その1:アメリカ本土最大の島はどこだ?
その2: ロングアイランド一周計画と準備
その3: 一日目 東へ
■出発準備とメンテナンス
朝、時計を見たら7時半。
6時に携帯電話のアラームをセットしていたのだがなんとマナーモードになっていて寝過ごしてしまった。
まだ体中が痛い。思えば昨日は214.7km走っている。
ちょうど数日前に日本で行われていた箱根駅伝は、往路108.0km、復路109.9kmの計217.9kmなので、(もちろんロードバイクだからできるのであるが)箱根駅伝の選手10人が二日かけて走るのとほぼ同じ距離を一日かつ1人で走破したわけで、これで疲れが残ってないという方がおかしいだろう。
昨夜はあまりの疲労困憊でロードバイクのメンテをする暇もなく、エンジンのメンテで手一杯だったので出発前にロードバイクのメンテをすることに。
まず見るべきは一番重要なタイヤから。とにもかくにも空気を確認。まだ気圧は十分。パンクもしていない。タイヤを拭いていくと小さいガラスの欠片が側面についていた。こわいこわい。これでカーブでもしたときにめり込んだらと思うとタイヤのメンテは必須だ。タイヤ表面の汚れはもちろん、リムやスポークも含めてタイヤ回りをふきふきする。
次にスプロケット。ギア板の間に泥(おそらく元々は雪と一体になっていた泥)が入り込んでいたせいで変速がおかしかったり異音を発していたのだろう。幸い細いストローをもらえたのでそれを噛んで平べったくしてスプロケットの間をガリガリ掻き出して掃除する。写真は既にけっこう掃除したあとのものだが、こんな感じで跳ね返った泥まみれの雪で雪が溶けた後に泥だけ残りこんな状態に。
あとは全体的にぎっしりついた汚れ(主に泥)を落としてやる。ロードバイクはもちろん、ビンディングシューズ、ヘルメット、リュック、ダウンジャケットに至るまで。それから使うかもしれないのでティッシュを数枚失敬して、服を来て、使い捨てコンタクトレンズをつけて、チェックアウト用に部屋の片付けをして、と準備していくと、結局出発できたのは9時過ぎになってしまった。この時点ですでに予定の230キロは無理な気が。
チェックアウトと言えば、ここのロッジはドアの内側にいろいろ説明が貼り付けてあり、オフィスアワーは9時からで、チェックアウト期限は午前11時まで。それより早くチェックアウトしたい場合はカーテンを全開にして鍵を部屋の中に置いといてくれ、ということで元々9時前に出発する予定だったからそれを考えていたが、結局9時を過ぎてしまったためオフィスまで持っていく。が、誰もいない。しょうがないのでカーテンを開けて鍵を室内に置いて出発。
昨日は暗くて余裕もなかったので出発前にロッジの前で一枚。
■往路出発
意気揚々と出発しようとするがロッジの前の雪がひどくて、いきなり足をとられ、しかもチェーンが外れてしまう。幸先がよいとは言えない状態だが、最初に目指すは40キロ先にあるロングアイランドの東の端、Montauk Point。
寒いながらも、追い風も手伝ってぐんぐん進む。
ひたすら続くMontauk Highwayを時折通り過ぎる車と列車を横目に走行。
が、Montauk Pointに近づくにつれてアップダウンが激しくなる。島の東端だから、なだらかな低地だと思っていたが大間違い。一気に進むペースが遅くなる。
■プーリー凍結事件
ここでさらに今日の運命を決定付ける不運が襲う。アップダウンの途中でいきなりクランクがガキン、ガキンとカクカク回転するようになる。
明らかに正常にチェーンが回転しておらず、溜めを作ってガキンと動くのである。これはおかしいと思って緊急停止して側にあった郵便受けにロードバイクを立て掛けると、なんと郵便受けがちょうどハンドルバー付近の高さでGarmin 705の画面のプラスチックに傷がついてしまった。
買ったばかりのGarmin 705が傷ついてしまったのはかなり痛いのだが、そんなことよりチェーンの異常をなんとかしないと凍え死んでしまうので別の場所に立て掛けて早速チェックする。
後輪を浮かせてペダルを回転させてみると、プーリーがぐぐーっと引っ張られてガキンと元に戻りを繰り返している。ここでよーくプーリーを見ると、プーリーの隙間や歯と歯の間に氷が張っていて、正常に回転していないことが判明。通常は、プーリーが適度な力で引っ張り引っ張られて、そのときのギアに合った長さにチェーンの回転幅を調整してくれるのだが、プーリーが凍って動かないせいでチェーンの回転に合わせてぐぐーっと引っ張られてしまい、もうこれ以上いかないところまで来たところで(プーリーが引っ張る力が勝り)元に跳ね戻るという状態になっている。
プーリーをなんとかせねば走れないので、とりあえず手や近くの小枝でガシガシ氷を削り落としていく。
一通り氷を除去するとなんとか走れるようになったので一安心。
と思いきや、またすぐにガキンガキンとなってしまう。
水を含んだ雪道を走っているため、雪やら水やらの跳ね返りがプーリーにもあたり、あとはペットボトルのスポーツドリンクが凍るのと同様の原理で、プーリーについた水や雪が走っているうちに氷結。結果、プーリーをすぐに凍りつかせてしまうのだった。
