が、その分バスや地下鉄の時間が増えるわけなので、自転車通勤ができないならばせめてその時間で情報を仕入れる。
ということでイギリスの自転車雑誌、Cyclistより。
「Spin fast or slog slowly?」という特集記事。
2013年ツールの15ステージ、Mont Ventouxの上りで、クリス・フルームが鬼のようなケイデンスでアルベルト・コンタドールを引き離した。というところから、長年議論になっている「高ケイデンスで回すか、低ケイデンスの方がいいのか、そもそも最適なケイデンスというものはあるのか」といったトピックに焦点をあてている。
Bath UniversityのCassie Wilson博士曰く、
- 高いケイデンス=心肺機能への負担、低いケイデンス=筋肉への負担
- サイクリストにとってのpreferred cadence(望ましいケイデンス)とは、心肺機能の負担と筋肉への負担の組み合わせを均衡&最小化するケイデンスである。
- 科学的に(心肺と筋肉双方の)エネルギー消費を最小化させる効率的なケイデンスは、通常回しやすいと思われているケイデンスよりも低い。
- つまり、サイクリストは心肺機能よりも筋肉への負担を軽減させるため、エネルギー消費的には「非効率的」な高めのケイデンスで回す傾向がある。
Movistar Pro Cycling Teamのコーチで、University of GranadaのMikel Zabala博士も同様の見解を述べており、
- 長丁場のステージで筋肉負担をセーブするため、高ケイデンスで心肺機能への負荷を高めるようにする。
- 実際にアレハンドロ・バルベルデは、2012年で82rpm、2013年で86rpm、2014年で90-91rpmと、平均ケイデンスを高めることでパフォーマンスを改善させてきた。
- 高ケイデンスでは、筋肉グリコーゲンの消費を節約できるため、長いレース、特に最後のスプリントのために脚を残す際に有用である。
世界選手権タイムトライアルの元イギリス代表で、コーチングプログラムSports Labの代表であるAdam Hardyは、高ケイデンスによるメリットについて別の側面から説明している
- 高ケイデンスによる恩恵は、ペダルストロークの上死点と下死点の効率化にある。
- 上死点と下死点部分では、ペダルにかける力が著しく低下するため、特に上りでは自転車推進力のスローダウンが起きる。
- 上死点、下死点通過時の時間は、60rpmではコンマ1~2秒になるが、100rpmにすることでその時間を半分近くにすることができる。
- 結果として、スピード増減変化のムラを抑えることができ、より効率的に走ることができる。
- つまり、高ケイデンスとは、上死点と下死点におけるスピードロスを最小化する方法なのである。
- ちなみに体重が重い選手ほど最適なケイデンスは低くなる。カンチェラーラやフォイクトがキンタナよりもケイデンスが低いのは、1ダウンストロークあたりのトルクが大きいためであり、脚が長く、重い選手ほど最適なケイデンスは下がる傾向にある。
- また、6時間に及ぶステージレースを走る必要がないトラック選手は、筋グリコーゲンを長時間セーブする必要がないのでこの理論は当てはまらない。
雑誌からの紹介は以上。
とはいいつつも、フルームではないホビーレーサーの多くが、理論はわかりつつも実際に登坂になるとケイデンスが下がる傾向にあるのも事実。
理論と現実で言えば、理論上は「非効率」とされているダンシングを多用しているプロレーサーも多く、そこにはさらに研究すべき現実との乖離がある可能性を忘れてはいけない。
登りになるとギア足りません(笑)
返信削除適正ケイデンスさえわかっていればギアはコースプロファイル(最大最小勾配)から逆算して自動的に決まりますから、あとはセッティングだけですね。
削除この命題のやっかいなところは、仮に心拍数とワット数から適したケイデンスを見いだせたとしても(〇〇ワット出力で一番心拍数が抑えられるのは〇〇回転のとき)、それが将来的にも正しいかどうかは分からないということでしょうか。
返信削除逆に言うと、継続的なトレーニングの指標として、パワーメーターがいかに有効な機材であるかということなのかも。
今回も非常に勉強になるエントリでした。続編『シッティングかダンシングか』を希望しますw。12回シッティング、12回ダンシング…。
鈴木真理選手は自転車本ムックの中で心拍計とパワーメーター両方使うといいと話されてましたが、トルクというより筋肉計測用のパワーに対して心肺機能用のハートレートモニターということで組み合わせると両者の関係が見えてきやすいのかもしれません。
削除12回シッティング、12回ダンシング…。シャカリキを思い出します!