■観光について
まずは観光面を振り返りたい。サラリーマン生活の自分としては、海外に行くような長期休暇を取れるのは1年に1回ほどなので、家族サービスの観点からも、海外へレースに行くということは家族旅行を兼ねることを意味している。
この点、ヨーロッパということで観光地としては文句なく、しかもベルギーもドイツもルクセンブルクも初めてであったので丁度良い旅行となった。
リエージュを訪ね、
ドイツまで足を伸ばしてアーヘンの大聖堂へ、
ケルンの大聖堂を上り、
アルデンヌ地方に滞在し、
バストーニュを通過し、
ルクセンブルクの古城を訪ね、
世界遺産のボックの砲台を歩き、
ルクセンブルクの城塞都市を体験し、
ヘントでは運河を渡り、
中世の街並みを見て、
ブルッヘでは鐘楼を上り、
アントウェルペンではノートルダム大聖堂を訪ね、
ブリュッセルで小便小僧を堪能した。
それに坂が少ないフランダース地方は自転車天国で、その自転車利用率の高さに驚かされたものである。
マクドナルドの窓から外を見るとロードレースのオブジェがあったりと、
街のあちこちに自転車のオブジェがあり、まさに自転車の国であった。
■ベルギーのふたつの地方
国とはいえ、ベルギーのフランス語圏とオランダ語圏による違いも大きかった。
一歩フランダース地方に入ると、街中の表記もレシートも一気にオランダ語になる。オランダ語はドイツ語の低地方言と呼ばれるだけある上(オランダ人を指すDutchとは元々ドイツ人を意味している)、地理的にもドイツとイギリスに挟まれているため、英語とドイツ語の中間のようなところがある。
例えばドイツ語ではDanke、英語でThank、オランダ語ではDank。英語のThank you(サンキュー)は、オランダ語でDank u(ダンキュー)となる。
以前ご紹介したように、ベルギーはフランダース地域とワロン地域で行政政府も分かれており、国家が二分されているような状況である。
そのことは今年のロンデ・ファン・フラーンデレン(Ronde van Vlaanderen)を見てもよくわかる。
応援で振られている旗はフランデレン地域の旗で、ベルギーの国旗など振られていない。
日本語では、ヘントがゲント、ブルッヘがブルージュなどと、本来のオランダ語音ではなく、英語やフランス語発音のカタカナで表記されることもあるが、これらの確執を知っていると、フランダース地域(オランダ語)の都市をフランス語(ワロン地域)発音のカタカナで表記することに違和感を感じずにはいられないものがある。
■サイクリングについて
せっかくロードバイクを輪行していくのだからということで、ほぼ毎朝、行く先々の土地を早朝サイクリングすることにした。
贅沢を言えば、1ヶ月ほど休みをとってベルギー中を自転車で巡りたかったのだが、仕事も家庭もあるので、都市間の移動は車で、サイクリングも早朝の1時間前後のみという短い中での実行となった。
短い時間ではあったものの、自転車のメッカだけあって、リエージュやヘント、ブルッへにケルンなど、クラシックレースやUCIヨーロッパツアーでプロが走っている有名な道、峠を走れるのは感慨深いものとなった。
ケルンでのサイクリング。
2003年のケルン一周レース(Rund um Köln)で同じ橋を走るヤン・ウルリッヒ。
そういえば、土井プロのブログでもRund um Kölnのレースの様子が紹介されていた。
また、各地の朝の風景、通勤、通学の地元の人々に混じって走れたのもよかった。
観光名所を見て回るだけでは味わえない、生活の匂いを感じながら走る。
子どもを乗せて走るお母さんや川辺を歩いて登校する学生など、その土地の雰囲気に直に触れることができた。
■レースについて
タイムトライアルもロードレースも雨、さらに一度も事前にテスト走行をする機会もなく、ロードレースではスタート直後にコンタクトレンズが片方落ちてしまうということで、レースの内容自体は会心のものには程遠かった。
しかし、6大陸32カ国の選手たちとレースができたことはまたとない経験となった。
イタリアやオーストラリアの選手と即席トレインを組んで連帯感を感じたり、アメリカの選手と同郷意識が芽生えたり、地元のレースでは味わえない国際大会ならではの楽しさがあった。
タイムトライアルでも、普段のニューヨークでは行われないバイクチェックなどがあり、何度もサドルの水平でダメだしされたり、ドーピングコントロールルームがあったりと、本場のレギュレーションチェックを味わうことができた。
つい先週末、ちょうど2012年のリエージュ~バストーニュ~リエージュが開催されたばかりだが、画面に映る街を同じようにレースしていたと思うとなんだか不思議な感覚である。
■今年のレース
ということで気になるのは今年の大会である。
なんだかんだいって2011年の大会は一生の思い出に残るようなものになったので、機会があればまた出てみたいと思ったものである。
もちろん予選で好成績を残して決勝出場権を得ないといけないのだが、事前に大会側から案内が来たところによると、開催地は「Pietermaritzburg」。
…。どこやねん…。
■ピーターマリッツバーグ (Pietermaritzburg)