こんな状態でちょっと走って氷結してを繰り返していては体が持たない。Montauk Point近辺は東の端だからか海風も激しく寒さも尋常じゃない。こりゃあかんと思ってガチャガチャ試していると、そもそもプーリーが一番引っ張られてる状態で走れば、ガキンガキンならないことが判明。つまりリアギアをロー(一番大きいギア板)にすることでなんとか走れる状態を維持できるのだ。
それでも凍りつきが激しいとさらに引っ張られてガキンガキンなるのだが、ローギアであれば一度氷を割ってやれば当分はガキンガキンしないので、フロントアウター、リアローの状態でギアを固定して走り続ける。
■東の最果てに・・・
というわけで、プーリーの凍結との戦いで、走っては凍り、氷を割っては走り、走っては凍りを繰り返してる間にMontauk Pointに到着。
ついに長い旅路の末に東の端にまで来たわけだ。ちなみにランドマークとなっている灯台はもちろん冬季のため閉まってます。(´;ω;`)
大西洋を見下ろしつつ、この先にはヨーロッパがあるんだなぁなどと考えながら物思いにふける。といきたいところだが、こちとらプーリー凍結との戦いの真っ最中。止まってると寒くて凍えそうになるし、それどころではないので、ちょっと海を眺めたらさっそく復路へ。
■復路へ・・・
復路といっても今度は北側を回るため途中で脇道にそれたり、蛇行をしながら戻る。出発地点付近まで40km戻ったあとに、さらにサウスフォークとノースフォークの付け根にあるRiverheadという街まで約50km。先は長い。
来たときとは違って復路は向かい風。一気に巡航速度が落ちる。
とくに風がきつかったのは海が両側にせり出す場所。しかもプーリー凍結により一番軽いギアしか使えないので速度がでない。速度がでないと時間がかかる。時間がかかるとGarmin 705上の地図も全然進まない。目に見える変化がないので精神的にもきつくなってくるという悪循環。
一方、少しでも脇道にそれれば、遠回りにはなるがGarmin 705に逐一表示される指示に従って進み、「次800m先を左折」など、手短な目標をこなしていくことに集中できるので気を紛らわすことができてよい。
■デリとコーク
サウスフォークの北側を通ってRiverheadまで行くので、ロングアイランド鉄道を横切る。
本数は決して多くなく、自動車社会ではあるが、ロングアイランド鉄道は趣があっていいものである。
ちょうど、そのあたりでクエン酸水を飲み尽くしてしまう。
もちろん凍結して氷になってしまっている分を除いてだが。
長距離ライドでは食事も大事だが、やはりこまめな水分補給が命綱で、なんか力入らへん、ペダルめっちゃ重い、というときに水分補給すると一気に回復したりするものだ。そのため水が尽きたのは痛い。というかこのままだと持たないかもしれない。
というわけで通過するデリ(コンビニのようなもの。チェーン店ではない個人商店がほとんどだが、ドリンク、惣菜、スナックなどが一通り揃っている)に適当に入ることに。
が、こちとら最小限の装備でしか来ていないので、チェーンもU字ロックも持って来ていない。本当はチェーンはこのために新調したのだが、出発の朝、バックパックに入れられるスペースがなく、置いてきてしまっている。
そのため、歩いている人もいるような街中ではロードバイクを無防備で停めておくのは危険だ。少なくとも自転車ごと入れるような大きな店(大型マクドとか)か、人里離れて周囲に店や人がいない場所にあるようなデリが狙いどころだ。
というわけでデリを探しながらSag Harborに入る。
ひたすら走り続けているおかげで、デリに出くわす機会も多く、Noyacという、ちょっと山に入ったところでデリを発見。店先にロードバイクを停めて中に入る。ここでは車すらすれ違うことも少ないし、歩いてる人は皆無なので、飲み物を買う1分、2分の間に盗まれることもないであろう。というかロードバイクが盗まれたらそこで試合終了なので最大限の注意を払う。
店の中ではそれなりに普通のデリの品揃えがあり、コーラとゲータレードオレンジ味を購入。デリではふくよかな白人女性が愛想良く対応してくれた。こんなところでデリをやって暮らすのものんびりしててうらやましいなぁと思った。
その場でコーラを半分(250ml)ほど飲んで一息つく。
凍って飲めなくなるのを避けるために、あえてボトルケージには入れずにゲータレード共々バックパックに入れて出発。
出発後、最後のパンであるコーンパンを走りながらかじるが、摂取した水分が全て体内に吸収されてしまっているのか唾液がまったく出てこず、激しく食べにくい。しょうがないので、山の中で止まってコーラで流し込むが、3分の1食べたところで落としてしまう。(´;ω;`)
しょうがないのでそのままコーラを全部飲んで出発。
■Route 24
だんだん日が傾きかけてくるが、突き進んでいく。
そうこうしているとルート24に到着。
