昨日穴あきサドルについてご紹介した通り、局部の特に柔らかい部分はちょうど真ん中の穴あき部分になっており、ちょうどその左右にある恥骨で座るイメージである。
ここで注意したいのが、局部の圧迫を防ぐコンセプトとはいえ、「穴が開いている設計」と、「穴の左右に座る設計」とは、同じ事を言っているようでも全く違うということである。前者に対応しているサドルは多いのだが、後者までカバーしているサドルは少ない。
例えば同じ穴あきサドルであるSelle SMPでは、穴は開いているものの、サドル前方に恥骨の左右で座るようにはできていない。Selle SMPの場合はむしろサドルの中間部分で坐骨とお尻をホールドする形状の方を売りとしているからか、サドル先端部は局部圧迫防止の穴のみで、サドル先端の左右部分はむしろ恥骨に突き刺さるような形状になっている。
ということで、「単に先端が分かれている(穴が開いている)だけなのか」「先端に座りやすいように出来ているか」には大きな違いがあり、Selle SMPやSelle Italia、SpecializedのS-WORKSといったものも、どちらかというと前者に近いものである。後部がグワッと広がった設計をしているサドルでは、やはりサドルポジションとして想定されているのはサドルの中心またはやや後部に、坐骨とお尻で座る形なのであろう。
そして、「前乗りに特化したサドル」を探した結果、たどり着いたのがダッシュサイクルのサドルであった。
■ダッシュサイクルのサドル種類
この点、ダッシュサイクルの穴あきサドルはStrike.9、TT.9、Tri.7、Stage.7の4種類。
比較しやすいように以下表にしてみたのでご参考いただきたい。
モデル名 | 価格 | 重量 | サイズ | レールサイズ |
---|---|---|---|---|
Stage.9 | 465ドル | 99グラム | 245mm L x 115mm W | 75mm clampable x 7mm |
Strike.9 | 465ドル | 115グラム | 250mm L x 135mm W | 90mm clampable x 7mm |
TT.9 | 575ドル | 99グラム | 270mm L x 115mm W | 75mm clampable x 7mm |
Tri.7 | 465ドル | 79グラム | 190mm L x 115mm W | 75mm clampable x 7mm |
この点、TT.9はトライアスロン専用サドルのような感じで、ボトルケージをサドル後部につけれるようになっており、チタン製のボルトもついている。
また、Strike.9は、前乗りだけではなく後ろ乗りもできるようにしたものである。
ということで、前乗り専用サドルとなると、選択肢はTri.7かStage.9のどちらかとなる。
■Tri.7とStage.9の違い
Tri.7とStage.9の違いを一言で述べると、「UCIルールに適合するかどうか」であり、Tri.7はその名の通りトライアスロン用(つまりUCIルールが及ばない大会用)といえる。
UCI規則1.3.014(PDFリンク)では、「サドルの前後部の最高点を通る平面は水平でなければならない.サドル自体の長さは最短24cm,最長30cmとする.」と定義されている。(ちなみに前者の水平規則についてはベルギーのタイムトライアルの時に測定機を使って2回もやり直しをされた)
そして、通常のロードレースであればUCIルールが適用されるが、ヒルクライムレースではUCIルールが適用されないケースが多い。
乗鞍しかり、アメリカのヒルクライム大会しかりである。
さらに自分はほとんど前乗りで、サドル後部を使わないので、サドル長ははっきりいって関係ない。
となるとTri.7で決まりだと思ったのであるが、一方で「できるだけサドルを前に出したい」※というニーズが自分にはある。(※UCI規則1.3.013の通り、UCI規則に従うのであれば「サドルの先端部が、ボトム・ブラケットの中心を通る垂線より少なくとも5cm後方に位置しなければならない」を守る必要があるが)
であれば、Stage.9の長さでできるだけ後ろにレールをつけた方がよいのではないかというのが、至った結論である。
ということで、自分が出した注文はこちら。
・サドルの色はホワイト、レールはブルー。
・幅はNarrow
・体重は65kg以下(体重を選択する欄がある)
・パッドはトリプルレイヤーをダブルレイヤーにすることで公称値でマイナス8グラム。
さらに社長と直接やりとりをして「できるだけレールを後ろにつけてくれ」とオーダーメイド。そのように作ってもらったのであった。そういう融通が利くのはさすがは完全オーダーメイドのサドルビルダーだけはある。
そして届いたのがこちら。Selle SMPと並べると先端部分の違いがよくわかる。
ここ数日試しているが、まさに前乗りのためのサドルで、先端にちょこんと乗せるだけのポジションを取るとこれまでのSelle SMPよりも痛みが随分改善された。
というかむしろ後ろ半分はパッドすら剥いでもいいくらいだなぁと思ったのであった。(自分は本当にやってしまいそうで怖い・・・)
おー。新兵器はサドルでしたか!しかもまたアクの強い…w
返信削除しかしいつも思うのですが、UCIのルールは本当にファッ〇ですね。水平を強制することになんの意味があるというのでしょう。
あとよくものの本に、「ハンドル位置はサドル先端から垂線距離で〇〇mm程度」みたいな記事を見ますが、こんなんサドル先端の形状によりけりなんで意味ないんじゃないのーなんて…。
たしかにUCIのルールはこじつけというか無意味と思えるものまでありますね。そういえばオブリーの映画、Flying Scotsmanで、UCIの審判員にサドルの距離が短いと指摘を受けて、サドルの先端部分をその場で切り落として抵抗する(けど記録無効にさせられる)シーンを思い出しました。
返信削除