北部のフランデレン(フランダース)地域がオランダ語(の方言のフラマン語)となっている。(元を辿るとネーデルラント連合王国から独立した際の、フランス語を話すワロン人とオランダ人との対立まで遡らなければならないのであるが…)
そして政体も言語衝突によって連邦制に移行され、ワロン地域、フランデレン地域それぞれで別々の政府が存在している。日本における政府観光局も2つに分かれている。
ベルギー・フランダース政府観光局
ベルギー観光局ワロン・ブリュッセル
首都のブリュッセルは、話し言葉では圧倒的にフランス語なのだが、高速道路に出ていきなり見えてきた標識はオランダ語。
そう、Liège(リエージュ)はフランス語で、オランダ語ではLuik(リューク)になるのである。ブリュッセルの街中の看板、標識、駅名などは、フランス語、オランダ語両方の表示が義務付けられているらしいが、ブリュッセル空港はブリュッセル市外の北東、高速道路の標識でさえオランダ語表示のみという始末である。そして高速道路もフランス語圏のワロン地域に入ると標識表示がフランス語に(何の前触れもなく)変わる。
その後ドイツにも行ったのだが、ドイツ語ではLüttich(リュティッヒ)となる。(下の写真では親切にも括弧書きでフランス語名を書いてくれているが)
ちなみにブリュッセルはフランス語でBruxelles、オランダ語でBrussel、英語でBrusselsとなるが、スペルも発音も似ているので初見でもわかる。
一方、リエージュのように、スペルも発音も違うと、予め知っておかないと混乱すること請け合いである。
特にGPSがなくて高速道路の標識を頼りにしていると、いつの間にか見当たらず迷ってしまうことにもなりかねない。
自分は前もって、主要都市の英語、フランス語、オランダ語、ドイツ語表記を調べておいた。
それがこちらの表になる。太字はその都市で使われている主要言語。
国 | 日本語 | 英語 | フランス語 | オランダ語 | ドイツ語 |
---|---|---|---|---|---|
ベルギー | ブリュッセル | Brussels | Bruxelles | Brussel | Brüssel |
ベルギー | アントウェルペン(アントワープ) | Antwerp | Anvers | Antwerpen | Antwerpen |
ベルギー | ヘント(ゲント) | Ghent | Gand | Gent | Gent |
ベルギー | ブルッヘ(ブリュージュ) | Bruges | Bruges | Brugge | Brügge |
ベルギー | アウデナールド | Oudenaarde | Audenarde | Oudenaarde | Oudenaarde |
ベルギー | メヘレン | Mechelen | Malines | Mechelen | Mechelen |
ベルギー | アールスト | Aalst | Alost | Aalst | Aalst |
ベルギー | コルトレイク | Courtray | Courtrai | Kortrijk | Kortrijk |
ベルギー | リエージュ | Liège | Liège | Luik | Lüttich |
ベルギー | モンス | Mons | Mons | Bergen | Mons |
ベルギー | ナミュール | Namur | Namur | Namen | Namur |
ベルギー | トゥルネー | Tournai | Tournai | Doornik | Tournai |
ベルギー | バストーニュ | Bastgone | Bastogne | Bastenaken | Bastogne (Bastnach) |
ドイツ | ケルン | Cologne | Cologne | Keulen | Köln |
ドイツ | アーヘン | Aachen | Aix-la-Chapelle | Aken | Aachen |
ルクセンブルク | ルクセンブルク | Luxembourg | Luxembourg | Luxemburg | Luxemburg |
これにルクセンブルク語まで混ざってくるとさらに紛らわしくなる。例えばベルギー王国のバストーニュはリュクサンブール州という、ルクセンブルク大公国の西に隣接し、ベルギー独立革命以前はルクセンブルク大公国に属していた町だが、ルクセンブルク語ではBaaschtnechとなる。ちなみに、Luxembourgというと、ルクセンブルク市、国としてのルクセンブルク大公国、ベルギー王国にあるリュクサンブール州(単にフランス語読みをカタカナにしただけでスペルは同じ)と既にこれだけで紛らわしいので、上記では国名は正式名称で記載して、国だとわかるようにしている。
この写真から、当時の不安な心境と、高速道路ででダッシュボードに身を乗り出し標識を見上げる感じがよくわかりました。
返信削除私はこういうのは事前に調べない方でw 全て妻にやってもらうのですが、このレベルでは恐らく喧嘩は必須でしょう。
古城の裏にはこんなご苦労があったのですね。
おっしゃる通りで、あらかじめ調べていたにも関わらず、「Luik」の文字が出てきたときは「おやっ?」と思いました。
返信削除というのも、ブリュッセルはブリュッセル首都圏地域になるので、実質フランス語中心で看板等はフランス語、オランダ語併記なのですが、ブリュッセル国際空港はフラームス=ブラバント州というオランダ語のフランデレン地域だったというのを、現地で看板を見て初めて知りました。東京ディズニーランドが千葉にあるような感じでしょうか(笑)。