なぜ自転車はランより心拍数が上がりにくいのか

ランを始めて思ったのは、自転車に比べて簡単に心拍数が上がるということ。

例えばこの日の通勤ランなんて82分を平均心拍数177bpmで走っている。



走り始めの区間も含めたドアツードアなので、体が温まってからの平均心拍数は180bpm以上になる。

自転車で177bpmを80分間続けるとなるとかなり疲れる。

それこそFTPで走り続けるようなレースレベルで閾値限界の全開フルスロットルが必要だろう。

テーパリングして調整を終えた一発勝負のレースならともかく、毎日の自転車通勤ではとてもではないが実現不可能。

が、ランではできてしまう。

カロリー消費的には高心拍数を長時間キープできた方がいいのだろうが、それだけ心肺機能に負荷がかかっているということでもある。

自転車視点で言えば、まだまだ心拍数的には(ランのように)上げられる余地があり、逆に他の部分がボトルネックになっているということである。

同じことを考えている人がいた


最初は単に自分がまだランに慣れていないだけだと思っていた。

ラン用の体が出来上がっていけば自然に必要心拍数は下がっていくのだろうと。

ところがネットで調べてみると同じように思っている人もいて、(バイクもランもする)トライアスリートの世界では普通に認識されていることらしい。

そしてこちらのサイトでは、「どうして同じ心拍数なのにサイクリングの方がランニングよりきつく感じるのか」(=同じ体感強度であればランニングの方が心拍数が高く出る)というタイトルでその謎に迫っている。

The reason this matters for the triathlete is because running and cycling are very different: Running is very distributed, while cycling is very focused. This is largely because running has much higher stability requirements than cycling. A cyclist almost always has 5 points of support: handlebars, seat, and pedals. A cyclist is able to keep the upper body relatively still (merely gesturing to maintain balance) while the lower body does almost all of the work. A runner, on the other hand, has at most 1 point of support: the foot they get to place on the ground each step. For a runner, the upper body has to rotate powerfully in order to achieve and maintain balance throughout every step they run.

A cyclist can focus much more fuel into a few leg muscles, while a runner has to make it available across the body. This means that a cyclist’s leg muscles can contract very powerfully in comparison to a runner’s leg muscles—even though as a whole, both bodies are using the same amount of fuel. Therefore, the runner’s PE will be much lower.

WHY DOES CYCLING FEEL HARDER THAN RUNNING AT THE SAME HEART RATE?

曰く、PE(主観的運動強度、自覚運動強度 Perceived Exertion)を決めるのは最大筋出力に対してどれだけの筋出力が必要かによっている。



随意的に脳から出す筋出力の指令が最大筋出力に近いほど疲れを感じやすくなる。

この点、ペダリングに必要な筋出力は一部の脚の筋肉に集中しているので、最大筋出力に近い筋出力が求められる(=脳的に疲れを感じやすくなる)。

一方で、ランニングは上半身や腕など、筋出力を発揮する箇所が分散しているので、同じ心拍数でも個々の筋肉の筋出力は最大筋出力より低い水準にあり、よって疲れを感じにくい。

脳(筋収縮の神経指令)も心臓(筋肉への血液供給)も一つしかないので、一つの脳と心臓で全ての筋肉の出力を賄わなければいけない。例えば脳と心臓がカバーできる各筋肉の出力合計が100になるとして、各筋肉の出力上限も100とした場合、
  • ペダリングは【大腿70+臀部30=100】
  • ランニングは【大腿20+下腿10+臀部20+背中20+腹部10+胸部10+腕部10=100】
と考えれば、サイクリングの方が特定の筋肉に負荷が集中するというのがわかりやすいかもしれない。

確かにランニングでは上半身も大きく動く。

こちらの書籍では、ドラマ陸王にも本人役でゲスト出演したサイラス・ジュイ選手が、「足の力は使わない。お尻の背中の力で走ります」とコメントしているほどである。





これまで自分は自転車のペダリングでも上半身や体の裏側の筋肉を使う意識を持っていた。

しかし、ランニングでの筋動員量と比べれば、ペダリングでの上半身の筋肉は使っていないに等しかったのかもしれない。

ペダリングでの伸び代?


以上のことを踏まえると、むしろランよりも自転車の改善点が見えてくる気がする。

ペダリングで使う筋肉を分散させることで、ランと同じようにペダリング中のPEを下げることができるのではないだろうか。



それはすなわち、これまでと同じスピードで楽に走れるようになる、またはこれまでと同じPEでももっとパワーを出せるようになるということである。


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