日本では値上げが連日ニュースになってるが円安の恩恵を受ける海外在住者としては助かる。
1ドル134円をつけたということで一時帰国に備えてドルを円に両替した。
事前にアメリカのドル口座から日本の円口座に資金を移す
海外旅行には欠かせない両替だが、空港や現地で両替する際にはレートの比較をしているサイトはいくらでもあるのでそちらをご覧いただきたい。
他にも海外送金サービスはいろいろあるので一概に比較は難しいが、ここでは銀行口座間でドルを円、円をドルにして送金する方法に絞って取り上げてみたい。
銀行レートを使わずに口座間でドルを円に移す
この点、基本的にアメリカの銀行はマルチカレンシーに対応しておらず、事前にアメリカの銀行口座で円を保有しておくことができない。
かといって直接銀行窓口にいって日本円の現金に両替するととんでもない為替レートを適用されて大損することになる(ちなみにWells Fargoのレートだと現金両替は126円で、現在の134円と比べて8円のスプレッド。1万ドル両替すると8万円が為替手数料として取られることになる)。
そのため、普通に海外送金するなら米ドルのアメリカにある口座から円で日本の口座へ送ることになる。
が、銀行の場合、ここで適用される為替レートが悪い。基本的に仲値(TTM、Mid Rate)から±1円は取られるところが多い。
イメージにするとこんな感じ。具体例を出した方がわかりやすいと思うので括弧内に今回自分が使用した銀行、証券会社名を入れている。
この米国の銀行口座でのドルから円への両替時に為替レートで余計な隠れ手数料を取られていることになる。
さらに米国の銀行での国際為替送金手数料が取られ、受け取り側の日本の銀行口座でも手数料が取られるため実質手数料まみれになる。
両替は証券口座で、手数料もSWIFTか国内銀行振込のみ
そこで今回使ったのは間に証券口座をかませる方法。
ポイントは以下4点で、こちらもスキームを図にすると以下のようになる。
- 両替を証券口座内で行うことで安いレートを適用
- アメリカ側の銀行、証券会社での国際送金手数料が発生しない
- 日本側でも全銀ネットが使えれば手数料無料か国内銀行振込分のみ
- 夜送金指示して翌朝受け取れるスピード感
1.両替を証券口座内で行うことで安いレートを適用
FXを取り扱っているような証券会社であれば、TTS(Ask)とTTB(Bid)のスプレッドは極めて小さくなる。実際の取引画面が以下になるが、134.245円のスポットレートに対し、Ask(赤字)は134.249円、Bid(青字)は134.240円と、0.4~0.5銭のスプレッドしか取られていない。銀行が1円(=100銭)取ることを考えると、200分の1の為替レート手数料で済むことになる。
実際にカレンシーコンバージョンをした結果が以下で、6000ドルを134.195円で両替して、805,170円を受け取っている(リアルタイムで為替が動いているので上のスクリーンショットからはレートがずれている)。為替手数料以外に取引手数料が2ドル(画面右下のCommission: 267.83円(2ドル@133.915))かかっているので為替換算で0.045円~0.05円(4.5銭~5銭)ほど取引手数料分が追加されているが、はっきり言って1円や現金両替の8円と比べると誤差のようなレベルで、為替手数料はほぼないものと思っていいレベルである。
2.アメリカ側の銀行、証券会社での国際送金手数料が発生しない
次に、仕向け側の銀行(=送金元の米国の銀行)は、単にACHで証券会社の口座に国内ドル送金をしているだけなので手数料がかからない。
証券口座側から見ても、「本人名義の銀行口座と入出金してるだけ」※なので手数料はかからないか安く済む(※海外送金ではマネロン対応もあって送金目的を知らせる必要がある場合が多いが、単なる入出金なのでそれらの記入が不要というメリットもある)。
ちなみに今回使ったInteractive Brokerでは、ドルのACHは何回使っても無料、日本円での出金は月1回まで無料で、2回目以降は1,600円の手数料が取られる。
今回は今月初回なので、とりあえず日本滞在中の資金(交通費、宿泊費、食費等々)として30万円出金してみたが、IB側の手数料は無しだった。
3.日本側でも全銀ネットが使えれば手数料無料か国内銀行振込分のみ
最後は受け取りで、IBから日本への送金はSWIFTでされてしまったので、受け取り側の日本の銀行(今回は三井住友銀行)で被仕向送金手数料がかかってしまった。