ここからはルート24を西北西に走ってRiverheadまで行く。
途中でBig Duckという土産屋と遭遇。
オフシーズンで閉まっているのに目だけは赤くライトアップされてる。
■進むか、否か・・・
Riverheadに到着。
当初の予定ルートではここからノースフォークに行って戻ってくるというものなので、Garmin 705には「右折せよ」の指示が・・・。
今日のこれまでのペースで行くと戻ってくるのは夜の11時か12時か・・・。プーリーは凍結してローギアでしか回せないし、クリートも凍ってガシガシぶつけてやらねばはまらない。腰もお尻も痛さが増し、ここまで来れたのも途中のコーラ補給があったればこそ。というかこれから先はデリも閉まってしまうだろうから途中補給もできなくなる。そしてこの寒さと強風・・・。しかももう日が落ちて暗くなってきている。人里離れた真冬の暗闇ライドがいかに辛いかは昨夜経験済み。
こんな中をあと100km行くのは無茶だ、無謀だ、無理だ。
というわけでGarmin 705のナビゲーションを直進した先のホテルにセットし、今日はこのままホテルに向かうことに。おかげで完全に闇夜になる前に宿に到着できた。
宿はチェーン店だけあって昨日よりも近代的な感じ。
オフィスでチェックインして部屋がある建物へ移動する。
部屋に入ってロードバイクを置いて、まずはあらかじめGoogle Mapで確認しておいたマクドへ直行。
今日合わせると二日間での消費カロリーは11,000kcalを超える。一方、摂取した固形物はパン5つと3分の1と、ミニスニッカーズ5個。明らかにカロリー不足に陥っているので、高カロリーなマクドで二人分のセット、ドリンクLサイズ、ナゲット10個セットを買う。ちなみに基本的に郊外のマクドでは、店内ではドリンクは飲み放題。ディスペンサーが置いてあって自分で自由にくめる。その場で少し飲んだあと、セットのMサイズにコーラとスポーツドリンク、Lサイズにコーラを詰めて宿に戻る。
本当はシャワーを先に浴びたかったが、昨日と違って電子レンジがないので、あったかいうちにマクドを食べることに。
こちらはAngus BurgerのMushroom & Swiss。
おなじみBig Mac。
このハニーマスタードというナゲットソースがオススメ。
マクドを食べたあとはシャワーへ。
が、全然あったかくならない。
しょうがないのでぬるま湯をさっと浴びて部屋の暖房であったまろうとする。
が、暖房も昨日のあったかくないヒーターと同じような感じ。
しかも昨日と違って暖房は一つだけ。
なんだかんだで、体をあっためてからテレビを見る。
ニューヨークでみるYou've got mail(ニューヨークが舞台の映画)。
やはりLong Islandに来たからにはこれだろうということでLong Islandのニュースを見る。
天気予報では今夜は華氏23度(摂氏マイナス5度)。
行かなくて正解だった。
ちなみに今日はプーリー凍結にやられた一日だったが、やはり例年を見ても今日は寒かったらしい。
明日はこんな感じ。
よかった。0度以上であればドリンクも凍結しないで済むだろう。
明日は早く出発、走り終えたいのでロードバイクのメンテを夜に行う。
というのも、午後5時を過ぎるとマンハッタンでは帰宅ラッシュが始まって走りにくくなるのでそれまでには自宅に到着したいのだ。本来なら帰宅ラッシュ時でも問題ないかもしれないが、三日間走り続けて疲労もMax、集中力も途切れかけていると思うので、リスク回避のためにそこのあたりを調整する。
メンテナンスはまずはタイヤから。素晴らしいことに空気圧はOK!パンクもなし!ありがとー!!
一通りタイヤを綺麗にしてやって、今朝と同様に、スプロケットやフレーム、ディレイラーの汚れもふき取っていく。
そして今日最大の敵となったプーリーも。
既に部屋の中であったまっているのであれだけ苦しめられた氷も溶けてなくなっている。
それにしても今朝綺麗に掃除して出てきたのに、また全体的にすごい汚れが・・・。やはりそれだけ今日は雪・泥・水の跳ね返りが激しく厳しかったのだろうことが伺える。
フロントディレイラー付近もひどい有様。
で、ビンディングシューズとクリートを拭こうとすると・・・。
クリートが削れてきてる上に、シューズカバー(正確にはつま先カバー)が破れてしまっている・・・。
特にシューズカバーは痛い。これで足の指がかじかんでいたのか・・・。
そりゃあクリートの隙間が何度も凍結して、ビンディングペダルにガツガツぶつけなきゃクリートがはまらない(氷を落とせない)状態になっていたのでしょうがない。こんなことを繰り返していてはさすがにシューズカバーも破れるわなぁ。
そんなこんなでトラブル続きの二日目だが、死んだように床につく。
ちなみに今回の実際の走行ルートはこんな感じ。
明日はおそらくルート25Aをひたすら西進することに。
これ以上トラブルは起きずに無事終わって欲しいものだ・・・。
つづく。
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