FTPとはFile Transfer Protocolの略ではなく、Funds Transfer Pricingの略でもなく、Functional Threshold Powerの略。直訳すると有効出力閾値。心拍トレーニングのLT(乳酸閾値)を知っている人にはイメージがつきやすいかもしれないが、持続可能なパワーの限界をあらわしている。具体的な定義としては、「1時間タイムトライアルをした場合の平均パワー」である。
Training and Racing with a Power Meterによれば、FTPを計測する方法は複数あり、実走によるものとしては、定義通り1時間タイムトライアルをする方法、規定の手順に従って20分のタイムトライアルを行い、その95%をFTP値とする方法がある。上記書籍の中には、20分で測定する場合のトレーニングプログラムが紹介されている。その他にこれまでのトレーニングログを元に割り出す方法もあり、WKO+では過去のトレーニングログを元にFTP値を算出することもできる。
パワープロファイリングでは、FTP以外にも5秒間、1分間、5分間の最大出力をそれぞれ測定して、スプリント等、それぞれの時間域での出力パワーを数値化するのであるが、実際のロードレースでは、5分以上の遅筋による有酸素系の運動が大半を占めるため、FTP値=ロードレーサーとしての能力値と言っても過言ではない。
つまりFTPを知ること、FTPを把握することは、ドラゴンボールでいえばスカウターで戦闘力を計るようなものである。
というわけで、FTP値を上げることがパフォーマンス向上につながり、トレーニングの目的でもあるわけだが、FTP計測タイミングについては人によって異なる。トレーニングを始めたばかりや再開したばかりの人は頻繁に、何年もトレーニングし続けている人は少ない頻度(上昇曲線が緩やか)になる。しかし、一般的な目安としては、年に3回、①基礎トレーニング開始時、②レースシーズン前、③体調を最高に持ってきているシーズン中、に計測すれば十分であるとTrainingPeaksの記事で言及されている。
ちなみにIFやTSSといったパワートレーニング用指標はFTPを元に算出されるため、FTPの上昇、変更は他のトレーニング基準に大きな影響を及ぼす。この点、WKO+ではFTPを変更すると自動で各種再計算を行うようになっている。
また、Cogganのレベル分けでは、FTPの割合に基づいて各トレーニングレベルが以下のように設定されている。
レベル | 名称 | FTP割合 | 目的 | 主な代謝系 | 主な筋繊維 |
---|---|---|---|---|---|
Level 1 | Active Recovery | < 55% | 回復、乳酸除去 | 有酸素系 | 遅筋(Type I) |
Level 2 | Endurance | 56%-75% | 持久力向上 | 有酸素系 | 遅筋(Type I) |
Level 3 | Tempo | 76%-90% | 持久力、FTP向上 | 有酸素系 | 遅筋(Type I) |
Level 4 | Lactate Threshold(LT) | 91%-105% | FTP向上 | 有酸素系 | 遅筋(Type I) |
Level 5 | VO2max | 106%-120% | FTP、VO2max向上 | 有酸素系 | 遅筋(Type I) |
Level 6 | Anaerobic Capacity | 121%-150% | 無酸素運動能力向上 | CP系、解糖系 | 速筋(Type IIa、Type IIx、Type IIb) |
Level 7 | Neuromuscular Power | N/A | 神経筋上 | CP系、解糖系 | 速筋(Type IIa、Type IIx、Type IIb) |
※ちなみに目的、代謝系、筋繊維はあくまで目安である。例えば心拍120bpm程度ですでに速筋が動員され、乳酸が発生することから、Level 2の状態から速筋、無酸素系が少しながらオーバーラップしていることになる。
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