調べてみたところ、ピーターマリッツバーグは、南アフリカ共和国のクワズール・ナタール州の州都である。
クワズール・ナタール州は、85%が黒人、話される言語の80%以上がズールー語とのこと。ズールー語は、ズールー族の95%、約900万人が話す言語で、南アフリカ共和国の11の公用語の一つとなっている。ちなみに、身近なズールー語(?)として、LinuxのディストリビューションであるUbuntuは、ズールー語で「他者への思いやり」といった意味があるらしい。
…。
うーむ、今回のオランダ語やフランス語は、自転車の国であるベルギー、そしてオランダにフランスで話されている言葉ということでモチベーションも沸いたし、ロードレース好きとしてはわからないながらも少しずつ学んで、片言で挨拶をしていたのだが、ズールー語は……どうでもいいなぁ…。
そしてベルギーといえば、先にも触れたように100年以上続く伝統のクラシックレースの舞台であり、エディ・メルクスも輩出した自転車界にとって外せない国である。
一方で南アフリカは…、特にこれといって思い入れもない……。
さらにこれといった観光名所もない…。
まあそれでもアパルトヘイトも廃止されて、黒人のマンデラ大統領も出て、サッカーのワールドカップも開催されたくらいだから、アフリカの盟主国として国際大会をするに相応しい土地なのだろう。
と思ってWikipediaを調べてみると…。
『アパルトヘイト廃止後に起きた失業問題により、南アフリカでは急速に治安が悪化した。現在、ヨハネスブルグをはじめとして南アフリカの都市では、殺人、強盗、強姦、強盗殺人、麻薬売買などの凶悪犯罪が昼夜を問わず多発している。殺人に限っては未遂を含め111.30件/10万人と日本の約110倍となっている。凶悪犯罪においても、軒並み世界平均件数と比べて異常に高い犯罪率となっている。』
( ゚д゚)ポカーン
『犯罪者は発砲を全く躊躇しないケースもあり、極めて危険』
( ゚д゚)
『強姦発生率についても123.85件/10万人(国連薬物犯罪オフィス (UNODC))となっており、世界最悪の発生率(日本の約123倍)』
(( ゚д゚))
『比較的安全と思われる高級ホテルの中ですら、従業員が鍵を開けて客室に侵入し女性旅行客をレイプするといった事件も発生』
((( ゚д゚)))
『南アフリカ政府によって行われた調査によると、男性は3人に1人を上回る37.4%が過去に女性をレイプした経験があると回答(男性の7%が集団レイプの経験があると回答)、さらに女性は25.3%がレイプされた経験があると回答』
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
少なくとも家族連れで行くような場所ではないようだ…。
ということで今年は出ることはないと思うが、機会があれば再び出てみたいと思う。そしてそのために今は日々精進するのみである。
いつかまた、世界の強豪たちと戦うそのときまで…。
本当に旅行に言った気分になりました。
返信削除ありがとうございました。
コレだけの計画を立てて、
レースに出られて、
家族サービスもこなし、
BLOGも書き
さらに、仕事も・・・
見習いますっ!
大変楽しい旅行記ありがとうございました。
返信削除改めて振り返るとホントにスゴイ旅でしたね。
レースではコンタクトレンズが落ちてしまった事が悔やまれますが、諸外国の選手達と共に走ることが出来たのはイイ思い出ですね。
あとはやはりブリュッセルのジュリアンが最高でした(笑)
しかしピーターマリッツバーグには絶対に行きたくないですねー(^_^;)
何故ここで開催しようと決めたんだろう?
欧州遠征記、完結?おめでとうございます。
返信削除読んでいて自分がロードバイクで旅をしているような気分にさせてくれる、素晴らしい旅行記でした。
ヨーロッパの街並みって、本当に美しいですねえ…
ヨーロッパ遠征記、完結おめでとうございます。
返信削除南アフリカですか?
まぁ、「リアル北斗の拳」と呼ばれている国ですからね。
行かなくて正解かと思います。
空港から無事に自転車が出てくるのか興味津々ですがw
こちらこそ長い旅行記にお付き合いいただきありがとうございました。
返信削除家族には自転車で迷惑をかけることも多く、まだまだな自分ですが今後ともよろしくお願いします。
レースはまだまだでしたが、とても良い刺激になりました。ベルギーは見所いっぱいで、ドイツもルクセンブルクも印象深い場所が多かったです。
返信削除たしかになぜピーターマリッツバーグを選んだんだというのが大会側に聞いてみたいところですね。ツール・ド・北京にしろ、UCIは世界規模での知名度アップを図っているようなので、もしかしたら開催場所は今後世界中を転々とする予定なのかもしれません。
ありがとうございます。アメリカだけでなくてヨーロッパもご紹介できてよかったです。時間もかかってしまい、エントリも間が空いてしまったので、改めて全体の目次的なものを上げたいと思います。
返信削除ありがとうございます。
返信削除南アフリカは遠い以前にやはり治安面から無しですね…。
空港で例え無事だったとしてもどこかで盗まれそうな気がします。現地の生活レベルからしたらロードバイクなんて高級自動車のようなものでしょうから…。