パイオニアのポタリング用サイクルナビゲーション「SGX-CN700」ポタナビ

パイオニアからポタリング用のサイクルナビゲーション「SGX-CN700」(通称ポタナビ)が発売される。「サイクルナビゲーション」と謳っているが、ANT+対応のスピード・ケイデンスセンサーがついているので、いわゆる「ナビゲーション機能付きGPSサイクロコンピュータ」で、既存製品の中ではGarmin Edge 800, 705に近い

  

当ブログはロードバイクの話題が多いので、ポタリング用のサイコンを取り上げてもと思われるかもしれないが、なにしろパイオニアはサイクルモードインターナショナル2010でペダリングモニタ機能が付いたパワーメーター(サイクロコンピュータ)を出展したメーカーである。ペダル測定型パワーメーターということで、Garmin Vectorに対抗できそうな同サイコンはレース志向派にとっても他人事ではないだけに、同社の製品仕様、ビジネスモデル、販売戦略の参考になる以上ポタナビにも注目せざるを得ない

製品紹介はいろんなサイトでされているのでそちらを参考にしていただきたい。公式ページにも詳細な画面付き説明があるので、ここでは杓子定規な製品紹介とは別に所感を述べたいと思う。




■価格について

まずポタリング用という用途に対して、4万円前後という価格設定は高い感じを受ける。

遠い場所まで長距離を走るツーリングでもサイクリングでもなく、近場をゆっくり自転車散歩するポタリングとなると、自転車自体いわゆる街乗り用コンフォート系クロスバイクで、ユーザ層もスポーツバイクを始めたばかりの人が多いと思われる。

概して、ママチャリからスポーツバイクに乗り換える人であれば、自転車自体の予算ですら4万円~5万円であり、高くてGiantのEscapeといったところであろう。GiantのCross 3(メーカー価格45,150円)といった4万円台のコンフォート系クロスバイクもあることを考えると、そういったユーザ層がサイコンに4万円も払うだろうかという疑問がある。



さらに、4万円前後というのは本体購入価格でしかなく、実際には長く使えば使うほど余計に金がかかる仕組みになっている。


■通信機能と充電機能限定のUSB

その仕組みこそ、機能面として腑に落ちなかった「3G通信回線でなければデータのアップロードができない」点である。

通信はNTTドコモの3G通信回線を利用しており、製品購入から2年間は無料で通信機能を利用できる。無料期間終了時には、ユーザーが料金を負担する形で延長契約すれば、引き続き通信機能が利用できる。延長契約の料金は未定。

この通信機能により、走行データが定期的に自動でアップロードされ、ウェブ上のマイページに保存される。本体にはUSBポートが設けられているが、これはPCと有線で接続するためのものではなく、充電用となっている。


なんと走行ログをウェブで保存、共有するためには、携帯と同じような3G通信契約が必要になるとのこと。SIMカードを入れて使うようなので、まさしくもう一台“サイコン機能限定の”携帯を買うようなものである。

2年で使い捨てるつもりの人には関係ないが、長く使おうと思っているユーザにとって、「延長契約の料金は未定」であることは総コストが見えずわかりにくい(少なくとも発売までには明らかになるのであろうが…)。ちなみに買い切り型のGarmin Edgeシリーズでは、追加料金不要でUSBでパソコンとのデータ転送&充電ができ、Garmin Connectというウェブにアップロード、共有できる。もちろんその場合でもパソコンの通信費はかかるが、パソコンの通信費はインターネットやメールといった他の用途にも使えるので、サイコンのデータ送受信のためだけに新たな3G通信契約を結ぶのとは訳が違う。

商品説明を見るに、「走っているルート軌跡やセンサーからの情報などを、リアルタイムにWeb上のマイページに自動送信するカンタンロガー機能」以外は、通信契約がなくてもUSB転送とパソコンのインターネット環境があれば可能であり、あえて通信契約を結ぶ必要もない。

確かにHTC-Columbiaは、ツール・ド・フランス開催中にリアルタイムで各選手の心拍等の情報を配信していたし、世界一周や日本一周をしている人の現在地がリアルタイムにわかれば面白いかもしれない。が、商品通称のポタナビにあるように、この商品はあくまで近所を自転車散歩するポタリング用である。ポタリングでリアルタイムで走行ルートを見る必要があるかはこれまた疑問が残る。



はっきり言って、「通信回線契約が必要で、将来にわたって継続費用がかかるサイコン」は、新たな購入者にとって敷居が高い以外の何者でもない。というか、ある程度のコストや手間を惜しまないレース志向のライダーでさえ手を出していないことを、はたしてポタリング志向のユーザがするだろうか

そもそもUSBは充電のみでデータ転送不可というのが意味不明である。パイオニアの技術レベルであれば、USBでデータをパソコンとやりとりすることなど造作もないことであるはずなので、逆に通信料で稼ぐビジネスモデルの都合でわざわざ機能が制限されているのではないかと勘繰ってしまう。

走行ログが取れる以上、走った後でそれをパソコンで見たり共有したりするのは当然で、むしろ追加料金不要でデフォルトで備わっているべき機能だと思う。

  店員 「味噌汁お待たせしました。」

  客 「あれ、箸がないんだけど…。」

  店員 「箸は別料金になります。」

カモ~ン!充電のみだって?!それじゃUSBにする意味がないじゃないか。と、アメリカンな感じで吠えずにはいられない。


とまあ批判的なことを書いてしまったが、もしポタナビで失敗してしまったらペダル式パワーメーターを出す前に自転車事業から撤退してしまうんではないかと心配しているからこその諫言であることをご了承いただきたい。自転車業界が活発化するのは大歓迎で、日本人としては自転車業界にも世界に冠たる日本のメーカーがもっと現れて欲しいという想いもある。ということで、パイオニアにはぜひ自転車事業でも大成功して欲しいものである。

が、せめてペダリング測定型パワーメーターでは通信回線契約は不要にして欲しい…。


2 件のコメント :

  1. 確かに・・意味不明な部分が多いですね。
    良い商品を作っているだけに残念です・・以前にも確かパイオニアの製品だったと思うのですが地図の
    更新が月額2000円というのもやっていたような気がしますがまだやってるのかな?
    この時は車によく乗っていましたが・・さすがに買わないよ・・なんて話してた記憶があります。

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  2. 初心者ロードレーサー2011年10月30日 1:13

    機能のみならず金銭面からもリーズナブルなものにしてもらいたいですよね。
    まあ携帯電話のデータ通信にしろ、使い捨てコンタクトレンズにしろ、継続して稼げるビジネスモデルが企業的には良いのかもしれませんが…。

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