Tacx Trainer Software 3の機能

というわけでPC連動型固定ローラー台の真骨頂であるPC連動機能について紹介したい。

Tacxの場合は、Tacx Trainer Software(以下TTS)というソフトを使う。このソフトウェアはPC連動機能を持つローラー台で共通しているので、Fortius Multiplayer、Fortius、i-Magicでも同じものを使うし、オプションのPC連動機能を付けることでBushido、Vortex、Cosmos、Flowでも利用可能となる。つまり、以下の説明は上記ローラー台の全てに対応する内容となっている。




■バージョン

バージョンは1、2と経て現在は3が出ている。各バージョンからのアップグレードは追加料金で可能となっており、マイナーバージョンのバージョンアップは無料。インターネットで自動アップデートチェックがされ、アップデートをすることができる。2011年1月31日現在は3.2が最新バージョン。ちなみに1は$130で、2へのバージョンアップに$40、3へのバージョンアップには$60かかるらしい。

ライセンスはオンライン認証を行っており、一台のパソコンにしかインストールできない。2まではライセンスの移管機能がなく、PCを買い換える等の場合、都度サポートセンターに連絡しなければならなかったようで、その不満がマイナス評価となってネット上に出ていたりするが、3からはアンインストールによるライセンスの取り消し(パソコンとのリンクの削除)ができるようになり、別のパソコンにインストールすることも可能になったようである(機能はあるものの、自分はまだ試していない)。


■概要

TTSの機能は豊富すぎて一言で言えないが、かいつまんで言えば「インターネットを利用して効果的なトレーニングができ、日々のトレーニングにエンタテイメントも提供してくれるソフトウェア」である。

基本的にパソコンから固定ローラー台を操作するのは勾配調整であり、TTS上で設定した斜度、負荷等によって自動で勾配が変わるようにできている。

TTSには大きく分けて以下の5つの機能がついている。

Catalyst時間、距離、パワー、心拍を元にプログラムできるトレーニング
Real Life Video実際のビデオを見ながら同じコースを走るトレーニング
ErgoVideoReal Life Videoの別バージョン
Real Life TrainingGPS(Google Earth)連動ライド
Virtual Reality3次元仮想空間ライド
Multiplayerネット、LAN対戦機能



■Catalyst

いきなりだが、TTSの中で最も有用でトレーニングに威力を発揮する機能がこのCatalystである。

時間、距離を横軸に、各セクションを自由に設定して、勾配やパワー、心拍数を設定してトレーニングプログラムを組むことができる。
「何分間(何km)は勾配2%、次の何分間(何km)は勾配6%」といった感じで設定できる。パワーを設定した場合は、常に同じ出力がでるように負荷を自動調整してくれる。



他の機能、特にVirtual Realityなどはゲーム的要素が強く、「飽きさせないトレーニング」には向いているが、黙々と規定のトレーニングをこなしていくにはCatalystが一番だと思う。さらに(後述するが)ハングアップ率もCatalystが一番低いので、信頼性という点でもCatalystが一番である。

さらにSteady State Intervalや、Power Interval、MuscleTension Interval、OverUnder Intervalなどのトレーニングメニューを設定しておいて、日々のトレーニングプログラムに組み込めば、かなり強力なトレーニングツールとなる。自分は、Power IntervalなどはGarminのWorkout機能で設定してトレーニングしていたが、グラフでビジュアル化され、自動で負荷が変わっていくCatalystは一歩上を行く使い易さである。



Tacxのフォーラムから他のユーザが作ったトレーニングプログラムをダウンロードすることもできるし、さらにTraining of the monthとして、毎月のトレーニングプログラムが公開されているので、それをダウンロードしてトレーニングすることもできる。



特にTraining of the monthは、ネット上に目標ケイデンスやギアなども公開されているので、Catalyst上の時間、勾配設定に加え、それらのケイデンス、ギアに合わせて走れば、まさしく自宅にいながらにしてコーチ付きのトレーニングをしているような状態になれる




■Real Life Video

ビデオ映像を見ながらトレーニングができるモード。

とはいえ、インドアトレーニングで誰もが試す(?)、ツールなどのビデオを見ながら走るのとは違い、実際に映像上の勾配に合わせて勾配が変化し、自分の速度に合わせてビデオ内の速度も変わる。デフォルトではシュレック兄弟とトレーニングするというデモが付いている。

