日本に住んでいる人にはおなじみなのかもしれないが、こちらでこれを知ったときは衝撃を受けた。あまりに誤解を与えるその内容に取り上げれずにはいられなかった。
CMを見て、100歩譲ってゴリマッチョはかっこ悪いという風潮を作っていることはまあいいとしよう。悪役覆面レスラー風のゴリマッチョと、イケメン俳優(まあ「細」であってもマッチョには見えないが)を対比させているのはあまりにもやり方がえげつないが、世の中のミーハーな女性たちが細マッチョになびくのもまあ当然かもしれない。
自分が違和感を感じたのは、「細マッチョなあなたに」といってプロテインウォーターを売りにしているところである。
■細マッチョとゴリマッチョとノンマッチョの違い
筋肉と体型で言えば以下の4種類に区分される。
体型 | 筋肉あり | 筋肉なし |
---|---|---|
細 | 持久系スポーツマン | ガリ |
太 | 瞬発系スポーツマン | デブ |
このうち、このドリンク的には、持久系スポーツ用の筋肉が付いた体を細マッチョ、瞬発系スポーツ用の筋肉が付いた体をゴリマッチョと形容している。
このブログを見ているような方には既にご存知の通り、筋肥大の有無は筋組織の違いであって、速筋を鍛えれば筋肥大して体格は太くなるし、遅筋を鍛えれば筋肥大は起こらず、体格は細いままである。マラソン選手と短距離選手の違いと言えばわかりやすいかもしれない。
同じ時間トレーニングをしていても、マラソン選手はゴリマッチョにはならないし、短距離選手は細マッチョにはならない。それはそれぞれの競技に適したトレーニング方式の違いであり、筋肥大の有無の問題である。
さらに言えば、持久系トレーニングもカロリーを多く消費するので、プロテインを多く摂取していても相対的にそれ以上のトレーニングをしていれば、カロリーの絶対量に関わらず太ることはない。しかも持久系のトレーニングをしている限り、カロリー多寡になっても脂肪が付くだけであり、速筋が発達して筋肥大が起こるわけではない(ゴリマッチョにはなれない)。
つまり、細マッチョとゴリマッチョの違いはトレーニングの質の違いに起因しており、プロテインの摂取量にも、カロリーの摂取量にも関係がない。
この内容を元に、プロテインウォーターについて見ていきたいと思う。
■プロテインウォーターの成分比較
まず成分表によると、タンパク質(プロテイン)は0.52g/100ml。内容量が490mlであるため、一本で約2.5gである。
ちなみに牛乳のプロテインは(種類にもよるが)同じ量でこのプロテインウォーターの7倍以上入っている。
牛乳よりも少ないプロテインなのにプロテインの名を冠しているとは笑止千万である。
ただ、カロリーオフということで、カロリーを抑えてプロテインを採るということを目的としているのかもしれない。
ということでエネルギーを見てみると、エネルギーは100mlあたり9kcal。
つまり、カロリーを抑えてプロテインを摂取しよう=細マッチョ(誤)というコンセプトなのかもしれない。
ということで私が愛飲しているMuscle Milk Lightのボトル版と比べてみる。
Muscle Milk Lightはスーパーに行けば2.99ドル。414mlあたり、160kcal、プロテイン20gである。
以下は100mlあたりのカロリー、プロテインの比較。
カロリー | プロテイン | |
プロテインウォーター | 9kcal | 0.5g |
Muscle Milk Light | 39kcal | 5g |
こうしてみると、Muscle Milk Lightはプロテインウォーターの10倍のプロテインが入ってるわけだが、カロリーオフという言葉通りプロテインウォーターの方がカロリーが少ないように見える・・・が、しかし。プロテイン1グラムあたりで比較してみると・・・。
プロテイン1グラムあたりのカロリーと価格(1ドル=82円で計算。参考までに昨日終わり値は81.55円)。
カロリー | 価格 | |
プロテインウォーター | 18kcal | 57円 |
Muscle Milk Light | 8kcal | 12円 |
つまり、プロテイン単価で見れば、プロテインウォーターはMuscle Milk Lightの5倍近く割高であり、さらに摂取カロリーも2倍以上になる。
