ロシアンルーレット的な博打要素を持つレースに対して複雑な心境を抱いている状態の中で、ヒルクライムの、しかもタイムトライアルということで、家族や仕事への不安無く参加できる。
■High Point
今回登る山はニュージャージーにあるHigh Point。
地理的には、Ridge and Valleyと呼ばれる北米東海岸のアパラチア山脈の一つ、Kittatinny Mountainsに属する。↓の地図ではPに隣接しているピンクの地域。ちなみにグランフォンドニューヨークで上るBear Mountainは、HのHudson Highlandsの高地帯に属する山の一つである。
ニュージャージー州で標高が最も高い場所であり、昨年参加したヒルクライムレースのSunrise Mountainと尾根沿いに繋がっており、Sunrise Mountainから北北東に8マイルほど行ったところに位置する。(以下の★マークの場所)
こうしてアメリカ東海岸の山を制覇していくのは面白く、むしろ近場のサーキットのレースよりも達成感があるかもしれない。
■High Pointへ
まずは自動車で乗せていっていただく自転車仲間のかめらいだーさんとランデブーするためにマンハッタンのミッドタウンへ。
休日の早朝はニューヨーク地下鉄のダイヤは乱れまくっていて、平気で30分待つこともあるため自転車の方がよっぽど移動時間が正確になる。
地下鉄では遅れる可能性も高いので、目覚ましがてら1時間ほど自走してハドソン川沿いを北上。
1ヶ月前のGrant's Tombとは違って気温も氷点下にはなっておらず、特に寒すぎることもなくミッドタウンへ到着。
そこから車で高速を通って北西へ。
ちなみにハドソン川沿いにはIntrepidという実際の空母を使った航空博物館があり、
今年の夏に展示されるスペースシャトルの広告が出ていた。
1時間半ほどしてNew Jersey Highlandsの高地に入り、景色が変わってくる。
ここが冒頭にご紹介したKittatinny Mountainsである。
そして会場の駐車場に向かう途中で今回のコースを通ることになり、自動車で下見がてらコースを確認する。
と、思ったよりも車内から見た勾配はきつく、延々と続く上りのコースである。
「ヒルクライムタイムトライアル」というイベント名に加え、元々タイムトライアルシリーズの一つなのでタイムトライアルが主眼かと思っていたが、むしろヒルクライムの方がメインらしい。
■出走前
そんなこんなで会場に到着。
すでに到着している自転車仲間のIさんとSさんに合流して自動車から降りる。
さ、さむい…!
ニューヨークから1時間半の場所であるのに、全然気温が違う…。
そういえば、ここはニュージャージーの最高標高地点…。
山を甘く見すぎていた。というかつい最近Grant's Tombで防寒の重要さが身に染みたはずなのに同じ過ちを繰り返すことになるとは…。
と思いながら車の中でブルブル震えていたが、Iさんより上着をお借りして、固定ローラーでウォーミングアップを開始することで何とか体を温めていくことができたのだった。
体を温めているうちに出走時間が近づいてくる。
それぞれ別々のスタート時間となっており、スタート地点までは下山して自走する必要があるため、Sさんとかめらいだーさんを見送りつつ、自分も数分後にはIさんに別れを告げて下山。
先にスタートした選手たちとすれ違いながら、コースの起伏を確かめるようにして山を降りていく。途中ですれ違ったSさんにエールを送りつつ、スタート地点に到着。
■スタート
Iさんよりお借りした上着のおかげで寒さは和らいでおり、一度スタートしてしまえば寒さはなくなるであろうことからアームウォーマーを外す。
こうなったらレッグウォーマーも外しちゃおうかと思ってたところで、自分の番号が呼ばれたので、いそいそとスタートラインへ。
ヘルメットの締めが緩かったので、締めなおしてるところでスタートブザーが。
まあここで1、2秒違っても大勢に影響がないので、きちんと締めてから漕ぎ出す。
■今回の目的
「大勢に影響がない」と書いたのには背景があって、初めて走る今回のコースでの目的は2つ。
1. 今後同じコースを走るときの比較参考となるように「現時点での基準タイム」を知っておくこと
2. TacxでのGPSシミュレーションと比べてみて、シミュレーションと実走の誤差がどの程度かを知っておくこと
1については現時点での全力を測ってみて、来年以降の自己成長確認用メルクマールにする一方で、2はレースの結果というよりはTacxの精度を知ることで、今後の他のヒルクライムコースのシミュレーションに役立てる目的である。
ちなみに目的は上記2つであるが、目標はもちろん「できるだけ速いタイムを出すこと」。とはいえ、やはり重要なのは数分の差が出るような地脚力であるので、1、2秒の違いしか生まないような部分には神経を尖らせないのである。
■黙々と…
自己よりも他者に対して意識を集中しているレースに比べて、タイムトライアルは自己の内面と向き合うような感覚が強い。
タイムは関係なくて他の選手より先にゴールラインを切ればいいレースと違って、タイムトライアルの場合はその名の通りタイムが全て。どれだけ現時点で最高のパフォーマンスが発揮できるかの自己との戦いである。
とはいえ、タイムトライアルでも他の選手の影響は大きい。先にスタートした選手を見て追っかけたり、後ろから迫ってくる選手に追い立てられたりと、タイムトライアルならではの競い合いがある。
ところが今回は前走者はNo-showでスタートラインに現れず。獲物が前にいない状態で最初はまさしく自分との戦いで黙々とペダルを踏む。
途中で遅れてきた他の選手たちを抜きながら山道へ。