以下が実際に受け取った三井住友銀行の口座明細。30万円出金して入金されたのは296,000円で、4,000円が三井住友銀行側の手数料として差し引かれている(上掲のIBの出金指示確認画面でも右下に受け取り側の銀行での手数料がかかる旨注意書きされている)。
実際に三井住友銀行のウェブサイトで確認すると、被仕向送金手数料で1,500円、円為替取扱手数料として2,500円がかかっているので、合計手数料4,000円で上記金額計算と一致する。
なお、円為替取扱手数料は送金金額の0.05%ということだが、送金金額が500万円を超えない限り最低2,500円がかかってくる。
そもそもFinCENの規則で海外の銀行口座に1万ドル以上残高がある場合はタックスリターンで米国当局への報告義務が生じるので、余計な税務リスクを抱えないためにも1万ドル以内に抑えておきたい。多通貨対応の証券口座なら日本円も置いておけるので、必要なときに使う分だけ日本の銀行口座に入れてやればいい。
この点、本項目の冒頭で「IBから日本への送金はSWIFTでされてしまった」と書いたが、日本円を米ドルにして移したときは日本側の手数料すらかからなかった。
当時は日本に残してあった円預金を米ドルに移してアメリカに持ってこようとしていて、以下のフローで資金移動を行った。
ポイントはIBの証券口座で、日本円の場合は日本国内にあるIBの日本円口座に入金できる。
つまり、米国内のACHと同じく、全銀ネットを使った一般の国内銀行振込と同じ取り扱いで、新生銀行からは他行送金が月〇回まで無料(実際はキャッシュバック)だったので上図の「国内送金」部分も無料。
そして米国内のACHも無料なので、わずかなIBの為替レートスプレッド分のみの、銀行、送金手数料一切不要で日本円をドルにしてこちらに持ってくることができた。
4.夜送金指示して翌朝受け取れるスピード感
もう一つのメリットは送金指示から着金までが早いこと。
今回為替を日本円に替えたのが6月8日の午後5時半すぎ、IBに三井住友銀行への送金指示を出したのが午後8時半だった。
翌朝起きて三井住友銀行のネットバンキングにログインしたら既に着金して残高に反映されていたので、時差を考えると「同営業日中に着金した」ことになる。
それこそ出発前に出金指示を出しておけば、日本の空港に着いたらすぐにATMで引き出せるくらいのスピード感である。
まとめ
このスキームは、日本とアメリカに銀行口座があって、多通貨対応の証券口座を持っているという環境が必要なので誰でもすぐに利用できるものではないが、証券口座は投資をするかどうかに関わらず持っていてよいと思うので環境さえ作っておけば一時帰国や資金移動の必要が生じた際にいつでも利用できるというメリットがある。
IBでは第三者宛への出金にも対応しているようなので、親類や信用できる知人宛に送ることも可能だが、昨今はマネーロンダリングもあって金融機関でのKYCチェックも厳しくなっているし、証明書類を求められることもあるので手間はかかる(ちなみに自分名義の場合はチェックもなにもなく、上記の通り半日で着金した)。
本エントリを書くにあたって他に安くて早い送金手段はないかを調べたところ、Wyse(旧トランスファーワイズ)という送金業者が有名らしいが、失敗談や被仕向銀行から受け取り拒否されたという悪い口コミもあるようで理想的な代替手段とはいえなそう。
個人的にこの送金方法が優れていると思っているのは、適用為替レートや手数料の安さもさることながら、それと安全性を両立していること。
いわゆるメガバンクは手数料が高く、そのためノンバンクや送金業者がサービスを提供しているわけだが、上記受け取り拒否やその業者自体の安全性という点で不安が残る。
その点、この送金方法だと、今回の例のようにCitibank、三井住友銀行ともG-SIFIsの対象となっている国際的に認定された巨大金融機関で、IBもバロンズのネット証券ランキングでトップになるほどメジャーな会社。
資本的に怪しい会社を間に挟むことなく、メジャーどころだけを経由して、仕組みで手数料の低さを実現しているところにメリットがある。
最後にディスクレイマーになるが、当ブログのコンテンツや情報において、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めているものの、情報が古くなったり、規則が変わったりと必ずしも正確性を保証するものではないこと、資金取引に関する決定は利用者ご自身の判断に委ねられ、当ブログを参考にして生じた損害等の責任を負いかねることをご了承いただきたい。
0 件のコメント :
コメントを投稿