いや、結石はシュウ酸や酸性食品が原因だから、動物性タンパク質はその一因には成り得るけどタンパク質全般じゃないですよねと回答しておいたが気になったので深く掘り下げてみる。
まあ結論から言うと上記の通りで、動物性タンパク質に代表される獣肉類は、単に酸性食品のひとつというだけであって、結石の原因となるシュウ酸や酸性食品の代表ではない。
そもそもシュウ酸含有率の筆頭食品はホウレンソウで、「シュウ酸を多く含む食品」ランキングの上位は葉っぱ系野菜やお茶系。
酸性食品に関しても、上位に来るのは卵黄(脂肪)、白米、砂糖(炭水化物)で、タンパク質含有率が高いかどうかとの相関性はないと言っていい。
ちなみにロッキーのシーンのせいか、卵黄は筋肉を付けるタンパク質食品と思われがちである。
が、タンパク質量の2倍以上の脂肪量を含み(カロリーにすると4倍以上)かつ糖質ゼロということで、むしろ脂肪中心のケトン食品といえる。
「タンパク質過剰摂取」の影響についての研究結果
この点、実際に実験を用いてタンパク質過剰摂取の是非と真偽を検証したのが元NSCA(National Strength and Conditioning Association)理事、国際スポーツ栄養学会(ISSN)の会長かつ共同設立者のJose Antonio氏。
「私はトレーニングを積む大学生の被験者が、タンパク質の過剰摂取をするとどうなるか実験しました。トレーニング方法は従来と変わらず行い、1日4.4g/kgを摂取し、体組成、体重、除脂肪量、脂肪量がタンパク質を過剰摂取する前と比べてどのように変化をするかを調べました。
1日4.4/kgというのは、かなり高いタンパク質の量になります。これだけのタンパク質を摂ろうと思えば、1日ドーナツ4個を余分に食べるほどのカロリー数になります。そしてこの研究の結果分かったことは、タンパク質を過剰摂取しても『何も起こらなかった』つまり、体組成、体重、除脂肪量、脂肪量にはなんら大きな影響は与えなかったと考えられます。
トレーニングの量や強度を変えない限りは、タンパク質は体組成に影響を与えないということが分かったのです。」
また、他の実験でも、高タンパクを摂取しトレーニングをした場合には、体脂肪が下がり、タンパク質を大量に摂ることは体組成に効果的であるということが分かったそうです。
Jose Antonio氏が、高タンパク質についての研究を始めた理由は、高タンパク食が腎臓に良くないと、証拠や根拠もないまま30年ほど前から言われていたことに決着をつけたいと思ったことがきっかけだそうです。
「私は、1年間ボディビルダーの男性たちを対象として高タンパク質食のサイクルを採用し、臨床実験と研究を行いました。その結果、肝臓や腎臓の機能には何も影響を及ぼさないことがわかりました。現状、アスリートを見ていると、プロテインが過小摂取の人が多いのです。炭水化物は朝昼版と3食米を食べればすぐに過剰摂取になりますが、タンパク質の過剰摂取というのはなかなか難しいものなのです。」
運動生理学やスポーツ栄養学において炭水化物の研究は多くされてきているのに対して、『高タンパクの過剰摂取』について研究をしているのは、Jose Antonio氏と他にもう一人、世界で2人しか居ないそうです。
Jose Antonio氏は「最近、ソーシャルメディアが発達してきて、その中で何の検証もなく正しい知識も持たずに、タンパク質が腎臓に悪いだとか、クレアチンを飲むと痙攣を引き起こす、腎臓にも悪いなどと流す人達が沢山います。また何も知らない素人がそういう記事を書き発信しているので、きちんと研究して発信している情報を覆い隠してしまっています。なぜならそのような研究をベースにした情報はとても少ないからです。国際スポーツ栄養学会(ISSN)では、栄養の真実を伝えるべく力を尽くしています。そういう誤解に惑わされないで下さい。高タンパク質食を1年以上続けても有害ではなく、むしろ主な栄養素としてタンパク質を考えるべきであると考えます。」と語ります。
