ブエルタ・ア・エスパーニャの衰勢と米国プロサイクリングチャレンジ

ロードレースに興味がない人でも「ツール・ド・フランス」くらいは知ってるかもしれない。

そして、少し詳しい人となると、グランツールまで知っているだろう。

このブログを見ているような方であればご存知の通り、グランツールとは、ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャの3つのステージレースのことを指す。

ブエルタ・ア・エスパーニャの今年の開催時期は、8月20日から9月11日まで。

そう、まさしく今、ブエルタ・ア・エスパーニャ開催中なのである。

日本の自転車ニュース系ウェブサイトを見ても、ブエルタ・ア・エスパーニャの記事でいっぱいである。

  

  

だが、記事を見ていて気付く人もいるだろう。「あれ?ツール・ド・フランスで優勝したエヴァンスもシュレク兄弟もいない…」と。

彼らは別にシーズンオフに入ってツール・ド・フランスの疲れを癒しているわけではない

彼らは今もレースを走っている。ただし、ブエルタ・ア・エスパーニャではない。

  


■米国プロサイクリングチャレンジ

日本ではブエルタ・ア・エスパーニャの話題が多いようだが、アメリカでは状況が異なる。

どの雑誌もブエルタ・ア・エスパーニャなどは二の次。話題はもっぱら米国プロサイクリングチャレンジ(USA Pro Cycling Challengeである。

この点、「アメリカだからアメリカ開催のレースの方が話題になっている」わけではない

前段で触れたように、今年のツール・ド・フランスの覇者、カデル・エヴァンス。エヴァンスに後塵を拝し2位になったアンディ・シュレク。その兄でツール・ド・フランス3位のフランク・シュレク。イヴァン・バッソ、ライプハイマー、ヴァンデヴェルデ。錚々(そうそう)たる顔ぶれが参戦している

ヨーロッパのクラシックレースしかり、歴史の長い自転車競技においては伝統や格式もあるが、やはりレースの主役は実際に走る選手たちである。

ツール・ド・フランスの1位、2位、3位がブエルタ・ア・エスパーニャではなく、米国プロサイクリングチャレンジに出ている時点でレース自体の注目度も上がってくる。

ちなみに7日間のステージレースで、8月22日から28日まで。しかも今年が第一回目の開催である。

ご参考までに、以下、プロローグと第一ステージから、今日の第四ステージまでのハイライトを掲載しておく。












■ブエルタ・ア・エスパーニャの趨勢

ブエルタ・ア・エスパーニャは、そもそもグランツールの中でも開催時期等の関係で不利な面があった。詳細は以下、Wikipediaからの引用を参考にしていただきたい。

1994年までは4~5月に開催されておりジロ・デ・イタリアとの間隔がほとんどなく、年によっては日程が重複することもあった。そのため何人かの有力選手がツール・ド・フランスまで力を温存しようと考えて調整目的で参加するほかは、大半がジロ・デ・イタリアに出場。ブエルタ・ア・エスパーニャに出場するのはもっぱら地元スペインの選手(もしくはスペイン所在のチームの選手)かブエルタ・ア・エスパーニャよりもさらに厳しい山岳コースが登場するジロ・デ・イタリアを嫌うスプリンター系選手だったため、比較的ローカル色が強い大会だった。

しかしUCIカレンダーの整備により、1995年より現在の開催時期である9月に移行。日程上では同一年度においてグランツール全大会に出場することが可能となった。これによりレースの盛り上がりが期待されたがシーズン終盤の開催ということもあり多くのレースをこなして疲労のたまった選手や秋のクラシックレース、世界選手権などに照準を合わせた選手からは敬遠、もしくは世界選への調整の舞台として利用されることが多く依然として出場するのはスペイン選手が中心という状態が続き、グランツールの中でもツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアに比べてワンランク下の存在に見られ盛り上がりに欠けていたため以前は財政難などで開催が危ぶまれることもあった[3]。

しかし徐々にオールラウンダータイプの選手をはじめ有力選手の出場や活躍が目立つようになり2005年に始まったUCIプロツアーでは最上級カテゴリーAに格付けされたツール・ド・フランスに次ぐカテゴリーBに位置づけられ、自転車レースとしてはジロ・デ・イタリアと同格の扱いを受けていた。そのため近年はグランツールにふさわしい盛り上がりを見せるようになった。
��Wikipedia「ブエルタ・ア・エスパーニャ」の「開催時期の変更」項目より)


せっかく開催時期をずらして他のグランツールに被らないようにしたのに、今年から始まった米国プロサイクリングチャレンジと日程が被り、エヴァンス、シュレク兄弟をはじめ、有名選手を引っ張られてしまっている。

一方で、ブエルタ・ア・エスパーニャを舞台にしたアニメ、「茄子 アンダルシアの夏」があるなど、日本のロードレースファンにはそれなりに馴染みのあるレースである。




こういった問題は、スポンサーや金、各国のスポーツ団体等、様々なステークホルダーが関わっているので難しいのかもしれないが、願わくばどのレースも一流選手同士が満を持して戦える環境を整えて欲しいものである。

自転車といえばヨーロッパだった昔と違い、今は国際化も進み、UCIワールドツアーの中にもツール・ド・北京や1月にオーストラリアで開催されるツアー・ダウンアンダーもある。同じくオーストラリア人のエヴァンスがツール・ド・フランスを優勝する時代である。それこそヨーロッパの北緯40度~55度圏の気候環境に関わらず、一年中レースがあるようなレースカレンダーになってもよいと思う(選手には大変だが…)。


2 件のコメント :

  1. ブエルタ地味ですよね。
    また運営もスペイン色を丸出しのユルさがあります。
    でも山岳が多くて厳しいコースもあり、ツールと違い各チームのセカンドエースが出てきて実力を推し量れるなど別の楽しみ方があります。
    自分はツールよりも楽しみに見ています。
    画質だけは改善して欲しいです。目が痛くなります。。
    でもアメリカのレースにそのメンバーが出ているのは少しショックでした。

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  2. 初心者ロードレーサー2011年8月29日 1:27

    画質は地元や海外の他局のケーブルテレビ等では違ってきたりするんですかね。同じソースを使ってるとなると元から改善してもらわないとなりませんが。自分もクラシックレースの過去のDVDとかを買ったりするんですが画質が悪いものも多くてつらいところです。
    今回のエヴァンス、シュレク兄弟のUSA Pro Cycling Challenge出場は、本文中でも少し触れましたがスポンサーやお金等いろいろ動いてるんでしょうね…。第一回目の大会ということもあり、運営側もネームバリューを高めるためにあの手この手で有名選手を引っ張ってきたんだと思います。

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