在米邦人なら知っておきたい3つの税金のこと



アメリカでは年が明けたら税金の季節。

前年1月1日から12月31日までの収入、支出を元に確定申告(タックスリターン)を行う。

日本にいるときは会社がやってくれたので、サラリーマンであれば特に何もする必要はなかったのだが、こちらでは税理士に頼むにしろ、自分で(ソフトウェア等を使って)申告するにしろ、何かしらアクションを起こさないといけない。

その結果、良くも悪くも自分の税引き前の収入や税金というものに否応無く感心を持つことになる。


日本の場合は雇用主である企業が従業員分まで申告してくれるので、特に調整項目(給与以外で多額の収入があったり)がなければ、何もしなくてもその存在に気をかける必要すらなく済んでくれる。

日本にいたときはどれだけ楽だったか、逆にいえばどれだけブラックボックス化されていたかがよくわかる。

煩雑な税金のことなど気にしなくても、雇用主が代わりに申告を済ませてくれるので本来の仕事に専念することができる。

一方でそれは、従業員は税金のことなどに疑問を持つことなく、ただ物言わぬ労働者であれということでもある。気付かないうちは楽だが、一度気付いてしまうといろいろと考えさせられることになる。


そういう自分自身、日本にいたときは給与明細には目を通すものの、その税金額の妥当性をチェックをしたり、自分で計算した結果と突合したりといったことは行わなかった。

そもそも日本は消費税も全国共通、地方税もほとんど差異がなく、固定資産税も基本的に全国一律の1.4%なので、税金を考慮して住む都道府県を変えたりといったこと自体考慮する必要がない。

ところが、アメリカに来てからは逆に日本の税体系が異常に思えてくるから不思議である。

たとえば東京と島根なんて人口や産業、環境が全く違うにも拘らず、基本的に同じ税負担なのである。アメリカでそんなことしたら市民からの不満が噴出するんじゃないかと思う。

アメリカはUnited Statesと言う名の通り、国自体が州ごとの集合体であり州ごとの権限や特色が強く出る。

そしてそれは税金にも及び、住む場所どころかショッピングをする場所によっても違いがでてくる。


消費税


例えば消費税。

デラウェア州は無税なのに対し、ニューヨーク市では8.875%(ニューヨーク州の4%に加え、ニューヨーク市内の4.875%がかかる)とその差は大きい。

1万ドルの電動Dura-Aceロードバイクでも買おうものなら、ニューヨーク市では887.5ドル(≒10万円強)も余計に払わなければいけない。

「Live Free or Die」が州のモットーで、マウントワシントンのヒルクライムで(ロードバイク乗りにとっては)有名なニューハンプシャー州も消費税ゼロ。




ニュージャージー州の消費税は7%だったが、2017年からは6.875%に、2018年からは6.625%に下がる。増税議論しかないどこかの国とは大違いである。これも州ごとの優劣や買い物客の誘致といった競争の結果であり、全国一律の場合では税効果による呼び込み等の地方政策が限られてしまう。

ちなみにニュージャージー州にはさらにUEZ(Urban Enterprise Zone, 都市産業ゾーン)という経済特区があり、そこでは消費税が半額になったりとさらに細かく税制による産業振興がされている。



固定資産税


そんなニュージャージー州だが、固定資産税(Property Tax)は全米最悪で、51州中で一番高い税率の2.29%を誇る

家を買うなら(賃貸料にも反映されているので借りる場合でも)ニュージャージー州は避けるべき。

ここでもデラウェア州は低く0.53%、一方、日本人が多いコネチカット州は1.91%と高め。

州ごとの固定資産税はこちらのサイトで確認することができる。

2016’s Property Taxes by State


ちなみに自分は家を買う予定はないので関係ないと思っている人でも、賃貸料の中に固定資産税の多寡は反映されているので賃貸の人も例外なく影響を受けることになる。


所得税


消費税がなく、固定資産税も安く、「アメリカのタックスヘイブン」の異名も取るデラウェア州だが、所得税は高め。

世界最悪のタックスヘイブンはアメリカにある


とはいっても、所得税は累進課税になっていたり、そうでなかったりする州もあるのでさらに複雑を極める。

例えば2016年では、デラウェア州の所得税は最高税率は6.6%。ニュージャージー州の8.97%や、ニューヨーク州の8.82%と比べれば低く思える。

が、累進税の税率区分の基準が低く、夫婦合算(Married Filing Joint)で申告する場合でも、一世帯で年収が6万ドル(≒685万円)を超える場合には最高税率の6.6%が適用されてしまう。

一方で、同じく世帯年収6万ドルの場合、ニュージャージー州では上から5番目の税率区分で2.45%、ニューヨーク州でも上から4番目の税率区分の6.45%なので、デラウェア州の税率が一番高くなってしまう。

世帯年収6万ドルなんて(基本日本より高給の)アメリカであれば普通に突破してしまうし、ましてや共働きであれば越えない方が難しい金額なので、所得税に限ってはニュージャージー州に軍配が上がる。

ちなみにフロリダ州やネバダ州は州所得税無し。まさに所得税におけるタックスヘイブンである。

なお、2016年度の州ごとの所得税は以下から確認できる。

State Individual Income Tax Rates and Brackets for 2016(英語、PDFリンク)


So what?


と、税金の面から損得を見てきたが、実際の人生は税金のみにあらず。

生活をしていく中での治安、住環境、人間関係、仕事のしやすさなど、様々な面から総合的に判断すべきで、税金が高くてもそれを上回るメリットがあれば敢えて税金が高い場所に住むことも合理的である。

固定資産税の高さは教育水準の高さにもつながるし、ギャング団がはびこったカリフォルニア州のストックトンのように、財政破綻して治安が悪くなってしまっては意味がない。




そこのあたりもニューヨークやニュージャージーに日本人が多い背景かもしれない。






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