マルコ・パンターニの急逝から10年 “イル・ピラータ”を愛してやまないイタリア人たち
ちなみに同じクライマーとしてパンターニのクライミングは参考にすることもあるし、華麗に山を駆け上るその姿には目を見張るものがある。
では何を突っ込みたいかというと、すでにクロの判定が出ているにも関わらず、1998年のツール・ド・フランスで、フェスティナのドーピング問題があった中でパンターニが「唯一の光明」であり「栄光の1998年」と語られていることである。
パンターニ、ウルリッヒの尿サンプルから禁止薬物EPOを検出 1998年ツール1位、2位の検体
もちろん当時優勝を争ったアームストロングやヤン・ウルリッヒも全員クロなので同じ土俵に上がった者同士の勝負としては「フェア」な勝負で戦いを制したのかもしれないし、白熱するバトルで勝った英雄ではあるかもしれないが、英雄だからといって「ドーピング事件の中での唯一の光明」というのには大いに違和感がある。
ちなみにオペラシオン・プエルトの捜査でスペイン人医師エウフェミアーノ・フエンテス(Eufemiano Fuentes)が逮捕されたときに押収された自己血液輸血のバッグは220個で名前まで公表された選手※は50人以上に上る。
彼を自己輸血医師として契約していたタイラー・ハミルトンは自身の告白本の中で、「一部のトッププロだけを顧客にしている高級ブティックのようだと思っていたが、実際はプロトンの半分もの大量顧客を相手にする
ただ、ドーピングをした選手でも、マルコ・パンターニのように未だにファンを魅了しているヒーローもいれば、ランス・アームストロングのように一気に世間の信用を失ってしまった場合もある。
ドーピングの状況やタイミング、世間への受け取られ方次第で「ドーピングをしても英雄視」されたり「ドーピングが見つかったら袋叩き」されるのもまた変な気がする。
まあランス・アームストロングの場合は散々自信のドーピングを否定してきただけでなく、ドーピング批判をしてきた相手を攻撃して訴訟まで起こしたいわば逆ギレ後とあって、自身のドーピングを認めてからは彼の人格を否定するような報道があからさまになされた。
一方で、タイラー・ハミルトンはドーピングの告白本「Secret Race」を出して2012年の William Hill Sports Book of the Year award(秀逸なスポーツ関連書籍に贈られるイギリスの賞)にも輝いた。
とはいってもランス・アームストロングが可哀想だと言ったり、彼を庇うような気はなく、タイラー・ハミルトンの告白本を読むと、いかにランスが組織的にドーピングを主動していったのかがよくわかる。彼の恫喝や脅迫を受けて、レース界を去ったクリーンな選手こそ本当の被害者であるのは以前ご紹介した通り。
香港旅行第4回:油麻地でクリストフ・バッソンスに想いを馳せる
なにはともあれドーピングをしていても他の部分(レーステクニックやペダリング等々)で参考になる部分はあり、ドーピングは否定しても、彼らの全てを否定することはできない。トレーニングメニューも、「より高強度で、より多くの頻度でこなせる」というだけで、トレーニングメニュー※自体が参考にならないわけではない。(※とはいっても、クリス・カーマイケルは実際にランスのトレーニングには関わっておらず、トレーニングメニューを指導していたのはミケーレ・フェラーリ医師だったというのが興味深い。彼は単なるドーピングドクターどころか、トレーニングコーチとしても優秀だったらしい。)
自分自身、当時のレースもたまに見る。
その中ではもちろんランス・アームストロング、マルコ・パンターニ、ヤン・ウルリッヒ、タイラー・ハミルトンといった、後に「クロ判定」された選手達が死闘を繰り広げているのだが、それはそれ、これはこれである。
とはいえ、ドーピングに手を出した選手に対しては彼らの置かれた状況を理解はしても認めることはできない。
なぜならクリストフ・バッソンズやフィリッポ・シメオニといった、大衆迎合せずにドーピングと戦って不利益を被った選手を否定することになってしまうからである。
なにはともあれ、自分のような薄汚れた(笑)大人であれば権威に従うプロトンも金で動くUCIも理解できるが、次世代の子ども達に夢を与え、憧れのスポーツになるためには「正直者が馬鹿を見る」世界になってはいけないということである。
ドーピング検査が行われないようなローカルのレースだとドーピングをしてる人もいるんでしょうね。
返信削除そういう点でどうしてもレースよりロングライドに惹かれます。
ところでパワータップG3注文しました(630USD)。
注文したガーミンも届くことだし、スピード/ケイデンスセンサーを新しく買う手間が省けました。
パワータップがどれだけ正確にスピード/ケイデンスを測れるか分かりませんが・・。
逆にローカルレースではドーピングをやってる人はいないんじゃないかと思ってます。その理由は2つあって、1つは手を出すハードルが高いから、もう1つはそもそも効果が少ないからです。
返信削除前者はプロに比べてプライベートもある人にとっては副作用を考えると割に合わず、(タイラー・ハミルトンの本を読むとわかりますが)自己血液輸血にしても血液の保存管理が大変で医師も含めて素人レベルで導入するには費用的にも環境的にもハードルが高すぎます。
後者はそもそもローカルのレースだと1時間前後で終わるような短い距離のレースがほとんどですが、EPOも自己血液輸血も長距離レースでの持久力向上が主目的。何日もかけて1000km以上の距離を走るようなプロのステージレースや、200km走るようなクラシックレースなら効果も高いですが、短い距離ですぐに終わるアマチュアのレースではその恩恵を十二分に受けることができず、前者と合わせて考えるとさらに割に合わなくなります。
そういう点では逆にロングライドの方がドーピングの効果は高そうですが、そもそも順位やタイムを競わないサイクリングでは前者の点でさらに割に合わなくなるのでやはりやらないでしょうね。
ドーピングに関する知識をあまり持っていないので、単純にステロイドしてる人いそうだなーと漠然と思っていただけでした。(ステロイドってそもそもロードレースでドーピング扱いなのかどうかから知らない)
返信削除確かにローカルレースだけで食っていくのは難しいだろうからレース以外でのプライベートの方がウェイトが大きいだろうし、ドーピングをするハードルは高そうですね。
トレーニングの時間対効用が伸び悩んできてからのドーピングならともかく、伸び悩んでいないのにドーピングをしているならまだこっちのトレーニングによって勝てるっていうことでもありますね。
そもそも私は体重から落とさないといけないですけども(ノ´・ω・)ノ
ドーピングはものにもよりますが、その効果はパフォーマンスを数%押し上げるくらいだそうです。
返信削除その数%がプロの世界では決定的な差になるのですが、そもそも努力の壁にまで到達していないアマチュアであれば別の努力をした方がよっぽどパフォーマンスはアップすると思います。