すでに以前のエントリで記載しているが、自分は著作権を執拗に(いわば自分の都合の良いように)利用しているディズニーに嫌悪感を抱いていた。人類の叡智たるパブリックドメインを無視して、一企業の利益のために法律まで変えるとは何事かと。
しかし、フロリダを旅行していると、フロリダという土地は本当にディズニーでもっているんだなぁということがわかる。もともとフロリダは土地の使い道が見いだせない湿地帯が多く、安く売りに出していたところにディズニーが入ってきた。
なにもなかったフロリダの湿地帯に一大レジャーランドを築き、フロリダの人々に職を与え、フロリダの世界的地位を向上させた。
この功績はあまりにも大きいし、そこの土地やそこに住む人々に対して、企業ができることの素晴らしい役割だと思う。
ディズニーワールドを建設し、土地改良を行い湿地を整備し、道路網を敷き、航空網も普及させる。それに関わる莫大な人々に職を供給し、給料を出し、生活を安定させる。労働者や観光客がフロリダに集まり、フロリダの人口や観光収入を底上げして交通需要や生活需要を掘り起こす。道路ができ、ホテルができ、様々な店ができる。世界中から人々が、金が集まり、経常黒字地域となる。
ディズニーがそこまで、フロリダ地域における公共的役割も果たしているのであれば、著作権延長の行動も、単なるアイズナー会長(当時)を初めとする自社株主の利益保護のためだけではなく、莫大なディズニーワールドに関わる人々の生活保護、政府の税収確保、ひいてはフロリダという地域全体を支えることにもなるのである。
今回旅をして出会った様々な人々。
猛暑の中で交通整理をする駐車場の人、エプコットのファストフード店で働く香港人、アニマルキングダムで案内所にいた日本人の方。
ウォルト・ディズニー・カンパニーがフロリダにディズニーワールドを建設したからこそ、今の彼ら、彼女らとその家族のフロリダでの生活が実現されているんだなぁと考えると感慨深い。
ニューヨークでは山ほどいろんな会社があるので実感がないが、フロリダのオーランドはまさしくディズニーでもっていると言っていいほどディズニーでできた街という印象が強い。
もちろんオーランドには、ユニバーサルオーランドリゾートや、シーワールドなど、それ以外のテーマパークもあるが、それらがディズニーワールドがオーランドにあるからこそ、後発で同地域に進出してきたことを考えると、そもそもディズニーワールドがなかったら何にもなかったんじゃないかと思うほどである。(まあケネディ宇宙センターとかもあるが)
今回出会ったもの。人に限らず、辿り着いた空港、レンタカーサービス、泊まったホテル、走った道路、休んだ木陰、飲んだ水、立ち寄ったファーストフード店、スーパーマーケット、コンビニ、それら全てのものがディズニーによって支えられているのであれば、すごいじゃないかディズニー。がんばれディズニー。と思うようになったわけである。
思うに、企業の使命が、株主への利益還元、従業員への生活保障以外に、地域社会への貢献というものもあるのであれば、ディズニーはフロリダという地域社会を守るために、企業として原理原則通りの行動をしているだけではないのか。
確かに『人類の叡智』、『人類の財産』といった大義名分は聞こえが良いし、批判しやすいかもしれない。が、人類の叡智よりも今ディズニーのおかげで日々ご飯にありつけている人たちがいるという事実も忘れてはならない。ロビー活動してまで法律を変えて利益を確保するやり方は確かに泥臭いかもしれない。だが、実際にそこで生きている人々の日々の生活を支えるためには、泥臭くても実利を追い求める方が現実的だ。少なくとも机上で批判しているグループより、よっぽど地域社会に、公共インフラに、政治経済に与えている貢献、影響は大きい。
2001年3月、バーミヤン渓谷の2体の石仏がターリバーンによって爆破された。もちろん世界遺産の破壊は国際社会から強烈な批判を浴びたわけだが、イランの映画監督は、アフガニスタンの百万の餓死者よりも一つの仏像が世界に注目されたことへの苛立ちを表明した(Wikipediaより)。
ディズニーにも似たような考え方ができると思う。ミッキーマウスというキャラクターに対する著作権期限の到達よりも、フロリダに、ウォルト・ディズニー・カンパニーに関わる何万、何十万という人々の生活の方が大事なのである。あえてゴーマンをかませば、クーラーの効いた大学のゼミや居酒屋で著作権議論を語る暇があったら、暑い中で必死にそこで働いている人々の現実を見ろということである。
自分にそれを気付かせてくれただけでも、今回のフロリダ旅行は価値のあるものだったと思う。
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