パワーメーター考察:ペダル型パワーメーター

iBikeから卒業した今、直接計測方式のパワーメーターを導入することに。


■パワーメーターが役立つ戦場

思うに、パワーメーターはクリテリウムやロードレースよりも、むしろヒルクライムやタイムトライアルで威力を発揮すると思う。

レースであれば必要なパワー出力もレースの展開に影響される。プロトンの速度やアタックに反応する際には、パワー出力値など無意味で、アタックやプロトンに追いつくだけのパワーを否応無しに出さなければならない。レースでパワー出力値を取る意味があるとすれば、それはレース後の分析用であり、将来のトレーニングメニューへのフィードバック目的である。

一方、ヒルクライムやタイムトライアルは、決められた距離、時間の中で、一定の出力をどれだけ効率良く出して維持するかという点に重点が置かれる。ペース配分を考え、目標の強度を維持できているか、飛ばしすぎでないかを都度確認して自己フィードバックしながら走る。つまり、レース後にしか使わないような前述の場合と違い、レース中にパワー出力を確認するメリットが大きい

自分もヒルクライムを主戦場としている今、信頼性の高いパワーメーターの必要性が高まったといえる。


■パワー計測地点とペダル式パワーメーター

直接計測方式を考えた場合、最も正確性が高いと思われるのがペダル式のパワーメーターであろう。

パワーが発生する起点がペダルであり、駆動系の川下へ行くほど物理的な誤差が大きくなる。

ペダル→クランク→チェーンリング→チェーン→スプロケット→ハブ→スポーク→リム→タイヤとパワーが伝わっていく中で、例えばPowerTapのハブ部分はかなり川下に位置する部分で測定している。

駆動系の川下になるほど、それまでの過程でのパワー伝導ロスが発生し、伝導効率によって誤差が生じる。例えばシマノのDura-Aceのコンポと、Soraのコンポでは、(重量はもとより、使っている材質や加工も違う以上)伝導効率が全く同じになるわけがないといえる。

もちろんその辺りのオフセット値が内部で設定されていて、PowerTapでは補正がされて起点時点でのパワー出力を出すようになっているのだが、構造的な面で言えば川上の方が高い精度が期待できる(もちろん構造以上にパワー装置自体の品質上の問題があれば精度が逆転することもあると思うが)。

前回、Tacxのパワー値がどうもおかしい(信頼できない)と書いたが、Tacxは上記駆動系の最終段階であるタイヤ部分で計測しているためさもありなんと言える。

ということで、値の精度や、値自体を信頼できるかどうかという点において、駆動系の起点で計測するペダル式パワーメーターへの期待は高い


■Garmin Vecotr

Garminのペダル式パワーメーターについては以前にもエントリしたが、市場環境も変わり、当時触れていたMetriGearはGarminに買収されVectorというペダル測定型パワーメーターで1,499.99ドル(約11万9千円)で発売されることになった



その以前のエントリでは「クラッシュの度に故障、買い換えのリスクが出る」ということで乗り気ではなかったが、そもそもクラッシュリスクを避けるライドスタイルに変えた以上、クラッシュを心配する必要は少なくなったといえる。

が、Garminからは何度も発売の延期が発表され、当初の予定ではすでに市販されているはずなのだが、まだ市場には出てきていない。2010年半ばに約1,000ドルで発売されると言われていた頃が懐かしく、このままではいつになるのかわからない状態である。

  Garmin Vector power meter release delayed again


■パイオニアのパワーメーター

また、日本勢として気になるのは、以前に発表されたパイオニアのペダル式パワーメーターである。

AndroidをOSとし、各ペダル角度でのパワー出力をベクトル図示化できるということで期待大なのだが、一向に進展の様子がない



サイコン市場でトップを走っているGarminですら、Garmin Vectorの発売発表から1年が過ぎてもまだ発売日すら確定できていない状態である。

まだテストデモのみで、発売予定すら発表されていないパイオニアのパワーメーターが消費者の手元に届くのはいつになるのだろうか

お世辞にも若者とはいえない年齢。時間との戦いの中でパフォーマンスを高める必要がある中で、3年や4年も経ってしまっては機会損失の方が大きい


■PolarとLookのKeO POWER

この点、唯一市場に投入されているペダル式パワーメーターがサイコンメーカーのPolarによってLookのペダルに装着された、KeO POWERである。



MSRP(Manufacturer's Suggested Retail Price。日本語でいう希望小売価格は1499.99ポンド(約18万5千円)と高いが、現在、市場で購入可能な唯一のペダル式パワーメーターとして見ればしょうがないかもしれない。

それにケイデンスマグネットがなくてもケイデンスが測れるのは良いし、左右のペダリングバランスもかなり正確な計測が期待できる

しかし、ポラールのデメリットは、その独自規格である。

ご存知の通り、現在サイコンの主流規格はANT+であり、Garmin、TrekやWintecのサイコン、iPhoneやAndroidをサイコン化する拡張用キットまでANT+に対応しているし、SRMやCinqo、PowerTap、そしてiBikeといった他のパワーメーターの大半がANT+でのデータ転送に対応している。

ところがポラールの転送方式はBluetooth Low Energy (BLE)で、ポラール以外の機器との互換性がない。少なくとも現在市場に出回っているサイコンでポラール以外にBLEを使っているメーカーを知らない。まさしく、ポラールを使う場合は全ての機器をポラールで揃えないといけない状態であり、ソニーのベータやメモリースティック、アップルコンピュータの手法がごとく、消費者に自社製品以外の選択肢を許さない方式である。

そしてこれが自分にとっては最大のデメリットなのだが、クランク長の設定が 170mm、172.5mm、 175mm、177.5mmの4種類にしか対応していない



つまり、ビンディングペダルはTime使いであることもさることながら、165mmのクランクを使っている時点で、問答無用でPolarの選択肢は消えるわけである。

ということで、ペダル式パワーメーターの選択肢はなくなり、他の方式のパワーメーターを検討するのであった。


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