2か月以内に相場が荒れる3つのサイン

 足元のマーケット状況

8月の「円キャリートレード」調整終了後、市場は強気姿勢を取り戻し、上昇トレンドが続いています。投資家の買い意欲が高まり、市場の幅が広がっていることが、上昇トレンドを支えています。

市場の上昇は、買い手と売り手のバランスによって決まります。これまでの上昇トレンドでは、買い手がどんどん高い価格を提示し、売り手を市場に出させることで支えられていました。このサイクルは「現在の価格以上で買ってくれる買い手」がいなくなるまで続きます。

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出来高の中心は5440ドル以下

1. 大統領選&政策変更の不確実性

9月相場というアノマリー

9月と10月は、大統領選挙が迫っており、市場の不確実性が高まります。選挙結果によっては、税制や規制、政府支出などが大きく変わる可能性があり、投資家は警戒しています。また、9月相場と呼ばれる通り、歴史的に9月は株価が下落しやすいという統計的なデータがあります。

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60年間の平均でも9月のみマイナスとなる

政策変更のリスク

大統領選挙の結果によっては、政策が大きく変わる可能性があります。特に、税制や規制、国際貿易に関する政策は、企業の利益に大きな影響を与える可能性があります。

この点、現在分断が深化している米国ではハリスもトランプも政策が大きく異なるため、選挙結果に敏感に反応する市場を見越して、機関投資家はその前にポジションを調整してリスクオフの動きに出る可能性があります。

経済指標の発表とFOMC

9月と10月は、経済指標の発表が重要な時期です。連邦準備制度理事会が利下げを予定していることもあり、雇用、インフレ、住宅などの指標が市場を動かす可能性があります。

9月17~18日のFOMCでは利下げが予定されており、利下げ自体は規定路線ではありますが、経済指標次第で今後の見通しが変わり相場にも影響が出る可能性は高いです。

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6月FOMCのドットチャート

2. 企業の自社株買いが市場に与える影響

企業の自社株買いは、市場の上昇を支える重要な要素ですが、市場の短期的なリスクでもあります。自社株買いのピークはすでに過ぎ、11月初めまでには大きく減少する見込みです。自社株買いの減少は、市場への買い圧力を低下させ、株価の下落につながる可能性があります。

自社株買いが減少する理由

自社株買いは、企業の四半期決算報告に関連して、一時的に停止されることが一般的です。これは、内部情報に基づくインサイダー取引を避けるため、投資家の信頼を確保するため、規制上の懸念を避けるためなど、複数の理由があります。

自社株買いサイクル

9月の後半から自社株買いが減少していきます。10月初めから月末にかけては、企業による株式の買い入れはほとんど行われなくなるでしょう。ちなみに8月初の下落時も自社株買いの閑散期であり買い手が薄かったことがわかります。

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四半期決算タイミングに依存するCorporate Buyback周期

自社株買いが市場に与える影響

自社株買いが市場に与える影響については、以下のチャートがその相関性を表しています。冒頭で「現在の価格以上で買ってくれる買い手がいなくなるまで」と書きましたが、その買い手を構成する自社株買いがなくなると、市場の買い圧力が低下し、株価が下落する可能性が高まります。

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Corporate BuybackとS&P 500の年率変化対比

この点、Pavilion Global Marketsの分析によると、2007年から2021年までの14年間でS&P 500は1556ドルから4600ドルまで上昇しましたが、そのうち40%が自社株買いによるもの、かつ大半は直近の自社株買い影響で、自社株買いがなければ2700ドルにとどまっていたとのことです。

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コロナ以降はBuyback影響が占める割合が大きくなっている

特にコロナ以降は自社株買い額が大きく、最近の上昇の主要なプレイヤーとなっています。

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Buybackの年間変化額とS&P 500の比較

3. 織り込まれるVIX Futures

VIXタームストラクチャーのバックワーデーション

「そんなに下落リスクが高いなら、今のうちからVIXを買っておけばいいんじゃないか」と思われるかもしれませんが、VIXはすでに織り込み済みで、VXV4(VIX10月先物)は期先物に対してバックワーデーションを形成しています。

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VIX先物タームストラクチャー

限月間スプレッド取引

ちなみに10月先物の高騰は2月時点にはすでに起こっていて、当時はまだ半年以上あったので自分もそのスプレッド差分を獲りにいこうとVIX先物のリバースカレンダースプレッドを仕掛け、8月初の上下動もあり鞘を抜くことができました。

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10月限で崩れるコンタンゴ

過去10年間の10月先物と11月先物のリバースカレンダースプレッドを表しているのが以下のグラフです。同様のバックワーデーションは前回の大統領選挙の2020年にも起こっていたことがわかります。

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ただ、現時点でまだ大統領選の趨勢も決まらず、FRBの利下げもあって8月からの足元が不安定であることを考えると、このボラティリティを今から獲りにいくのはリスキーで、個人的にはボラ取りはシストレに任せて裁量は「見」のフェーズにしたいと思います。機会があるとすれば10月限のExpire Date(最終売買日)が近づく手前で大きく吹いた場合ですが、タイミングにもよるのでマーケットの動向を見守っていきたいと思います。


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