ヒルクライマーにとっては特別と言われることもある乗鞍を走る。
普段は東海岸メインでレースしている自分にとっては初参加。日本のヒルクライムレースは去年のキングオブヒルクライム富士山に引き続き2回目。
一方で、そこまで思い入れというか、ドキドキ感はない。
というのも、展開次第でどんでん返しもあり得るロードレースと違って、ヒルクライムやタイムトライアルの場合、あらかじめある程度の結果はわかってしまう。
完走タイムを事前に算出
例えば今FTP 4w/kgが限界の人が、翌週のレースで5w/kgで走れるなんてことはないわけで、体重や自転車重量、平均出力と距離、勾配がわかれば、予想タイムはかなり正確に計算できてしまう。
実際、シミュレーションサイトで算出したものを、エキノックス、富士山の実走ログと比べてみると、46分間走ったエキノックスでは実走の方が13秒遅く、誤差の乖離率はたったの0.47%、100分間走り続けた富士山では実走の方が3分9秒早く、誤差は3.15%。事前に基準タイムを算出するには十分な精度である。
ということで自分のCP曲線を元に算出すると1時間10分くらい。
よって1時間10分切りを目標タイムに設定。
レース~予想外の宿敵
アナウンスが終わり、音楽とともに最後尾近くでスタート。
乗鞍はネットタイムなので最後尾でも気にしない。
スタートラインでタイムを見ると、スタートしてから22秒ほどでスタートライン通過。
そこから良いペースでがんがん踏んで前方へ。
全体の中での現在順位を把握しようとするが、大集団でおそらく先頭はすでに見えなくなっているので漠然と「今は前方の集団内にいる」ということしかわからず、ネットタイム方式と、さらに同年代グループが二つに分けられてスタート時間が違うということもあり、自分の現在順位は不明。
スタート直後から現在何位かを大体把握しながら走れていた去年の富士山とは大違いである。
同じくらいのペースで走ってる人と数人になり、ばらけたり、近づいたりしながら走っていく。
そして事前にはそこまで予想していなかったほど人が多い。
スタート直後、中盤、後半で分けるならこんな感じで、レース中、常に注意を払って抜いていかないといけない状態。
- スタート直後:同グループ集団をひたすら追い抜く
- 中盤:6分前にスタートしたグループの人たちをひたすら追い抜く
- 後半:6分前、さらにもっと前にスタートしたグループの人たちをひたすら追い抜く&6分後以降にスタートしたグループに抜かれる&下山グループが登場
自分は全体分布で言えば速い方に属するが、かといって先頭集団に入るほど速くもない。
自分のような中途半端な速さの場合、追い抜く上に追い抜かれるという二重苦に苦しまされることになる。
さらにこの、追い抜き抜かれる事態は、後半の九十九折で牙となって襲い掛かる。
通常、左側を走り、追い抜く人は右側から抜くというようになっている(大会ルールブックにもそう記載されている)。
が、左曲がりの九十九折では、左側が急勾配になり、右側の勾配が緩くなるため、多数の人がペースを落とさないように(または楽に走るために)右側を走るため、右側から抜くはずのスペースが塞がれてしまう。
結局、コースが塞がっている場合、混み具合によって減速して待つか、スペースがある左側の急勾配を上ることを余儀なくされる。
最悪の場合、右側から抜こうと思ったが塞がれて急ブレーキし、そこから一気に左に舵を取って急勾配を高出力で駆け上がるということになる。
そんな感じで、前が塞がったり九十九折が出てくるたびに、減速→加速を繰り返す始末で、一定ペースどころかひたすらOver Under Intervalをしている状態。
キャファ通信の「筋肉の生理学から見た効率的なペダリング」から以下転載させていただくが、まさに自分は効率的とは間逆のインターバルトレーニングならぬインターバルヒルクライムを強いられることに・・・。
後半になると後続グループの速い人に抜かれることもあり、「前のグループの遅い人」「自分」「後のグループの速い人」という、スピード域の違う三者が混在する状態になってさらに走りにくくなる。
右側をずっと走っているわけにもいかないので、抜くときは右後ろを振り向いて自分を抜こうとしている人がいないことを確認してから右側に出て、抜いたら左側にも戻りということで気が休まらない。
途中で力尽きて脚をつこうとしたのか、ふらふらと右に寄ってきて右の路肩で止まった人とぶつかりそうになることも。
さらに後半には、ついに恐れていた下山グループが出てきて右側車線が塞がれてしまい、左側車線だけで上記の三者混在状態になり走りにくさはピークに達する。
これまでのヒルクライムやタイムトライアルではサイコンの出力値を見ながら一定のペースを保つようにしていたのだが、今回はほとんどサイコンを見ることもなかった・・・。
結局レース中の意識はほぼ全て他の選手とぶつからないこと、どう抜くかに集中してしまい、元々イメージしていたペダリングやペース配分への意識は見る影もなし。
もうペース配分は無しに等しく、度重なるインターバルで脚も削られ、当初のCP目標とはかけ離れたパワー出力に。
それでも最後、下山待ちをしているOさんが自分を見つけて声援をもらい、気合でゴール。
レースを終えて・・・
ゴールしてサイコンをストップ。
もともと試算していた基準タイムからは4分近く遅い。
ヒルクライムが自分自身との戦いであるなら、今回は出力もペース配分もグダグダで、自己ベストからは程遠い結果に。
混雑が嫌だからチャンピオンクラスで走るという人がいたが、自分も次走るときはチャンピオンクラスにしようと痛感したのであった。チャンピオンクラスであれば、後続でスタートするグループに抜かれることはあっても、数百人も抜いたり下山グループとバッティングしたりということもない。
ただ同グループの場合条件は同じなので、そんな条件の中で好パフォーマンスを出していた上位陣には脱帽の一言。
格の違いを見せつけられたとともに、良い意味で刺激になったレースだった。
ちなみに日本のヒルクライムレースの最高峰とも言われる乗鞍を走ってみたが、そこまで他のレースと違うという感じはしなかった。
前述したとおり、ヒルクライムレースではあらかじめ自分のタイムがある程度正確に予想できてしまうため、別に乗鞍を走らなくても大体のタイム、順位はわかってしまう。
特に自分の場合、わざわざ日本まで来て(飛行機代だけでも10万円以上かけて)走るかと言われれば、里帰りや家族旅行とセットにしなければそのためだけには来ないだろうという感じ。
ただ他のレースと明らかに違うところはその規模。
こんな大人数のヒルクライムレースはアメリカにはなく、それにも関わらず混乱なく運営できているのはさすが日本。
しかも知人から有名人まで、知っている人たちが軒並み出ているため、全国統一模試のランキングのようなもので、「この人よりもこんなに遅いのか」といった感じで他の人と自分を勝った負けたで比較できるのは純粋に楽しい。
あと近年雨続きで短縮コースだったりしたのが、今年はなんとか天気が持って(前日はパラパラと雨がちで、その後も雨が降った)フルコースで開催できたのも運がよかった。
次走るのはいつになるかわからないが、とりあえずまた頑張っていこうと思わせてくれるレースであった。
ありがとう乗鞍。
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