転がり抵抗に関するTraining Peaksのまとめ+α

前回ヒルクライムについての抵抗影響を考察したばかりだが、タイミングよくTraining Peaksのサイトで転がり抵抗について取り上げられていたので、ヒルクライム用に視点を絞った上で、簡単に日本語でまとめてみる。

以下データはTraining PeaksのUnderstanding Rolling Resistanceより引用しているので引用先を明記しておくとともに詳細は上記リンク先をご参照いただきたい。

本来なら元記事をツイートするだけでいいのかもしれないが、英語かつImperial法(ポンド単位)の文章なので、ヒルクライム視点で日本語かつメートル法(kg単位)で要約した上で、他のソースからも補足を加えることで元の記事にAdd Valueできればということで備忘録も兼ねてまとめてみる気になった。

1. タイヤの種類と転がり抵抗


まずはタイヤの種類による転がり抵抗の違いから。

同様の記事は日本語のブログでもたくさん取り上げられているので今更感もあるが、タイヤ幅が広い方が転がり抵抗が低く、チューブラーよりクリンチャータイヤの方が、ブチルチューブよりラテックスチューブの方が転がり抵抗が低くなる

実際、自分がロードバイクに乗り始めた10年以上前は23Cのタイヤ幅が主流であったが、ここ数年来ワイド化の方向にあり、今やロードレースやタイムトライアルでも幅が広いタイヤが主流になっている。

とはいえヒルクライムという視点で見た場合、前回取り上げたとおり勾配が上がるほど重力抵抗が占める割合が大半になるので、依然として軽いチューブラーホイールや幅が狭いタイヤによる優位性はあるといえる



ワイドリム全盛期の中でBontragerが敢えてワイドリムではない超軽量ホイールのAeolus XXX Tubularを出したのも、ヒルクライム専用という特殊環境においての最適解が転がり抵抗の最適解と必ずしも一致するわけではないことを示唆している。



実際のタイヤメーカー、モデルごとの転がり抵抗はBicycle Rolling Resistanceのサイトで公開されているのでそちらをご参考いただきたい。



2. 空気圧と転がり抵抗


次にタイヤの空気圧と転がり抵抗。

同じタイヤでも空気圧が高いほど転がり抵抗が低くなる。



と、ここまでがBicycle Rolling Resistanceを引用しているTraining Peaksの記事・・・。

ではタイヤが許容する最高空気圧まで入れればいいのかというと、そうは問屋が卸さない

なぜならBicycle Rolling Resistanceの「実測値」は、タイヤやチューブこそ本物を使っているものの、あくまで研究室内でのLabo Testであるから。

Bicycle Rolling Resistanceのサイトにあるテスト方法を見るとわかる通り、タイヤのみをツルツルのローラーでテストしているが、実走では自転車やライダーの体重も上からかかるし、路面もツルツルなんてことはありえない



前回取り上げたBicyclingの記事にもあった通り、空気圧が高く硬いタイヤになるほど路面の凸凹によるインピーダンス抵抗が高くなる



よって、トラック競技場のようなスムーズな路面でない場合、特に路面が荒れているアメリカの山道などでは実際の路面状況も加味しながら、「インピーダンス抵抗による影響も含めたトータルでの転がり抵抗」を考慮しなければいけない。

ちなみに別ソースであるCycling Tipsの記事より、実際の路面によるインピーダンス抵抗をグラフ化したものがこちらのAのグラフ。完全スムーズな実験室内のローラー(緑線)と比べると一目瞭然、実際の舗装路(青線)では115psi(7.93bar)以上に空気圧を高くすると転がり抵抗が一気に高くなってしまうことがわかる。



なお、グラフBは路面の種類によるサスペンションロスをグラフ化したもので、トレックの2019年モデルであるマドンSLRが衝撃吸収性能であるIsoSpeedを新型にして大幅に強化してきたのも、ライダーの快適性のみならず、このあたりの効率化を狙ってのものと思われる。



3. ヒルクライムでは転がり抵抗の影響は小さくなる


次に速度と転がり抵抗の関係をグラフにしたのがこちら。

ライダーの体重を72.57kg(160 ポンド)、自転車の車体重量を8.16kg(18ポンド)で、Continental 4000s IIのタイヤとブチルチューブで平坦を走った場合に、転がり抵抗のためにどの程度出力が必要になるかを速度別に表したもの。



表を見るとわかるとおり、横軸の速度が速くなるほどより大きな転がり抵抗がかかり、逆に速度が遅いと転がり抵抗が小さくなることがわかる。

つまり、速度が遅いヒルクライムの場合、勾配がきつくなって速度が落ちるほど、相対的な転がり抵抗が占める割合は低くなることを表している。

4. 転がり抵抗を小さくするにはダイエットしる!


上記は速度を可変としたのに対し、次は速度を時速36km(20mph)で固定、転がり抵抗の係数(Crr)も0.00387で固定、車体重量も8.16kg(18ポンド)で固定した場合、ライダーの体重の変化で転がり抵抗に使われる必要出力をグラフにしたもの。



52.16kg(115ポンド)の場合、転がり抵抗を打ち消すのに必要な出力は20.5Wに対し、75.57kg(160ポンド)の場合は27.4Wで、7Wも転がり抵抗に必要な出力が少なくて済むことになる。

つまり、体重が軽ければ軽いほど転がり抵抗が小さくなる=必要出力が少なくて済むということである。

さらに上記のうち速度と車体重量は固定のまま、転がり抵抗係数のCrrを右軸にとって可変にした場合、3パターンのライダー体重でどのように必要出力が変わるかをグラフにしたものがこちら。

ブルーの線はライダー体重52.16kg(115ポンド)、オレンジは 75.57kg(160ポンド)、シルバーは 90.71kg(160ポンド)を表している。



このグラフから読み取れるとおり、体重が軽いほど転がり抵抗係数による必要出力の変化幅(グラフ上でいう傾き)は小さくなる。つまり、体重が軽いほどタイヤの転がり抵抗の違いによる必要出力への影響は小さくなるということである。

ということは前回の重力抵抗と同じく、転がり抵抗でも体重の減少、つまりダイエットによって転がり抵抗を改善できるということになる。

総重量軽減のために、前回触れた車体重量の軽量化だけでなく、今一度ダイエットにも焦点をあててダイエットハックの方法を取り上げていきたいと思う。


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