Jose Antonio氏の研究は、アメリカでアジア人を含む様々な人種を用いて実験や検証をされています。日本人だから、タンパク質の量は少ない方が良いという理由は思い浮かばないとのことでした。体を鍛えている方々は特に、1日体重1kgあたり3gのタンパク質摂取を目安に体づくりを目指してみてはいかがでしょうか。
1年間毎日 高タンパク質食を摂取すると、、、 NSCAカンファレンス
さらに、USDA(アメリカ合衆国農務省)もタンパク質摂取量について危険性がないことを発表しており、Life Hackerの記事でプロテイン・ダイエットの「危険性」とのサブタイトルで言及されている。
政府によるタンパク質を推奨する文書によると、タンパク質の摂りすぎの弊害はないそうです。そのかわり「大人の摂取カロリーの10~35%はタンパク質を摂取しよう」と推奨しています。1日あたりの最低限の推奨摂取量の数値は出していますが、基本的には上限はなく、推奨摂取量の脂肪と炭水化物を摂ったうえで、タンパク質は好きなだけ摂ってもよいそうです。
政府の文書ではタンパク質の摂りすぎが危険だとは言っていない、ということは、一体だれが危険だと言っているのでしょうか?ベジタリアンびいきの Physicians' Committee for Responsible Medicine等の団体が、タンパク質が高めの食事は、腎臓の病気や癌、腎臓結石を引き起こす、と言っているのです。
でも、タンパク質は肉だけではありません。確かに牛や羊などの赤肉や加工肉の摂りすぎは癌と関係しますが、鶏肉や豆腐、豆などは癌と関係ありません。また、腎臓結石との関連も不確かです。動物性たんぱく質が関係あるようですが、American College of Physiciansは、腎臓結石の人にタンパク質の低めの食事を推奨できるほど十分な証拠は得られなかったそうです(詳しくはこちら)。
PCRMが提唱している、タンパク質の摂りすぎは「腎臓に負担をかける」という説も、誤りだと指摘されています。Chris Kresserさんによると、腎臓を提供した人の腎臓病のリスクはなく、残った腎臓は今までの2倍動くようになるそうです。ということは「腎臓への負担」説は、通用しませんよね。タンパク質の低い食事は、すでに腎臓病の人の食事療法としては適していますが、タンパク質が高めの食事が健康な腎臓の人の負担になることはありません(詳しくはこちら)。
タンパク質は摂り過ぎても体に害があるわけではない
まあ、政府の言うことは信じられないという人もいるだろうし、政府が常に本当のことを言っているわけではないというのは一部正しくもあるが、だからといって「じゃあ匿名のネット情報の方を信じよう」となるのはいささか論理が飛躍しすぎている。
タンパク質の摂り過ぎで死亡したという女性ボディビルダーの話
上記Jose Antonio氏の言う「最近、ソーシャルメディアが発達してきて、その中で何の検証もなく正しい知識も持たずに、タンパク質が腎臓に悪いだとか、クレアチンを飲むと痙攣を引き起こす、腎臓にも悪いなどと流す人達が沢山います。」の典型的な例が、タンパク質の摂り過ぎで死亡したという女性のニュースだろう。
メーガンは亡くなる前、プロテインシェイク、ビタミンのサプリメントやたんぱく質が豊富な食べ物のみとストイックな食生活を送っていた。亡くなった当時は、決定的な死因が分からなかった。
しかし後に、メーガンは尿素サイクル異常症という疾患を持っていたことが発覚。尿素サイクル異常症というのは、8,500人に1人がかかるという珍しい病気で、治療せずにそのままにしておくと、血液の中のアンモニアが溜まっていき、結果脳損傷や昏睡状態、命の危険に繋がるとも言われている。
タンパク質は分解される時にアンモニアが発生し、それが尿意になって排泄される。メーガンは大量にタンパク質を摂取していたため、体の中でアンモニアが上手く消化できずに溜まっていってしまったことが原因に。
25歳2児の母であるボディビルダーがタンパク質の摂りすぎで死亡
ショッキングでインパクトのあるニュースだからか、国際スポーツ栄養学会のJose Antonio氏の内容より、むしろこちらのニュースの方がネットで拡散されてしまっている。
オーストラリアのミーガン・へフォードさん。
