ジェフと一緒に走って、いろいろと話しながら流す。
最後にスプリントをするというので一緒にスプリントしたが、やはり脚が重かった。今日はタイヤの気圧を7Barまで入れていたし、火曜朝のスプリントトレーニングではメンバー内でも速く走れていたので、やはり火曜の晩にCompexをやりすぎたのが響いているらしい。体調回復具合の確認目的も踏まえて今週末のレースに申込みしたので、コンディションの回復に努めたいと思う。
ちなみにグランフォンドニューヨークの話題が出たが、やはり大きい大会だけあって知名度も高く、グランフォンドニューヨークで何位だったというのがよい自己紹介になる。ちなみにジェフは年齢別で16位だったらしい。しかも実は自分がプロスペクトパークのレースで5位を獲ったときに、自分の一つ前、タイヤの差で4位に入賞したのがジェフだったこともわかった。これまでの経験がどこでどうつながるかわからないなあと思った。
ということで昨日の続きから記載していきたいと思う。
■衝突
真っ正面から突っ込んだ次の瞬間、自分の自転車と体が宙に吹っ飛ぶ。
ほぼ90度回転し、顔面から地面に突っ込む。今振り返れば、あのとき手を出して防いでいればよかったとも思うが、体が完全に投げ出されなかったのはむしろドロップハンドルをちゃんと握って重心を低くしていたからで、手を離していればもっと吹っ飛んでいたかもしれない。
ヘルメットが地面に擦れて、ヘルメットの前頭部が割れる。
本当にヘルメットに助けられた。ヘルメットがなければ頭部を裂傷して、額が砕けていた。それこそ意識を失って、次気付いたとしても病院のベッドの上だったと思う。自分の身代わりになってくれたヘルメットを思うと、十万円以上するカーボンディープリムホイールよりも価値があるように思える。
一方で、ヘルメットに覆われていない顔部分が地面に叩きつけられ、右目、右こめかみ、アゴに激痛が走る。
強い衝撃を全身に受け、周囲から叫び声が聞こえる。
痺れのような痛みを感じながら、地面に突っ伏した体を横に回転させ座り込む状態になる。
現場付近でウォーキングをしていた年配の女性2人組み(その後お世話になるバーブラとキャサリン)が事故を目撃して駆け寄ってくる。1人が電話で救急車を呼んでいる。
地面を見るとポタポタと液体が落ちていく。どうやら自分の顔から流れ出ている血のようである。
しばらくしてパーク内をパトロールしている警察がやってきて止まる。中から警官が出てきて、事故の状況を女性2人が説明する。
自分も質問され、名前、住所、誕生日、電話番号、今どこにいるかわかるか、事故の瞬間を覚えているかなどを聞かれる。
次に連絡できる家族はいるかなどを聞かれるので携帯を取り出す。
衝撃のせいか、携帯の電源がOFFになっていた。一瞬壊れてしまったかと思ったが、電源を入れると正常に起動した。
家にいる妻に電話する。事故を起こしたことを伝え、自分の身分証明書等を持ってきてもらうことに。
ちなみに自宅からプロスペクトパークまでは電車やバスのルートだと遠回りになり、車も持っていないので、タクシーを呼んでやってくるとのこと。
電話を終えて携帯を手にしながら救急車を待っていて、ふと、なにかあったときのために事故の原因になった黒人を撮っておいた方がよいかと思い、写真を撮った。それが昨日掲載した写真。
ついでに警察車両も。左の女性(バーブラ)が手に持っているのは酷く傷が付き、フレームが曲がった自分の眼鏡。
他のローディーがやってきては、傷を洗い流すように水をくれたりといろいろ親切にしてもらう。
初老の女性ランナーが通りかかり、「私は救急資格を持ってるのよ」と言って自分に話しかけてくる。
「名前は?今どこにいるかわかる?この指は何本?」と確認して、「大丈夫、問題ないわ」と一言残して走り去っていく…。ほぼ全て既に警官に聞かれたことだったのだが…。
そんなこんなで大分落ち着いてきて、周囲を確認する。
事故原因の黒人(本当は「加害者」と書きたいところだが)も逃げずにその場に留まっている。
自分の体に目を向けると、顔の傷が特に酷く、他は打撲、擦り傷はあるものの、脚、腰、首は無事なよう。
