たしかに競輪は公営賭博であるため、それだけ大きな金が動くし、賞金が高いのも当然かもしれない。
では他のスポーツと比べた場合はどうだろうか。
例えばテニスでは、ウィンブルドンの優勝賞金が2011年は約1億3,500万円(110万ポンド)、全米オープンも1億3,800万円(180万ドル)、ゴルフのマスターズ・トーナメントは1億1,000万円(144万ドル)である。
それを考えると、23日間走り続け、最も過酷なレースと言われるツール・ド・フランスの賞金の少なさが目立つ。
付け加えると、一般的に優勝賞金や山岳賞等の個人賞金も、当該個人が独り占めすることなく総額をチームで分配するらしいので、テニスやゴルフに比べてさらに個人当たりの賞金額は低くなる。まあロードレースというスポーツの性質上、アシスト等々がなければ優勝できないので当然といえば当然であるが。
ちなみにスポーツ選手長者番付を見ると、契約金の上位は野球選手が大半で、バスケットボール選手がちらほら。同じレース系統で言えば、唯一F1レーサーの契約金が群を抜いているが、そもそも機材にしろレース運営にしろ莫大な金がかかるモータースポーツであるし、自動車という超巨大産業のアピールの場でもあるのでそれも頷ける。この点、ロードレース選手は見る影もないが、まあそこはスポーツ市場規模が違うのでしょうがないのではあるし、別に対抗するつもりもないのだが…。
■ロードレースというスポーツのエンターテイメント性
これまでまがりなりにもロードレースを走ってきた身として、「やってる方はめちゃくちゃ面白いけど、見てる方はどうなんだろう…」と疑問に思ったことがある。
それを身に染みて感じたのは、9月に走ったベルギーでのアマチュアワールドチャンピオンシップだった。
距離は約107kmだったが、一度スタートした後は70km後にスタート地点の街に戻ってきて通過、その後37km走ってスタート地点の街でゴールというコースである。
コースになっている公道自体が交通規制されているので、自由に車で追いかけることもできず、自分の妻にはスタート地点の街で、ひたすら待っていてもらうことになってしまった。
レース中の自分を見れるのはスタート時と通過時とゴール時の3回のみ、時間にしたらそれぞれ1分にも満たない。数時間も待ち続けてそれしか観戦してもらえなかったのは、逆にこっちが申し訳ない気持ちになってしまった。レースに出る方からしたら一大イベントだが、自転車に興味がない人にしてみれば、ろくに応援もできないのに貴重な旅行中の一日を潰してしまった感じになってしまう。
といった自分の例はさておき、少なくともロードレースは「観客商売に向かないスポーツ」である。
まず、野球、サッカー等々の、閉じられた空間内で行われるチケット制の観戦型スポーツと違い、数十、数百kmにわたる一般道を走るロードレースでは、そんな長い距離を入場制限(?)するわけにはいかないし、観客から観戦料を取ったり、チケット販売で利益を上げることは難しい。
さらに、先に自分の例で触れた通り、周回コースでもない限り、ある地点を一回しか通り過ぎないため、特定の選手を生で見る機会は一瞬である。これがベースボールやバスケットであれば、長い試合時間中、ずーっとお気に入りの選手を目で追いかけることができる。そのため、ロードレースではあらかじめゴール地点や山頂といった勝負のキーポイントで待ち続けることになり、それこそラジオやTVといった媒体でなければレースの途中経過、全体像すらわからない。そう考えるとアメリカ4大スポーツ(アメリカンフットボール、ベースボール、バスケットボール、アイスホッケー)は、すべてクローズドフィールドの客席型であり、試合展開を初めから終わりまで目の前で見れるし、スコアボードを見れば途中経過も一発でわかる。
閉じられた空間という点では、自転車競技でもトラック競技のそれはまさに観客商売向けでもある。目の前で行われるため勝負展開が生でわかるし1レースが短い。自動車のF1レースでは、コースこそ全体を一目で把握できないものの、1分~2分で周回し、何十周(例えば鈴鹿の日本GPでは50周強)もするため、何度もお気に入りのレーサーを見ることができるし、レース展開でなにか動きがあってもすぐに流れがわかる。数時間で1回しか見れないロードレースとは大違いである。
この点、ロードレースの中でもクリテリウム形式であれば、まだ観戦している方も楽しいかもしれない。そういえば、以前1周1マイル(1.6km)のクリテリウムをしたことがあったが、近所の一般人も観戦に来ていて、1周するたびにスタート地点で黄色い歓声が上がって盛り上がったものである。
とはいえ、ロードレースでも様々な手法が試されている。例えばHTC-Columbia(2010年当時、現在のチーム名はTeam HTC-Highroad)が行ったGPSサイコンデータのリアルタイム配信は革新的で、新たなロードレースの楽しみ方の模索として良かったと思う。(やってる人間にとっても、選手のパワーデータなどが公開されるとすごく参考になる)
なにはともあれ、ロードレースをするものの1人として、ロードレース市場が賑わってくれるのを願ってやまないものである。
前回の記事も含め、興味深く拝見いたしました。
返信削除プロチームのHTCやGEOXのスポンサー降格は「観客商売に向かないスポーツ」ゆえの難しさなのでしょうか。
僕も初めてロードレースを生で見た時は何がなんだか分からなかったですし、今でも現場に中継のモニターが
あるとついついそっちを見てしまったりします。
アメリカのモータースポーツでもデイトナやインディはオーバルコースが多く、全体が見渡せるので
クローズドフィールドと言えるかもしれません。昔は「同じとこグルグル回ってなにがおもしろいのだろう」と
思ってたのですが、レース状況を常に追いかけることが出来る点において、生で観戦するほど楽しいのかなと今では思っています。
日本でも、都心でクリテリウムやったら結構盛り上がるのでは?と思います。実際宇都宮で毎年開催されるジャパンカップのクリテリウムは大盛況のようですし。
返信削除あとはヨーロッパのシクロクロスを見ていると、お祭り的な感じで開催しているようなので(ナイトレースもあるそうです)、やはり主催側の工夫が求められるのかなと。トラックも、バンクの中で食事やお酒を飲んだりしつつ観戦するというスタイルはいいなと思います。
金銭的な問題もあるのでしょうが、日本の車連は工夫が足りない場合が多いと感じてしまいます。。。
スポンサーもいろんな理由があると思いますが、少なくともチケット収入といった消費者(観客)から直接得る利益が見込めない分、チームを持つにしても自社商品のPR効果的なところで間接的な利益が見込めないと厳しいでしょうね。中にはゲロルシュタイナーのようにドーピング問題といった別の原因に起因することもあるようですが。
返信削除オーバルコースはコース自体の面白みは少ないかもしれませんが、「あ、今向こう側走ってる」というように直接見えるので、どこか見えないところまで行ってしまって、見れない間に重要な展開が起こってしまうより「ライブ感」が出るのかもしれませんね。
そういえば平日夜のナイトシリーズの最終戦のあとにバーベキューが出たりと、ニューヨーク市のレースでも主催者側の工夫が感じられました。広大な飛行場で暗くなっていく空を見ながらレース後に食べたチキンの味は忘れられません。あと、レストランがスポンサーになっているレースでは毎レース後にレストランの料理が出されたそうです。
返信削除そういう点では、観客商売だけあって競輪場は売店等々充実しているので、ロードのクリテリウムの参考になるかもしれませんね。