同じ量のプロテインを採ろうと思ったら、2倍以上のカロリーも摂取して、5倍以上のお金も払わねばならない。それがプロテインウォーターである。
どちらにしろ、先に述べたように、カロリーの違いは脂肪に影響して「細マッチョ」と「デブ」の違いを作るかもしれないが、筋肥大するわけではないので「細マッチョ」と「ゴリマッチョ」の違いを生み出さない。つまり、飲料(プロテイン量およびカロリー量)という変数を使って細マッチョとゴリマッチョの対比をしている時点で誤った内容であると言わざるを得ない。
自分がまだ日本にいた頃、VAAMのCMで、脂肪を燃焼させるとかいって高橋尚子と高木ブーがランニングマシーンで走っているCMがあったが、あのCMは少なくとも有酸素運動と脂肪燃焼の関係がVisualizeされており納得のいくものであった。まあ本来ならVAAMなんて飲まなくても有酸素運動しまくっていれば脂肪なんて燃焼されていくのだが、飲料のCMだけに飲料と結びつける必要があるというのもまあ理解できる。少なくともプロテインウォーターが細マッチョとゴリマッチョを謳うのであれば、有酸素運動とウエイトトレーニングなどを対比させてCM中に入れるか、商品に注意書きすべきである。
そもそも、ゴリマッチョにならずに細マッチョになろうというコンセプトの元に、(カロリーだけでなく)プロテイン含有量を少なくしているのであれば、筋肥大の理論から言ってもそれはとんだ誤解である。一方で、開発している方はそんなこと百も承知な確信犯なはずである。えもすれば、ていのいいイメージ戦略とキャッチコピーを使って原材料費を安く抑える目的なのかもしれない。もし消費者を騙して利益を上げようとしているのであれば消費者をバカにするにもほどがあると思う。
とても興味深いレポートですね。
返信削除この製品を飲んだことはあっても、プロテイン含有量を確認したことは無かったので、参考になりました。(まあメーカーがメーカーだし、スポーツ飲料として真面目に考える対象でも無かったわけですが。) 製品名にプロテインの名を冠しCMでさんざん訴求しておきながら、この実態は一体何なのでしょうね? 国内大手飲料メーカーが堂々と販売する詐欺商品ですか? さすが、サントリーさん!
このCM、2009年3月からオンエアしていたんですか? 日常的にまったくと言ってよいほどTVを見ない私は、実はCMの存在すら知らず、「ゴリマッチョ」という言葉を初めて聞きました。(時代に全然付いていけてません。w ) 「細マッチョ」は別のソースから聞いていて初耳ではなかったのですが、ひょっとすると、いずれも、このCMに関わったコピーライターが考えた造語でしょうか。CMの内容に違和感を感じる前に、私はまずこの呼び名のほうに違和感を感じてしまいました。
ちなみに、公式サイトで何人かの登場人物に「おいしいですね」と言わせているプロテインウォーターの味。人それぞれなので好みの方もいらっしゃるでしょうが、乳酸飲料を模して配合した人工甘味料をただ水で薄めただけのような味で、私は好きではありません。プロテイン含有量を期待せず、ただの水代わりとして考えても、わざわざ100円超も出して買う気がしません。よって、過去に2回ほど購入しただけです。
このメーカー、健康ブームにますます乗じる作戦らしく、血圧を下げると謳う「胡麻麦茶」の交通広告や「グルコサミン+コンドロイチン」のバナー広告が煩いですね。こうして書いているページには、富士フィルムのコラーゲン飲料のバナー広告が踊っているわけですが。w
私もNYに住んでいる関係で日本の事情とはご無沙汰で、YouTubeでCM(商品)の存在を知ってびっくりしました。まあ世の中のゴリマッチョを否定するような内容ですよね。CMの最後で「これはもうかなりおいしい」と言っている時点で、「あちゃー、自分で言っちゃったよ」と思ってしまい、逆に味を疑ってしまいます。
返信削除健康ブームさまざまな感じですが、アメリカも肥満大国と呼ばれるだけあってどこの国でも健康業界は儲かってそうですね。中には本当に健康に役立つ商品もいっぱいありますが、一方で、健康ブームだから楽に稼げると思ってるような輩が参入してくると困ったものです。アメリカではGNCというチェーン店がサプリメント専門店として有名ですが、自社で成分調査、臨床実験をして商品開発をしたり、雑誌も発行したりしてるので、単なる健康ブームの便乗ではなく、健康自体の裾野を広げようと姿勢が見られて好感が持てます。