物欲紹介:タニタとオムロンの体組成計比較、初心者ロードレーサーの4分の1は脂肪でできていました



ローディー、というよりヒルクライマーにとって切っても切れない関係なのが体重。

このブログを読んでいる人には釈迦に説法だが、パワーウェイトレシオが勝負を分けるヒルクライムでは、出力と同様に体重管理も重要となってくる。

体重管理といっても単に痩せ細るだけなら簡単で、(脂肪よりも重い)筋肉含めて体全体をカタボリックに傾けて異化作用をひたすら促進させていけばいくらでも痩せられる。

が、自転車競技(ボディビルやボクシングでも同じだが)の場合、筋肉量は下げずに脂肪だけ下げて体重をコントロールしなければいけない。

生化学的には、筋肉の合成も脂肪の合成も同化作用なので、どちらもインスリンの分泌によって体内がアナボリックに傾くことで増加していく。

つまり、筋肉は増やして脂肪は減らすというのは、右を向きながら左を向くようなもので、異化同化作用的には相反した考え方であるということがわかる。

ということで単なる体重よりも脂肪量や筋肉量の体組成が重要になってくる。

よって、サイクリストにとって必要なのは単なる体重計ではなく、体組成計になるわけである。


苦い記憶

そう、あれは今から5年半前、同じく体組成計のエントリをしていた。

体組成計を比較


当時の体脂肪率はなんと脅威の23.4%。ほぼ4分の1が脂肪だったのである。まさしく脂肪遊戯。



2007年頃から使い続けたタニタのBC-620というモデルから8年が経っており、せっかくだから今回の一時帰国に合わせて新しいものを買えないかと検索してみたのだった。


8年の進化

8年間で体組成計がどれだけ変わったのか。

と思って、タニタとオムロンのモデルを調べてみたところ、一番「進化」しているのが、スマホやPC連動機能。

オムロンのカラダスキャンではWi-Fi、Bluetooth、NFCといった通信機能でウェルスリンクへデータ転送、タニタも最新モデルのRD-901、RD-902では、BluetoothでiPhoneやAndroidへデータ転送し、ヘルスプラネットという専用アプリで管理できる。

が、レビューを見てみると非常に評判が悪い。

アプリ自体が使いにくかったり、接続がうまくいかなかったりということが起きているらしい。

オムロンのウェルネスリンクはネットの評判を見る限りは問題なさそうだが、そもそも自分としては専用アプリを必要としていない。


PC連動は必要か


PC連動。なんとも甘い響きである。

特にデジタルで育ち、プログラマーやシステムエンジニアという経歴を持つ自分にとっては電脳の世界で管理できるのはたまらない。

黎明期からTacxのPC連動に手を出し、何度も何度もハードやソフトのバグに悩まされたのも懐かしい思い出である。

が、これだけスマホやパソコンが普及しても紙媒体がなくならないように、なんでもかんでもPC連動すればいいというわけではない。

例えば「専用アプリ」。

たいした機能もないのに無駄にメモリを圧迫するアプリは邪魔でしかなかったりする。

さらにソフトウェアのバグや通信エラーなどで正常に動かない場合を考えると、むしろハードウェアだけで完結していた方がよっぽどいい

この点、自分が「データ管理」に求めるものとして唯一欲しいのは生データの出力機能

データをCSVで吐き出してくれるだけでよく、それさえできれば推移グラフもExcelで作り放題なので他に凝った機能は必要ない。

ソフトを起動していないと連携できなかったりすると、時間がないときでもいちいちパソコンを開いたり、スマホのBluetoothをオンにしたりと余計な作業プロセスが必要になってしまうので逆にデメリットになってしまう。

面倒くさがりのように聞こえるかもしれないが、特に日常生活の中にそのプロセスを組み込むときは、手順がシンプルな方がいい。

大袈裟な言い方だが機器を使うためのハードルが低ければ低いほど習慣化しやすくなる。

以前の家では、パソコン机の隣に万年床ならぬ万年ローラーが設置してあり、さらにローラー自体にビンディングシューズもぶらぶらぶら下がっている状態だったため、それこそ起床してから3分かからずにローラーを回し始める環境ができていた。