最後の上りの手前で、下りでスピードが出たあとの右折があり、インベタにラインをとってしまっていたためブレーキをかけてしまう。まあロスしたとしても数秒だろうと思って気にせず最後の上りを気合を入れてクリアー。
■レース後
ゴール後の頂上地点で疲れた体を休める。
と、誰かから声をかけられる。
振り返ると見覚えのある黄緑色のジャージ。なんと先月のクラッシュのレースで一緒に逃げ集団を作って最後に集団に吸収されたチームコズミックのアンソニーであった。
「怪我はもう大丈夫なのか」と聞かれ、回復具合とあのときのクラッシュ状況を説明する。彼はニュージャージーに住んでいるため、スプリングシリーズはセントラルパークのレースへの参加のみ、ブルックリンのレースは距離的に遠くて参加していないとのこと。
で、その後の結果発表で、自分は24分27秒で11位。彼は20分53秒で1位だったことを知る。さらに後で知ったことだが、彼は去年のグランフォンドニュージャージーで総合優勝していた実力の持ち主であった。
当時、クラッシュさえなければ彼と同じように優勝争いができたかもしれないと思っていたのはまったくの自惚れで、自分は彼と争うレベルではなかったわけである。
ショックを受けながら、Garmin Edge 500を外してログを確認。やはり何度見てもタイムは変わらず、まだまだ更なる精進が必要だなぁと溜息をついてGarmin Edge 500をしまう。といってもスキンスーツにはポケットがないので、ジッパーを開けてちょうどスキンスーツの腹筋のところに収まるようにしまう。
ちなみに目的の一つであったTacxのシミュレーションとの比較であるが、Tacxでのベストタイムは24分13秒。TacxのGPSライドは勾配はシミュレートできるが、コーナーはシミュレートできない。つまりTacxではダウンヒルで思いっきりペダルを漕げるが、実際はコーナーがあったりするので速度は緩まる。さらに実走の場合は視覚情報が多いのでペダリングだけに集中できるローラーに比べて心拍も上がりやすい。そういったことを考えると、Tacxより実走の方が多少遅れる傾向があり、Tacxの24分13秒に対して、本番が24分27秒というのはかなり正確なシミュレーションができていたのだと思う。
この日は朝から何も食べていなかったが、結果発表を待ってる間にIさんから頂いたおにぎりを食べて空腹を満たす。日本のおにぎりはお腹だけでなく心にも染み渡る感じで嬉しいものである。
さらにIさんの知り合いのDenisという老齢選手と話す。実は彼は去年に自分と同じようにベルギーのレースに参加したとのこと。
彼はベルギーで本番前にテストライドをしたそうで、ぶっつけ本番でしか臨めなかった自分にとっては羨ましかった(といっても今の地脚力では結果はたいして変わらなかったかもしれないが)。ちなみにレース後に彼もブルッへの運河観光をしたそうで、やはりベルギーといえば同じようなところを観光するのだなぁと思ったのであった。
そうこうして結果発表も終わり、近場のダイナーでランチをみんなで食べて帰ろうということに。
自分はトイレへ。
ふぅっと一息つきながらスキンスーツのジッパーを下げる。
ポロッ
おっ?なんか便器に落ちたぞ?
ってGarmin Edge 500!!!!!
便器の中へ自由落下…。
そういえば、ポケットがないからスキンスーツの中に入れておいたなぁ……。くそっ、スキンスーツにはこんな罠があるとは…!?
不幸中の幸い?で小便器だったこともあり、すぐさまサルベージして石鹸で洗い流す。
洗い流しながら、これ、水に濡らしても大丈夫かいんな?と不安になったが、そこは防水がしっかりしているGarminのこと、大丈夫だろうと思い洗いまくる。(ちなみに水に弱いiBikeだったら確実に壊れていたであろう)
そんなこんなで、小学校でやってたらえんがちょ扱いになりそう状態でふんだりけったりになりながらトイレを出る。
「みんなお待たせ、へけけっ」っと駐車場へ。彼らは雑談中で自分のトイレの悲劇など知る由もなし。「しめしめ、みんなにはバレてないぞ」と思いつつ内心ヒヤヒヤしながら合流。
そしてダイナーでアメリカンなランチをして帰途へ。
ニュージャージーを東へ走りニューヨークへ。
近づいてくる摩天楼を見ながら脚を休めるのであった。
ニューヨークの対岸へ着き、乗せていってもらったかめらいだーさんに別れを告げてフェリーへ。
出港を待つ。
ちなみに大人9ドル、自転車が1.25ドルで、合計10.25ドル。
船に乗り込む。
さらばニュージャージー。
こんにちはニューヨーク。
まあ(TTとは関係ないところで)いろいろあったが、4人もの日本人の自転車仲間と一緒に走ったのは初めてのことで、大和魂のサムライ集団による非常に楽しいタイムトライアルであった。
楽しそうな雰囲気が伝わってきますねー。
返信削除一人で淡々と走ったりイベントに参加するのも良いですが、仲間たちと一緒に参加するのも楽しいですよね。
しかしGarminが無事で良かった(^_^;)
High Point TT は楽しかったですね。日本人4人での参加は僕も初めてでしたよ。それはそうと、朝から何も食べて無かったとは… 腹が減ってはレースは出来ませぬぞ。今度はもう少しおにぎりを多めに作って行きます。
返信削除これだけの日本人の自転車仲間と一緒に走れたのは初めてだったのでとても楽しかったです。
返信削除Garminは思ったより頑丈で助かりました。
High Point TTではありがとうございました。おにぎりは久しぶりで仙豆のように効きました。
返信削除朝飯はいつもの(10分で会場に着く)プロスペクトパークと同じ感覚でサプリメントだけで突撃してしまいました。Whitefaceではキチンとカーボローディングしてこうと思います。