また、チャレンジシリーズとして、Tacxのサイト上で公開されるトレーニングプログラムをダウンロードして走ることができる。これはビデオを持っていればビデオと連動するが、持っていなくても映像なしの(Catalystの距離&勾配プログラムのような形で)トレーニングができる。期限までに走った記録をアップロードすることで、ネット上の他のユーザーのタイムと競ってランキングに参加することができる。さらに他のユーザーのログをダウンロードすることで、他のユーザーをバーチャルパートナーとして設定し、画面上でタイム差などを見ながら競うことができる。




■ErgoVideo

基本的にはReal Life Videoと同じく、ビデオ映像とリンクして走っていくものだが、ケイデンスを一定に保つようにパワー出力が自動調整される。ケイデンストレーニング用といっていいのかもしれない。あまり使ってない(というか使いこなせていない?)モード。




■Real Life Training

Google Earthと連動したGPSトレーニング。
GarminのGPXなどの、GPS付きトレーニングログをインポートすることで、実走した内容を元に、同じコースをインドアで再現、トレーニングすることができる。

GPSのログの中にはいわゆるゴミも多く、変に勾配が変わったりすることもあるので、インポートした後にエディットしてゴミを消したり整理したりすることでより実走に近いトレーニングコースを作ることができると思う。とはいえ、単にインポートして走るだけでも、(実走よりもスピードが出てタイムが縮まる傾向にあり全く同じとは言えないが)実走感は十分味わえ、たとえば自分の場合プロスペクトパークやセントラルパークのコースをインポートして走ったりしてみたが、「今はあそこの登りを再現しているのか」ということがよくわかり、「家にいながらセントラルパークを周回する」といったことも可能である。

また、Tacxのフォーラムで他のユーザーが作成、共有しているデータをダウンロードすることができ、ドイツのユーザーが作成したドイツのコースや、ロンドンのコースなどを走ることもできる。



さらにデフォルトでTour de Franceのタイムトライアルのコースなども入っているので、それらのデータを使えば、プロロードツアーのコースをバーチャルで走ることも可能である。




■Virtual Reality

モデリングされた三次元の仮想空間でレースができるモード。

数十マイルに及ぶ島などが数種類用意されており、自由に島の中をポタリングしたり、レースをすることができる。街中や丘、山岳や海辺、線路の交差など様々な景色があり、よくここまで仮想空間を作ったものだと感心してしまう。Wiiリゾートをやったことがある人であれば、あのリゾートの島が数種類用意されているイメージだと思ってもらえばよい。



MTBのコースや、トラック競技用のベロドロームもある。ベロドロームでは決められた周回を走り、最終周ではベルが鳴らされたりするので、競輪選手やオブリーになったような感覚が味わえる。競輪漫画のOddsにあったガリビエ颪などもバーチャルながらやってみた。



ゲーム感覚でレースをしながら、いつの間にか30kmなどのトレーニングができてしまっているのは新鮮で、飽きずにローラー台をするのであれば最適なモードといえる。

VR Steering Frameが付いていれば、実際に左右にハンドルを切れば、画面上でも自分の分身を動かすことができる。一方で、元々VR Steering Frameが付いていなかった(自動でコース上を走るようになっていた)からか、画面上にコース表示が出てこないため、どこで曲がるかがわからず、迷子になったり、行き過ぎて戻ったりすることは日常茶飯事である。と思ったら、VR Steering Frameを有効にしている場合は、設定で道案内のON/OFFができるらしい。

さらにVR Steering Frameに加え、クラッシュの有無も選択でき、クラッシュを有効にした場合、他の選手との接触や、走れない場所に乗り上げた場合に落車するようになっている。が、落車するといちいち速度をゼロにしなければならず、こうなるとトレーニングというよりはむしろゲームに近くなってしまい、継続的に負荷をかけたいなら無効にした方がいい




■Multiplayer

インターネットやLANを使ってリアルタイムにレースをするモード。追加でMultiplayer用のライセンスを買う必要がある。試したことがないのでなんとも言えないが、以下バーチャルパートナーで他のユーザーのログを使った場合のリアルタイム版といえる。Tacxのサイトでレーススケジュールを作ったり、既存のレースに参加登録をすることでMeet upできるようになっている。


■バーチャルパートナー

Real Life Videoの項目で少し紹介したが、バーチャルパートナーという機能がモチベーションを上げてくれる。

自分が一度でも走ったことのあるトレーニングプログラムでは、自分の走行ログが記録されて、次に同じトレーニングプログラムをするときに、過去の自分をセットすることができる。さらに、インターネットからダウンロードした他のユーザーのログをインポートして競争することもできるし、Virtual Realityでは平均○km/hで走るコンピュータを自由に設定したりすることもできる。ちなみにVirtual Realityでは走行したコースも記録されているため、VR Steering Frameを使って自分が迷って引き返したりしたログを読み込んで競争する場合は、過去の自分が画面の中で当時と同じ動きをして行きすぎたり引き返したりするので、かなり細かいログ再現ができている。

