インターバルトレーニングの時間効率性と距離信仰

前回も少し触れたが、怪我で最も心配なのは体を動かさなすぎたことによるパフォーマンスの低下である。

ということで最近はインターバルトレーニングを繰り返す日々が続いている。

ちなみにインターバルトレーニングを中心にトレーニングを行っている理由は二つある。

第一の理由は、「効率が良いトレーニング」であるからである。

効率が良いというのは、あくまで時間効率であって、決して楽なトレーニングではないことにご注意いただきたい。

以前ご紹介した「Time Effective Cycling Training - A Guide to Better Performance with Less Effort」でも、その実態とはいわば様々なインターバルトレーニングの集合体であったわけである。



実際、自転車のトレーニングにおいて、SIT(スプリント・インターバル・トレーニング)の高負荷短時間グループと中負荷長時間グループで比較した結果、高負荷短時間グループの方がVO2 Maxが向上したという研究結果が2008年に発表されている

この点、一部には(特に日本のマラソン界においては)距離信仰のようなものが存在しており、自転車にも「月1000キロ」、「年間1万キロ」といった距離中心の考え方をする人を見かけることができる。もちろん、月1000キロ自転車で走る達成感を味わうために自転車に乗っている人は全く問題はないが、少なくともレースやタイム短縮を目標とする場合は的外れな目標設定といわざるをえない。

いわば「距離さえ稼げばいい」という考え方は、根拠のない根性論と一緒で「運動中は水を飲むな」「うさぎ跳びで脚を鍛えろ」という前時代的な考え方と同じである。

たとえば、ニューヨークでよく見かける自転車タクシーや自転車デリバリー、メッセンジャーの人々はそれこそ朝から晩まで一日中仕事で自転車に乗り続けているわけである。朝練や夜連、週末練だけで日中屋内で仕事をしている人々は、逆立ちしたって彼らに乗車時間では勝てない。もし低負荷長時間だけで速く走れるようになるのであれば、ピスト乗りのメッセンジャーがレースで上位を占め、サラリーマンレーサーは入賞圏から姿を消すことになる。が、実際はそうなってはいない。

ちなみに、インターバルトレーニングが効果を発揮するのは競技アスリートのパフォーマンスに限ったものではない。最近放送されたイギリス国営放送(BBC)の特集「The Truth about Exercise」では、イギリスのノッティンガム大学の協力の下にインターバルトレーニングの研究が行われ、短時間のインターバルトレーニングでインスリン機能が改善されることが紹介された。




長い距離を走ると聞いて想起するのはLSDであろう。

LSD自体は効果のあるトレーニングであるし、プロもオフシーズンを中心に行っている。

が、アマチュアレーサーにとっては非常に難しいトレーニング方法と言わざるをえず、少なくとも自分はLSDを行えるような環境には恵まれてない

さらに、LSDをできる環境にあったとしても、LSDだけでは頭打ちしてしまう。例えて言うならLSDにおける限界効用逓減の法則である。

様々な場面で高強度を否応なしに要求されるロードレースと違い、一定ペースで走ることもできるマラソンですら、LSDだけでは速くなれないことが小出監督の著書において指摘されている



また、筑波大学体育科学の吉岡博士による著書では、インターバルやクロストレーニングを勧めるとともに、距離信仰が日本マラソン界の低迷の原因であるとしており、実際に日本人選手と外国人選手の比較データにおいて、月間走行距離が長い日本人選手が勝てていないことを示している



ちなみに、プロロードレーサーは長い距離を走っているが、それは長い距離を走ることをトレーニングの目的としているわけではなく、レースでパフォーマンスを発揮するためのトレーニングメニューを行った結果走行距離が長くなるだけに過ぎない

ということで、インターバルトレーニングの時間的費用対効果の高さについて掘り下げてみたが、自分がインターバルトレーニングを中心に行う最大の理由は別にある

のだが、長くなってしまったので次回に続く。


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