女性はなんとプロテインの過剰摂取で死亡したと報じられています。
ミーガンさんはボディービルダーであり、大会への出場のために大量にプロテインを摂取したようです。
ミーガンさんは今年6月19日、西オーストラリア州パースのアパートで意識を失って倒れているところを発見され、病院に搬送されました。
救急医が、ミーガンさんの家族に脳死状態だと宣告した三日後、7歳の娘と5歳の息子を残し死亡。
医師によると「たんぱく質の分解機能に障害がある遺伝性疾患だった可能性が高い」と指摘し、
遺族とともに栄養補助食品メーカーに、規制の必要性を訴えているようです。
ミーガンさん本人は自覚がなかったようですが、彼女は8000人にひとりという割合で発症する遺伝性疾患を患っていた様子。
その遺伝とは、たんぱく質を過剰に摂取すると、体内で分解しきれずに、血液中のアンモニア濃度が高まって、脳浮腫を引き起こすというものでした。
プロテインによって死亡者も出てしまったのですね。
【警告】プロテインの副作用がヤバすぎ!!その危険な理由がこちら…。
まさに最後の一文など、「プロテインの過剰摂取=死ぬ」とセンセーショナルに誤った結論付けをしているが、よく読めばわかるとおり、この女性が死亡した原因は「8,500人に1人という割合で発症する尿素サイクル異常症という遺伝性疾患」であって、それがタンパク質の過剰摂取とつながってしまったにすぎない。
たとえば色素性乾皮症。
日本人の15,000人に1人という割合で発症する遺伝性皮膚疾患で、日光を浴びると痛みを伴う激しい日焼けが生じ、がん細胞が増殖、皮膚がんが普通の人の約2千倍多く生じる病気である。
もちろんこの病気の対策は「直射日光を極力避けること」だが、上記記事の論調で行くと、「太陽光で死ぬ!!みんな太陽光を浴びるのはやめましょう!」という話になる。
言うまでもなく、体内時計やホルモン調節、ビタミンD等で太陽光を浴びる利点は多く推奨もされている。
かたや、「8,500人に1人という割合で発症する尿素サイクル異常症という遺伝性疾患」→「プロテインの副作用がヤバすぎ!!」
かたや、「15,000人に1人という割合で発症する色素性乾皮症という遺伝性疾患」→「でも発症者でなければ太陽光をちゃんと浴びましょう」では、論理破綻も甚だしい。
論理飛躍のトンデモ記事が蔓延するという、まさに津川友介氏が自著の紹介で書いていたこちらのコメントそのままである。
日本は「野菜を食べると健康になる」という本は全く売れないが、「野菜は食べるな」という本はベストセラーになるポテンシャルがある国だと私は思っています。つまり何の根拠もないが斬新で目新しい本(楽して健康になれる方法が書いてある本)は売れるが、正しい内容の本は売れないのです。日本で本屋に行くと、「ふくらはぎをもむと健康になる」という内容の本や「腎臓をもむと元気になる」という内容の本が数十万部売れるベストセラーになっています。内容が正確ではない糖質制限の本もベストセラーになっています。
出版社は本が売れなければ経営が成り立たなくなるので、このようなトンデモ本を次々と出版しています。売れている本は本屋で平置きにされますし、新聞広告もたくさん打つようになります。多くの人は正しい情報と間違っている情報を見分けることができないので(健康に関する情報の非対称性)、売れている本、話題になっている本こそ正しい内容の本なのではないかと考えるようになります。そうすると、またトンデモ本が売れるようになる。つまり健康に関してトンデモ本ばかり出版され、正しい内容の本が駆逐されてしまっているのには「経済的合理性」があることが問題の根源なのだと思います(このあたりに関しては3月25日に発売されたばかりの朽木誠一郎さんの新著が詳しいです)。
なぜ「野菜を食べると健康になる」という本は売れないが「野菜は食べるな」という本はベストセラーになりうるのか?
要はメディアリテラシーの問題なのだが、多数派の声が真偽はともかく影響を持つのが今の世界・・・。
トランプではないが「フェイクニュースだ!」と叫びたい気分である。
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