ヒルクライム用650Cという選択肢

前回日本のイベント参加を妄想したが、やはりいつも問題になるのは移動問題。

実家の手助けを借りられるイベントならまだしも、自分1人で行く場合や、そもそも日本以外の国へ行こうと思ったら自転車を持っての移動がネックになる。

Ritchey Break-Awayの教訓


これまでも何度も試行錯誤を繰り返しており、分解可能なロードバイクフレームのRitchey Break-Awayを使って標準サイズのスーツケースに入れて香港、日本に移動したこともあった。



しかしその際の最大の問題はホイール。

700Cのホイールではどう転んでも航空会社のサイズ規定をクリアできず、オーバーサイズになってしまうし、そもそも持ち運びに苦労する。

そのため、Ritchey Break-Awayを持って移動したときも、ホイールだけは香港と日本でそれぞれ手に入れて現地に置いておくという手段をとった。



当時のように単なるサイクリング目的であればエントリーレベルのホイールを現地調達でも十分だが、ベスト装備でレースに臨むとなるとそうはいかない。

ではそもそも700Cのホイールサイズを選ばなければ・・・ということで今回の考察をするに至った。

650Cはありか


ロードバイクでホイールサイズを小さくするというと、まず思い浮かぶのが650C。

小さいホイールの方のメリットとしては以下の点が挙げられる。

  • 軽い
  • 加速がしやすい

この点、700Cがダウンヒルや急コーナー、平坦も含めたロードレースにおける、総合性能としての最適解だとしても、ヒルクライムに限って言えば650Cのメリットは大きいと言える。

事実、ローラン・ジャラベールは650Cの軽量ホイールでツールの山岳王を獲得している。

Laurent Jalabert was one of a number of top pros to ride the TCR and also use the frame in conjunction with smaller 650c wheels over the standard 700c diameter. This was popular on stages that finished with a climb, with some pros convinced that bikes with slightly smaller wheels were faster. The idea didn’t catch on, but in certain circumstances it may have had advantages.

The top 10 revolutionary road bikes that changed the world of cycling

「軽い」はずだった650Cホイールの現実


ただ、商業的なラインナップの観点もあり市場からはどんどん650Cホイールの選択肢が消え、ZIPPでは404の650Cチューブラーホイールがあったものの2012年に既に廃盤



結果、今となっては650Cはほぼ絶滅種と化している



ローラン・ジャラベールはライトウェイト(軽量ホイールという意味ではなくメーカー名)の650Cホイールを使って軽さを享受していたが、少なくとも現在では1000g前後の700C超軽量ホイールに該当するような650C版はなく、650Cにすると軽量700Cホイールより逆に重くなってしまうという逆転現象が起きている

Jalabert used a new carbon sloping-top-tube Look frame called the “Escalade” (not available to the public) that is equipped with 650C (26″) wheels. Jalabert used Lightweight all-carbon wheels (that's the brand name, now simply a description), after his team manager Bjarne Riis was not able to get Cees Beers to make him an even lighter set of ADA wheels in time for the Tour.

Light climbing bikes and braking problems (and crashes!)

その結果、物理的な優位性で見れば650Cの方が軽さを享受できるはずなのに、結局現在入手可能なホイールラインナップでは700Cの方が有利になり、「軽さ」というメリットはなくなってしまう

650Cホイールの「加速のしやすさ」


回転体の半径が短いと回転させる力(つまり加速させるのに必要な力)が少なくて済む。

同じ重りが先についた2mの紐と1mの紐がテーブルの上に置いてあり、それぞれ砲丸投げのように回すときにどちらが回しやすいかイメージすればわかりやすい。

短い1mの紐の方が、簡単に回転させ始めることができる(逆に、一度回り始めたら2mの紐の方が慣性力は高くなり回転を維持しやすくなる)。

よって平地の巡航速度という点では大きいホイールの慣性力がメリットになるが、重力によって常に減速させる力が働くヒルクライムではクランク1回転ごとに減速と加速を繰り返している形になり、加速のしやすさにおいてメリットを享受できる

検討むなしく・・・


一方で、上記でも触れた通り、既に650Cは絶滅種となっており、フレーム、ホイールともにUCIワールドツアーで乗られるような旗艦モデルと肉薄するような性能のものは作られていない

一部、日本のメーカーで650Cのフレームとホイールを出しているところもあったが、やはりヒルクライム専用決戦機として、700Cの超軽量フレーム&ホイールに対して650Cの軽量化のメリットを享受できるかというとそうではなく、逆に重くなる



そしてふと最初の不満だった大きすぎて輪行しにくい点に戻ると650Cでも700Cと大差ないということに気付く・・・。

650CというとETRTO表記ではビード径が571mm 、26インチのタイヤに該当するのでタイヤ装着後の直径は約66cmとなる。

航空会社に無料で預けることのできる手荷物のサイズ規定では、多くの航空会社の場合、「総外寸で3辺の合計が158cm以内」。

ホイール2本の幅も考えると前後輪すら入らない。

さらにフレームもと考えるとそもそも不可能。

650Cのラインナップを検討するどころか、最初のサイズ制限でアウト・・・。

こうして650Cは妄想のまま潰えたのであった。


0 件のコメント :

コメントを投稿