パワートレーニング三種の神器 その3 ~Tacx Trainer Software~

すでに以前機能を紹介したTacx Trainer Softwareであるが、その中の機能の1つでパワートレーニングに威力を発揮するものがある。

ちなみにTacx Trainer Softwareはあくまでソフトウェアなので、TacxのPC連動系トレーナーであればどれでも(Fortiusでも、i-Magicでも、Bushidoでも、Vortexでも)良いし、同じ機能があればEliteのものでも、CompuTrainer等の他のトレーナーでも良い


■パワートレーニングのメニュー

さて、その機能であるが、まずはパワートレーニングのトレーニングメニューについて紹介しておきたい。

通常、パワートレーニングにおいては、FTP(Functional Threshold Power)という、心拍トレーニングでいうLT値のような基準を使ってレベル分けをしてトレーニングを行う。
たとえば、Training and Racing with a Power Meterに掲載されているほぼ全てのトレーニングメニューには、目安となるFTPのパーセンテージが記載されている



つまり、Active Recoveryにしろ、Tempoにしろ、インターバルトレーニングにしろ、一定のパワー値を保つようにペダルを回すことになる。

さらに、ダウンヒルやヒルクライムのインターバルなど、ケイデンスとパワーを一定に保って繰り返すトレーニングもある。


■トレーニングメニュー実践における問題点

この点、様々なトレーニングメニューにおいて、それらを満たすコースが実際にあるかという問題がある。

たとえば、「1分間ダウンヒルでケイデンス105rpm以上、パワー250W程度を維持し、その後2分間平坦でレスト。それを5回繰り返す」といったインターバルトレーニングの場合、1分間の坂、2分間の平坦がちょうど5回連続で続くような勾配を持って、なおかつ赤信号等による一時停止もないようなコースが自宅の近くに都合良く見つかるだろうか

他にも、「3%の勾配を5分間、それを3セット」など、様々なトレーニングメニューがあり、それらのトレーニングメニューを満たすようなコースがそれぞれ自宅付近にあるかというと難しいのが実情である

実際にパワーメーターを見てみるとわかるが、ちょっとした勾配などによってパワーは刻一刻と変化するし、パワーはボラティリティ(変動幅)が心拍数などに比べて大きいので、「一定のパワーを保つ」ということが難しい

そもそも、路面や勾配が一定でなく、風速も違い、通行者や赤信号等によって一時停止も発生するかもしれないアウトドアのライドでは、純粋に一定パワーを出し続けるトレーニングというのは実現性に乏しいと言わざるを得ない。

つまり、Training and Racing with a Power Meterではせっかく65種類以上ものトレーニングメニューが紹介されているものの、それらのメニューを実践できるようなコースは、自宅の近くには数種類分しかなかったり、人によっては1つもなかったりするかもしれない。

いわば、これまで紹介してきたパワーメーター本体、パワーメーターを使ったトレーニング方法を手に入れても、それを実践できる環境がなければ意味がなく、宝の持ち腐れになってしまうのである。


■Tacx Trainer Softwareのパワー出力指定トレーニング機能

上記の問題を解決してくれる強力な機能が、Tacx Trainer Softwareにおけるパワー出力指定トレーニングである。

たとえばTacx Trainer SoftwareのCatalystで、150Wを10分間、200Wを10分間というトレーニングプログラムを組んで走り出すとする。その場合、最初の10分はパワー出力が150W付近(±10W)、次の10分は200W付近になるように負荷を自動調節してくれるのである。

つまり、150Wの指定出力のところ130Wしか出ていなければ負荷が強くなり、あたかもちょっとした登りに差し掛かって勾配が上がるようにすることで無意識のうちに150Wが出ているようにしてくれるのである。逆の場合は勾配が下がる(場合によっては下り坂状態になる)ことで、出力が弱まって設定値付近に収まるようになっている。それこそ、DVDを見たり、ホームページを見たり、他のことをしながらペダルを回していても、あとで走行ログを見れば指定したパワーで走れているのである。

この機能は激しく強力で、自分で自由にインターバルを組み合わせてメニューを作ることもできるので、パワー値を250Wに設定しておいてケイデンスを105rpmで回せば、まさしく上述した「下り坂で高ケイデンスのインターバルトレーニング」をすることができ、パワートレーニングメニュー通りのトレーニングを実現させてくれるのである。ぶっちゃけ、この機能だけでTacxのFortiusを買った価値があったと思う。

↓の画面上ではパワーのTarget(目標値)が180Wで指定されている。グラフ上のパワー指定値(背景の水色になっている部分)に合わせて、一定のパワー出力(緑色の線)で走れていることがわかる。



↓心拍を一定(Targetを130bpm)に指定して走った場合。心拍も多少上下に揺れる一方で、さらにパワーは乱高下が激しいことがわかる。室内でもこんななのだから、いわんやアウトドアではである。


↓もう一つ、パワーを指定した場合の例。こちらも綺麗に一定のパワーを保って走れていることがわかる。



■パワー出力指定機能による恐怖

ということで、まさしくパワートレーニングをするための機能と言っても過言ではないパワー出力指定であるが、それによって思わぬ辛さを味わったこともある。

というのも、ケイデンス、ギアに関わらずパワーが一定になるように負荷がかかるので、途中でへたれることが許されないのである。

例えばFTPの150%でインターバルトレーニングをしている最中、ケイデンス100rpmで回してるのが力尽きてしまい、90rpmまで落ちてしまったとしよう。この点、普通のインターバルであれば、その分出力が落ちて速度が落ちるだけであるが、パワー指定の場合は、パワーが一定になるように自動調整されるので、100rpmでも90rpmでも同じ出力になるように負荷が働く。結果、ケイデンスが落ちた分、負荷が重くなり、「疲れて回転数が落ちる」→「負荷が強くなってペダルが重くなる」→「さらに回転数が落ちる」→「さらに負荷が強くなる」という悪循環に陥り、最終的にはペダルが回せないほど負荷が強くなってしまう

以下は実際に自分が力尽きたときのグラフである。三本目の途中で力尽きてぐちゃぐちゃになったのがよくわかると思う。パワー(緑)、ケイデンス(紫)ともにガタガタになってしまっている。

最終的にはダンシングしてもペダルが思うように回せないほど重い負荷になり、40rpmでなんとか回すようなMuscle Tension Intervalのような状態になってしまった。




とはいえ、こういったへたれるのが許されないのも含めて、パワートレーニングを実践する際に最適な機能である。

パワーを一定に保ってトレーニングメニューをこなしていきたい人にはMust Haveであると言ってよいと思う。


2 件のコメント :

  1. はじめまして。ブログを見させて頂きTACX BUSHIDO(日本なので電源問題と負荷充分らしいと記述が)
    を買いました。特に参考にさせて頂いたのは、機種比較とソフトウェア機能紹介。
    高い買い物ですが「時は金なり」無駄な買い物じゃありません。1年間試してみて結果で効果を表せれば
    と思います。これからもちょこちょこ見せて頂きますね。

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  2. 初心者ロードレーサー2011年2月22日 5:03

    はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
    Tacxのエントリがご参考になったようで幸いです。
    Tacxはアメリカでも欧州、米国電圧でバージョンが違いますが、ブレーキキャリブレーションのおかげで電圧やタイヤ圧関連の差分を吸収してくれるのがよいですね。
    私はTacxのおかげでトレーニングの質に随分違いがでました。
    以前はインドアは外で走れないときの補完的なトレーニングでしたが、最近では外で走るよりも中身の濃いトレーニングができるので別の意味で葛藤になってます。
    今後ともパワートレーニング等含めて生の声を発信していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

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