パワートレーニング略語説明:TSBとは

TSBとはTraining Stress Balanceの略である。

トレーニング負荷バランスを表しており、以下のCTLとATLという指標を用い、CTL - ATLの差によって求められる。TSBによって、オーバートレーニングを把握できるとともに、レース等の日程に合わせてパフォーマンスを最大化するための休息期間の目安を把握することができる。


■CTL

Chronic Training Loadの略で、日本語の意味としては長期練習蓄積量となり、過去7日間(1週間)のトレーニング疲労蓄積度を表す。具体的には、過去42日間(6週間)のTSSの指数加重移動平均である。指数加重移動平均とは、詳細は以下で触れるが、簡単に言うと、「直近のTSSが重視されるように重みを付けた過去のTSSの平均」である。


■ATL

Acute Training Loadの略で、日本語の意味としては短期練習蓄積量で、過去7日間(1週間)のトレーニング量を表す。具体的には、7日分のTSSの指数加重移動平均である。


■指数加重移動平均とは

金融の世界にいる人にとっては釈迦に説法になってしまうので恐縮であるが、指数加重平均(EWMA)は移動平均(MA = Moving Average)の一種である。元々移動平均はトレーディングのテクニカル分析などで日常的に使われている指標であり、移動平均の分類・派生としてSMA、CMA、WMA、EMA(EWMA)、RMA、TMA、SWMAなどがある。

ちなみに為替取引で有名なMeta Traderというテクニカル分析ソフトウェアでは、自分で売買シグナルや自動売買プログラムを組むことができ、EWMA含め主要なテクニカル分析指標の関数が用意されている。Andy Coggan先生も株取引なりでテクニカル分析をかじっているのではと思われる。

この点、EWMAは直近の数値ほど重みを付けた平均値ということで、トレーニングの蓄積の定量化という観点においては理に適っていると思われる。


■注意点

単にTSBを紹介するだけでは、本家英語説明の日本語版焼き直しにしかならないし、同じような解説がある日本語のサイトもあるので、ここではTSBの考えを鵜呑みにするのではなく、TSBの概念上抜け落ちている部分を指摘しておく。

TSBはTSSをベースにしている以上、TSSのデメリットをこの考え方も受け継いでいる。例えば代謝系、筋線維による回復の仕方の違いを区別できていない。また、栄養や休息の質・量もトレーニング疲労蓄積に影響を与えるが、それらも加味されていない。

例えば、栄養不十分で寝不足な人と、そうでない人がいた場合、もちろん疲労からの回復、パフォーマンス最大化のタイミングは違ってくるのであるが、両者のトレーニングスコアが同じであれば、それらのタイミングの違いに関わらず同じTSBが表示されてしまう。TSBではトレーニングのみスコア化されており、他の重要な栄養、休養といった要素が無視されているのである。


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