たとえばネットでランクインしている10人のログをインポートして、その10人とレースをすることもできる。レースと言っても画面のグラフ上に自転車マークが出るといったものだが、自分との差を視覚的に確認できる上、タイム差や距離の差も表示することができ、「この登坂で何秒縮まった」なども確認することができるので、かなり集中してトレーニングすることができる。


■ハングアップについて

Amazon.comで、「評価で0を付けれないのでしょうがなく1にした」と言って不満を大爆発させているレビューがあるが、そのレビューが言っているように「2時間のトレーニング中の40分や80分のところでクラッシュしてログが消えてしまう」ということも実際にあった特にVirtual Reality、Real Life Video、Real Life Trainingの順でクラッシュ率が高いようで、Virtual Realityの37マイルのコースで走行中、半分を越え、1時間が経ったところでトレーナーとの接続がハングアップしてしまい、左にハンドルを切ったまま回り続ける状態になり、泣く泣く強制終了させたことがある。

自分はハングアップが多いという評判は聞いていたので、まあ普段は「ハングったか」くらいにしか思わないのだが、トレーニングログのメインはGarmin Edge 705で取っているので大きな問題にはなっていない。ハングアップしたらGarminのLapを区切って、TTSを再起動、別のトレーニングを起動させて走り続けるだけである。パワーは今のところTTSでしか取れないが、トレーニングプログラムごとの距離、時間、心拍、ケイデンスはGarminで取れるので十分である。逆にTTSだけでログを取っていてハングアップすれば目も当てられないので、Garminのような、独立したサイコンを使って別途ログを取ることをお勧めしたい


■総括

個人的にはシンプルだが強力なCatalystがメインになると思っている。トレーニングプログラムに沿って規則的なトレーニングをこなしていくには一番である。今までGarminのログなどで後付でグラフを確認していた身からすると、リアルタイムに(病院の心電図のように)自分の各種データがグラフ化されていく様は小さな感動を与えてくれた

一方、Real Life Video、Real Life Training、Virtual Realityなどは飽きずにローラー台をするのに優れている。アクティブリカバリーといった回復走用に、ポタリング気分でペダルを回すときに有用である。とはいえ、急坂のあるコースを選んだりするとけっこう負荷がかかるので、その場合はむしろ負荷トレーニング用途として使うことができる。

さらにTraining of the monthや、チャレンジシリーズなどもネットと連動してモチベーションを保ちながらトレーニングをするのに向いている。

つまり、普段のトレーニング内容としては、Catalystベースでスケジュールを組みつつ、その中にTraining of the month、チャレンジシリーズを組み込んでメリハリを付ける。マンネリ化を避けるためのリフレッシュとして、メイントレーニングの合間にReal Life Video、Virtual Realityを入れていくスタイルが自分には合っていると思われた。

��標準で用意されているTempo Interval)


��同じく、40kmのタイムトライアル)



9 件のコメント :

  1. かめらいだー2011年2月2日 16:40

    すごいの一言。まあ、Bugがあったり、Hung Upがあったりするのでしょうが、ローラー台をCD聴きながら、タレたらタレっぱなしの練習とは雲泥の差。まあ、精神力があれば別なのでしょうが。小生は今はパイオニアを待っているモードですが、これだと、雪解け後のサイクリングでは相当置いていかれるでしょうね。詳細レポート、充実していて読み応えありました。

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  2. 初心者ロードレーサー2011年2月3日 2:58

    感想ありがとうございます。コメントで反応をいただけると書く方も気合いが入ります。(笑)
    私も個人的な期待度No1はパイオニアのパワーメーターなのですが、パイオニアの担当社に聞いたという方のブログでは「製品化の時期は未定だが2012年ぐらいには出荷できるところまで行けたらいいなぁ(遠い目)」という答えだったということで、1年(2年?)という機会損失を考えると少なくとも今年は別のを用意したいなぁと思ってます。

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  3. あるべると・とんま2011年7月9日 1:50