ということで、日常的かつ定期的に測っていきたい体組成計も、体組成計単体で完結するのが理想的である。


Simple is Best


凝ったPC連動機能はむしろない方がいいという観点から選定すると、タニタのRD-501に行き当たる。

RD-501は測定結果の管理がPCではなく本体のみとなっているため、逆に余計な連動作業やソフトウェアのバグに悩まされずに済む。一方、オムロンはカラダスキャンシリーズとしてトップモデルは基本的にPC連動型モデルとなっている。



やはり一番こだわりたいのは測定精度で、体重の測定は物理的なものなので誤差はほぼ起こらないとしても、体脂肪率は電気抵抗を元に算出しているため正確な数値が出ているか疑わしいところがある。

この点、タニタの方が体脂肪測定では一歩先を行っている感があり、RD-501(RD-901、RD-902も同様)ではデュアル周波数という機能で測定の正確性を売りにしている(が、測定についてそもそもの限界があるのは後述)。

また、体組成の計測には、あらかじめ性別や年齢、身長を入力しておく必要があるのだが、自分の旧モデルと違い、乗るだけで自動的に電源が入って誰かを判別してくれるという機能はありがたい(ちなみにこの自動判別機能はタニタ、オムロンともに最近のものには搭載されている)。

習慣化のために手順はシンプルな方がいいという観点からは、プロフィールを選択するという手間が省けるだけでもありがたいものである。


筋質点数


オムロンにはないタニタの体組成計(RD-501、RD-901、RD-902)の機能としてもう一つのポイントは「筋質点数」の表示。

「世界初!筋質がわかる」ということで、曰く、「筋線維の大きさ、脂肪や線維質などの結合組織の含有量といった筋肉組織の状態を、電気的に評価する技術を実用化したことで、筋肉の「量」だけでなく「質」を高めて筋力を向上させる」らしい。

が、個人的にはこれはかなり怪しい指標だと思っている。というのも、「筋質点数」というのはあくまでタニタの独自規格であって点数の定義が非常に曖昧である。

それならその元になっている筋繊維の大きさや結合組織の含有量をそのまま表示してくれたらいいのだろうが、そもそもそういった数字を正確に測定できないからこそ、「独自規格の点数」という誰も正確性を検証できないオブラートに包んだ表記をさせているのだろう


体脂肪率の測定精度


そう、そもそも既存の体組成計では体重以外の体組織は正確な数値測定ができないのである。

市販の体組成計に使われているBIA方式(電流抵抗)は、「測定値」というよりむしろ「推測値」と言った方が正確な呼称である。

詳しくはこちらの記事をご覧いただきたいが、死体解剖に次いで正確に測定できると言われる4コンパートメントモデル※と比較した場合、BIA方式による体脂肪率の測定結果は誤差が出まくっている。(※現在のGold Standardとされる測定方法で、体組織を水分、脂肪分、蛋白質分、ミネラル分の4種類に分け、それぞれを個別に計測する方法)

誤差だらけの体脂肪率 Part3 市販の体組成計


また、英語だがこちらの記事も参考になる。両足で乗るタイプの場合、測定に使われる電流は(当たり前だが)片足からもう片方の足に流れていくので、実際に計測されているのは下半身の一部分だけになる。

Why I Just Threw My Expensive Body Fat Scales Out the Window


ちなみに元の研究結果はこちら。オランダとイギリスの大学および研究機関による検証結果であり、8種類の測定方法のうちBIA方式は測定誤差が最も大きくなっている

Body Composition Changes in Bodybuilders(PDFリンク)


パワーメーターや心拍計※でも、誤差や値のブレが大きいと何を信じればいいのかわからなくなる。(※自分の場合ハートレートモニターが200bpmを簡単に越えてしまったりと明らかに間違った数値を出すことが頻繁にあったので現在は心拍数をとっていない)

数値で見えることは定量化の点ではメリットだが、あくまで数字が正確であるという前提の上でである。

となると唯一正確だと信じられる数値は体重だけになり、体重だったら今の体重計で十分じゃないかということになってしまうのであった。

2 件のコメント :

  1. 自分も最近体重計を新調しましたけど、結局シンプルなものにしました。
    タニタのアスリートモード(試してみたかっただけ)が使える一番安いやつに・・。
    現状では体重とBMIさえすぐわかれば正直なんでもいいです。

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    1. タニタのアスリートモード自体まさしく「推測をベースに推測する」というBIA方式の裏付けなのかもしれませんね。ちなみに上掲の検証結果ではBIA方式よりもBMIを元に体脂肪率を計測した方が誤差が少なかったそうです。

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