機関投資家向け戦略を個人で買えるETF

以前ご紹介した「基本右肩上がりになる」BOXX ETFですが、最近予想外の事態が起こって混乱があったので備忘録がてらまとめておきたいと思います。

BOXX ETFとは?

BOXX ETFとは、低リスクで高利回りを目指す新しいタイプのETFです。 従来のETFとは異なり、ボックススプレッドというオプション取引を駆使することで、超短期国債のようなリスクフリーな利回りを追求しています。この戦略は、機関投資家には知られていましたが、ETFとして一般投資家に提供されるのは画期的な試みでした。

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BOXスプレッドのレッグ構成

2022年末のローンチ以降、急速に資産を増やしたBOXX ETFは、その斬新なコンセプトと、高金利環境下での魅力的な利回りが評価され、多くの投資家から注目を集めました。特に、高所得層の間では、税金対策としても注目されており、短期間で大きな資産を集めました。

ETFの原資産とBOXスプレッド

BOXX ETFの「原資産」を確認してみると、2SPY(SPDR S&P500 ETF)や2IWM(iShares Russell 2000 ETF)のオプションスプレッドを保有しています。これらのETFは日本ではオルカン等でお馴染みのインデックス連動銘柄です。

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BOXX ETFの保有銘柄

株式オプションのティッカーシンボルの先頭についている数字「2」は、ヨーロピアンスタイルのFLEXオプションであることを表しています。FLEXオプションは機関投資家向けにカスタマイズされたオプションで、通常はアメリカンスタイルのみの米国株オプションでもヨーロピアンエクササイズスタイルで組成することができます。

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FLEXオプションは様々なExercise、Settlement Type、Deliveryをカバー

以下はCBOEによるBOXスプレッドの解説を引用しています。

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利用機会:相場が乱高下しそうなとき、こうしたポジションを仕掛け
るのが正当化される場合があります。しかし、最も一般的なのは、オ
プションの売り買いでポジションに足りない「部分」を補い、ポートフ
ォリオ全体または一部を「固定」する場合です。ポジションを手仕舞
うとおそらく不利な価格になるとき、その代替手段となります。
ロング・ボックス:ブル・スプレッドとベア・スプレッドの組み合わせで
す。つまり、権利行使価格Aのコールを買い、Bのコールを売り、Bの
プットを買い、Aのプットを売ります。ポジションの価値はBとAの値
幅から作成時に支払ったプレミアム分を引いたものです。
ショート・ボックス:権利行使価格Bのコールを買い、Aのコールを売
り、Aのプットを買い、Bのプットを売ります。ポジションの価値は作成
時に受け取った正味プレミアムからAとBの値幅を引いたものです。
原資産買いコンバージョン:原資産を買い、Aのプットを買い、Aの
コールを売ります。ポジションの価値は変化しません。「サヤ」は原資
産+プット-A-コールです。
原資産売りコンバージョン:原資産を売り、Aのコールを買い、Aのプ
ットを売ります。ポジションの価値は変化しません。「サヤ」はA+コ
ール-原資産-プットです。

分類:固定もしくは裁定取引
満期時の価値が相場から完全に独立しているため、これらのポジションは「固定取引」とみなされる。これらのポジションを満期時の価値よりも安く買えた場合、または高く売れた場合、収益性がある(取引にかかる手数料等は無視)。

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予想外の課税問題

順調に運用されてきたBOXX ETFですが、最近、投資家にとって予想外の事態が発生しました。 それは、当初の目的であった税金負担の軽減に反し、短期と長期の両方のキャピタルゲインを分配するという決定です。

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Section 1256 contractsでインデックスのデリバティブは長短60/40の税務処理がされる

この決定は、投資家から大きな反発を招きました。特に、年間の所得を一定額以下に抑えようとしていた投資家にとっては、思わぬ税金が発生することになり、不満の声が噴出しました。

なぜこのような事態になったのでしょうか? その原因は、BOXX ETFが当初採用していたS&P 500インデックスオプションにあります。このオプションは、特定の税務処理を引き起こす可能性があり、結果として、投資家に課税対象の利益が分配されることになったのです。

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8月14日の配当が反映されたBOXX ETFチャート

税制上の問題点

BOXX ETFの課税問題には、より深い構造的な問題が潜んでいる可能性があります。それは、変換禁止規定と呼ばれるものです。この規定は、利子相当の収入を生み出すファンドに対して、その収入を蓄積していく中で課税することを義務付けるものです。

一部の専門家からは、BOXX ETFは、この変換禁止規定に抵触しているのではないかという指摘がされています。もしこの指摘が正しいとすれば、BOXX ETFは今後、より厳しい税務上の扱いを受ける可能性があります。

今後の見通し

BOXX ETFの税務上の扱いは、今後の法解釈や税制改正によって大きく変化する可能性があります。投資家にとっては、このETFに投資する際には、税務リスクを十分に考慮する必要があるでしょう。


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