    Tacx トレーナーのソフトウェアー記事、拝読させて頂き、ありがとうございます。
    拙者、体荷重増大に対応すべく、海外通販でロードレーサーを購入し、走り始めた肥満爺です。
    その後、同様の海外通販 Tacx トレーナー SATORI と、Tacx の 「Mont Ventoux (弁当山?)」のDVD も 購入したのですが、
    先ず、DVDを TV用の通常DVDプレーヤーに掛けたら、読めず見られず、で あらら?PC用か・・・と思い、
    次に当該DVDをPCに入れたら、「最初に、Tacx ソフトウェアをローディングせよ」とコメントが出て、なんじゃ??
    そこで、SOTORIとdvdとを購入した 英国通販業者に「どうすべきか」問い合わせたら、「Tacxトレーナーを買え」と、日本人カスタマ・サービス。「貴店で、SATORI買ったよ」と返事したら、「6万円超のトレーナを買え」との返事。呆れたので、相手をするのをやめました。「Tacx トレーナのソフトウェア バージョン3」を別サイトで見つけました。 長々と、くだらない経緯を書かせて頂きましたが、
    これを、購入すれば Mont Ventoux のDVDをPCで見られる様になるのでしょうか?
    PCとトレーナー(の負荷等)を連動することは、高額のトレーナー BUSHIDO? が必要なのだろうと思いますが、
    せめて DVDの画像 を見られる様にしたい、と思いますので、
    もしも可能でしたら、アドヴァイスをお願い致します。

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  4. まずはTacxのサイトで公開されているこちらのモデル一覧表をご覧ください。
    http://www.tacx.com/dotAsset/14475.pdf
    あるべると・とんまさんが購入されたのは、こちらのRLV (Real Life Video)のVentouxのものだと思いますが、RLVはTacxのソフトウェア上で動く(動画が見れる)ものです。
    http://www.youtube.com/watch?v=uU_TmYrL26s
    一方で、上記モデル一覧表の下段の表、「Expansion capabilities」の最初の行「Real Life Video & ErgoVideo」に、各モデルの対応有無が書いてあります。
    このうち、RLVに購入状態で対応しているのは、Fortius MultiplayerとFortius、i-Magicの3モデルのみ。
    Bushido、Cosmos、Flowは、ご記載されている「Tacx トレーナのソフトウェア バージョン3」が付いたアップグレードをキットを別購入することでRLVを見れるようになります。
    この点、Satori、Satori Blue、Sirius、Speedmatic、Magnetic、Speedbrakerの7モデルはPC連動機能がない(アップグレードもできない)モデルとなっており、RLVを見ることができません。
    海外通販だと難しいかもしれませんが、返品や交換を申し出てみてはいかがでしょうか。

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  5. トーマヴォクレールの心臓2011年7月11日 14:30

    to Mr.あるべると。
    ソフトだけ買っても駄目です。
    ローラーの回転数を得られないと画面が進まないはずです。
    BIKE24では400EUR弱で Tacx I-Magic T1900.30 Virtual Reality Trainer がソフト込みであります。
    SATORIはレース前の準備に使えますし、ヤフオクしてもいいし。

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  6. あるべると・とんま2011年7月29日 5:31

    初心者ロードレーサー様、トーマヴォクレールの心臓 様
    ご教示、ありがとうございました。
    ソフトだけでは役に立たないこと、分かりました。
    残念ですが、お陰様で「更なる 無駄出費」を避けることができました。
    欧州出張して参りまして、御礼の挨拶が遅くなり、失礼致しました。
    実は、ロンドンにも行ったのですが、Tacxブルーを担いで行って返品交換すれば良かったなぁ、と。
    重くて、とても無理ですが・・・
    本当に、ありがとうございました。

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  7. 余計な出費を抑えるという点でお役に立てたようでよかったです。
    Satoriは返品できれば一番かと思いますが、PC連動機能がなくても普通のローラー台として使い続けるという手もあるかと思います。パソコンにつながなくても使えるのであれば、イベントやレース前に会場でウォーミングアップするのにも使えますしね。

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  8. はじめまして。
    こちらの記載を参考に、Bushido購入に至りました。
    当方のブログでもその件につき触れておりますが、TTSに関してはこの記事以上に付け加えるべきものもありませんでしたので…紹介させていただきました。
    何卒ご了承くださいませ。

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  9. 初心者ロードレーサー2011年10月5日 9:24

    MΦRAさん、
    はじめまして。ご紹介ありがとうございます。
    夏場は雨やリカバリー時くらいしか乗らなかったのですが、こちらも冬篭りの時期に入ってきましたのでまたTacxの季節になってきそうです。TacxはBushidoでもVortexでもFortiusでもTTSのおかげで同じインターフェース、機能を実現しているのがすごいですよね。

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