立とうとすると、周囲から「立たないで休んでろ!」と止められる。
救急車を呼ばれるほどでもなく、自走して帰れるかもとも思ったが、顔からの出血もしているし、右目もかなりの痛みがあり、「なんともない」と言うには程遠い。
事故時はアドレナリン等で痛みに対する感覚が鈍くなっていて、本当はもっと酷い症状ということもあるかもしれず、「休んで専門家(救急車、病院)で見てもらった方がいい」という周囲の言葉ももっともなので、そのまま座って体をマッサージする。
ちなみに自転車は道路脇に移されており、女性からは、「もしあれだったら、自宅が近いから預かっていてもいい」と言ってくれる。この女性は信頼できそうだし、人の好意はありがたい一方で、街路樹を斧で切り倒して地球ロックした自転車を盗むような地区なので、用心も必要である。できれば自転車も一緒に運びたいが、さすがに救急車ではそれも無理そうであるし、すぐに妻が到着してくれればいいのだが、どうしようかなあと考えていると救急車が到着した。
救急隊員が出てきて、担架を持ってくる。
体を担架に移され、首、体を固定される。
しまった、これでは動けないし、周囲も確認できないと思っていると、そのまま運ばれ救急車の中に入れられてしまう。
視線だけ横に移すと例の黒人も乗っているようで、これなら何かあっても逃げられることはないと安心したが、彼は警察に「自分が前を走っていてこけたんだけど、後ろの彼が近すぎたんだ」と言い訳をしている。
「いやいや、下りでスピードが出てたから近すぎたと感じただけで、そっちが何も無いところでこけたのが原因だよ。というか、あんたがこけなきゃ自分はこけなかった(涙)」と言いかけて、そういえばセントラルパークの制限速度は25mph(時速40km)だったから、もし同じ制限速度なら時速50km近く出てた自分はスピード違反だなあと思い至り、とりあえずどっちが悪いかの議論はしないことにした。で、事実(彼が前を走っていてこけて、自分がそこに乗り上げてこけた)だけを話す。
そうこうしていると「俺は病院には行きたくねえよー」と言い出し、自己責任で何かあっても救急車を訴えません的な紙にサインをして、自分にHave a good day.と挨拶して帰っていく。「何がHave a good dayだ、この野郎!」とツッコミたかったが、悲しきかなそんな気力はなかった。
おいおい、待ってくれよと思いつつ、救急車で運ばれて後々とんでもない額の請求書が来ても嫌なので、「自分も病院にいかなくても大丈夫かもー…」と言ってみると、「お前は何を言ってるんだ」といった反応をされた。
そりゃあわざわざ救急車で出動したのに患者がいなくなって手ぶらで帰るというのは具合が悪いのだろう。
そして「どこの病院に行きたい?」と聞かれる。タクシーじゃないんだから行き先を聞くなよと思いつつ、アメリカでは保険も会社によって分かれていて適用範囲とかいろいろ決まってるから患者の希望を聞くのだろうと思った(といっても日本で救急車に乗ったことがないので、日本ではどうなるのか知らないが)。
行きつけの病院があるわけでもないので、「とりあえず近い病院に行ってくれ」と頼む。自転車を取りに戻るにしろなんにしろ、現場から近い方が動きやすいと思ってのことだった。
すると妻から電話が。走り出す前の救急車の中で電話に出ると、タクシーで向かっており、あと15分くらいかかるから待っててくれという。どうやら、もう担架で救急車の中に運ばれていて身動きができないというこちらの切羽詰まった状況が伝わってないようだが、とりあえず15分後に到着すること、自転車をどうすればいいかといったことを警官に伝える。
しばらくして警官が「あの女性が君の自転車と一緒に君の奥さんが来るまで待っていてくれるそうだから。これが彼女の名前と電話番号。」といって、バーブラという女性の名前と電話番号が書かれた紙をくれる。今から思えば警官は上手く現場を仕切ってくれたと思う。ニューヨーク市警を見直した一件だった。
そして救急車は走り出した…。
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