まずは投票結果を元にサマリーしてみたいと思う。
投票結果はこちら。
一番多かったのは「時間と心拍数(心拍ゾーン)」、次に多かったのは「時間とパワー(パワーゾーン)」であった。
トレーニングというものを質と量で見た場合、質はトレーニング強度として「心拍数」と「パワー」を、量はトレーニングボリュームとして、「時間」と「距離」の2種類ずつを用意したが、「心拍数」31票に対して「パワー」22票、「時間」41票に対して「距離」23票という結果になった。
■強度の指標
強度の目安に関しては、心拍数を選んだ中にも「パワーメーターを持っていないため」といった理由も多く、
パワーも心拍数も基本的には相関関係にあり、高い出力(高トルク and/or 高回転)でペダルを漕げばそれだけ心拍数も高くなる。が、心拍数の場合はあくまで「出力したパフォーマンスに対して反応した体(心臓の脈動)の結果」であるため、誤差もあれば時差も出る。例えば体調や周囲の状況、ストレス、緊張によっても影響を受けるため、純粋に「出力強度」の定量的な絶対尺度としては使いにくい。
さらに短時間のインターバルトレーニングの場合はその傾向が顕著で、パワーメーターではリアルタイムにONとOFFの強度の違いが明確に出るのだが、心拍数の場合、完全に回復しない状態で再度強度の高いONパートに入るため、心拍数は高止まりしたままでタイムラグが大きく、ONとOFFの強度指標としては使いにくい。(逆にOFFの短時間の間にどれだけ回復できるかという観点からは非常に役に立つ指標になるのだが…)
たとえば以下Tacxの画面を見ると、上記の通り心拍数(赤)のラグがパワー(緑)のリアルタイム性に比べて大きいことがわかる。
また、TSSを指標にされているというコメントもあったが、これはさらにパワーを中心に据えたトレーニング方法である。
前述した通り、「パワー」は質の指標であり、量の指標とはまた異なるイメージがあったのだが、TSSを指標にすれば、質×量の統合的な指標として利用することができる。自分の場合は、TSSはトレーニング後にTrainingPeaksというソフトウェアで確認するパターンが多いが、TSS表示可能なサイコンがあればリアルタイムにTSSを現時点でのトレーニング度指標として使うことができる。
ちなみに一定のTSSになるまでトレーニングするとなると、概して負荷が高いトレーニングより低いトレーニングの方が長く時間がかかることになる。
一方で、TSSでカバーしきれない部分については以前掲載した通り。軽いギアで長時間ロングライドをした場合と、短時間でスプリント中心の激しいトレーニングをした場合とでは、それぞれ鍛えられる筋線維も違ってくるが、TSSの値からだけではその違いがわからない。
この点、自分はパワーを強度の指標としつつ、パワーと心拍数の関連性を見ることでオーバートレーニングと基礎力向上の指針としている。
例えば、連日トレーニングをしていて、同じパワーを出しているのに妙に息が上がってしまう場合は疲労が溜まっているサインとなるし、逆に中長期的に見て同じ心拍数でも出せるパワーが平均的に上がっている場合には基礎トルク力が向上しているということがわかる。
■量の指標
トレーニングボリュームとしての時間と距離については、日々の実走トレーニングの場合、多かれ少なかれ走るコースによって左右されるので、距離に拠るところは多分にあると思う。特に通勤の場合などでは自宅と会社とのルートとなる以上、赤信号等々で時間は変わることはあっても、距離は(意識的にコースを変えない限りは)一定になるはずである。
とはいえ、自分の場合、起床~出勤準備前までの限られた時間の中でのトレーニングとなるため、どうしても時間縛りになる。例えばプロスペクトパークの周回トレーニングでも、7時を過ぎたあたりでお開きとなるまで、それまで周回できるだけ周回するという形になる。アクティブリカバリーとタイムトライアルでは周回数も変わってくるが、どちらも所定の時間が来れば練習を切り上げなければならない。
ちなみに自分はパワートレーニングを始める前までは、距離を練習量の数値として見ていた。これはこれで、毎日同じコースを走る以上はそれなりに参考にはなるのだが、その「同じコース」というのがミソで、「距離で練習量を図るのはナンセンス」とコメントいただいた通り、コースプロファイル自体で練習量は大きく変わってしまう。
よく「月間1,000km走る」や、「年間10,000km走る」といった目標が雑誌や本等で示されていることがあるが、フラットな距離での1,000kmと、ヒルクライムでの1,000kmは全く別物である。これは、勾配を考えずに「30km/h巡航しましょう」と言っているのと同じで、フラットコースでは楽に達成できても、勾配10%の坂を30km/h巡航するのは至難の業である。例えば乗鞍のコースを逆に、下山する方向で30分切って走ったとしても、そのタイムをチャンピオンクラスの上りのタイムと比べることに何の意味もないことと同じである。
つまり、コースプロファイルによって大きく変わってしまう距離は、およそ客観的かつ定量的な指標にはなりにくいのである。
そのため、時間と強度(パワーなり心拍なり)でトレーニングの量と質を測る。
アンケート結果で「時間」の方が「距離」の2倍近くの得票数となったのも上記指標としての優位性を反映してのことであろう。
そして自分も時間でトレーニングをしてきた。
ところが、ところがである。
最近、本当に「時間」が最適なトレーニング指標なのかという疑問があり、「時間範囲特定型修正距離指標」(※中国語ではありません)を用いようと考えている。
ということで次回に取り上げる際には、そもそもこのアンケートを実施させていただいた経緯とともにそこの辺りを掘り下げていきたいと思う。
とその前に欧州遠征旅行記を完成させねばならないし、そういえばアスリートに付いて回る活性酸素についても詳しく特集したい。仕事をしてトレーニングをして家族サービスもして、その合間の時間しか使えないのでしょうがないのではあるが、1つ1つエントリしていきたいと思うのでお付き合いいただければ幸いである。
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