一時期、安売り時に大量に購入して、しばらくプロテイン切れになる心配はないなと安心していたのだが、ついにその「しばらく」が終わってしまったようだ。
ということで、プロテインを取り上げてみたいと思う。
まず抑えておきたいのが、基礎知識である。
最初はプロテインの位置付けから。
・パフォーマンス向上=運動+栄養+休養であり、プロテインはそのうちの栄養の一部分を補助するものに過ぎない。
・プロテインは食品であり、単なるタンパク質でしかない。(そもそもタンパク質の英語名がProtein)
特に二番目の意識は重要で、プロテインは医薬品でも医薬部外品でもなく食品である。筋肉増強剤でもなければ、ましてやドーピングでもない。食品の一種類として、効率的にタンパク質を補給できる食品として位置付けるべきである。イメージとしては、ゆで卵を食べるときに、コレステロールが高い黄身ではなく、タンパク質が豊富な白身を選り好んで食べる意識に似ている。
次に「パフォーマンス向上=運動+栄養+休養」における、プロテインが担う栄養部分と、他の運動・休養との関係を生化学の観点からおさらいする。
・筋肉では常に筋タンパク質の合成(同化、アナボリック)と分解(異化、カタボリック)が同時に起こっている。
・運動後、数時間は同化作用が亢進する(いわゆるゴールデンタイム)。
(4時間後でも効果続いた研究結果がある)
・休養時(非運動、平常時)では、飢餓状態になるとカタボリックが亢進してネットバランスがマイナスに傾く(=筋肉が減る)
・飢餓状態とは、肝グリコーゲンが枯渇し、糖新生※が亢進している状態である。
(※タンパク質の分解によって糖を合成すること)
・肝グリコーゲンの貯蓄上限は約100グラム、カロリーにして400kcal
・肝グリコーゲン、筋グリコーゲンの貯蓄分を超えて炭水化物を摂取しても、脂肪に変わるだけ
(=「食いだめ」はできず、逆効果)
これらのことから、「運動時」と「休養時」の二つに分けてプロテインを摂取するのが好ましいことがわかる。
■運動時におけるプロテイン摂取
まず運動時であるが、最終的にはタンパク質はアミノ酸の状態にまで消化分解されて利用されるため、トレーニング直後にすばやく体内にアミノ酸を取り込む必要がある。よって、吸収効率が良いプロテインが好ましい。それこそペプチド(タンパク質を分解され、アミノ酸が結合された状態)か、アミノ酸そのものを摂取すれば、胃での消化過程をバイパスして小腸で直接吸収されるが、アミノ酸は単価で費用対効果が悪く※、アミノ酸の質よりも量による効果が大きいことが研究結果でも出ているため、タンパク質をその分多く摂った方が良い。(お金が有り余っている人はこの限りではない)
��※例えば、市販のプロテイン、アミノ酸プロテインの含有量はプロテインがグラム単位、アミノ酸はミリグラム単位で表示されているほど量に差がある)
プロテインの種類は検索すれば山ほど出てくるので詳細は割愛するが、消化吸収効率が良いホエイプロテインが適している。
ホエイプロテインでもタンパク質の抽出効率が悪いホエイプロテインコンセントレート(WPC)と、抽出効率が良いホエイプロテインアイソレート(WPI)がある。
ホエイプロテインコンセントレートについては、特にプロテインの商品説明に記載されていないことが多い。とりあえず特に精製方法が記載されていなければ、精製方法を売りにしていない=WPCの可能性が高い。
ホエイプロテインコンセントレートは、精製精度が高くないため、抽出元の牛乳の成分であるラクトースや脂肪分を含んでいる。特に乳糖不耐性症※の人は腹痛が起こらないか試してみた方がよい。(※ラクトースを分解する酵素、ラクターゼが不足している状態。牛乳を飲むとお腹をこわすという人はラクターゼが不足している可能性が高い)
一方、ホエイプロテインアイソレートは、精製精度が高いため、純粋にホエイプロテインのみを抽出できているものが多く、脂肪分等の意図しない他の不純物はほとんど含まれていない。
例えばこちらのホエイプロテインアイソレートは、プロテイン30グラム中、脂質が0グラムである。
こちらは自分がこれまで飲んだ中で最も美味しいプロテインのMuscle Milkシリーズで、まさしくマクドナルドのシェイクのような味がしないでもない。
しかし、成分表示を見ると驚愕である。カロリー控えめのMuscle Milk Lightでさえ、プロテイン20グラム中、脂質が6グラムも入っている。通りで美味いわけである。
ちなみに、ホエイプロテイン抽出元の牛乳のタンパク質は、80%がカゼインプロテイン、20%がホエイプロテインである。カゼインプロテインの特徴は、その消化吸収効率の遅さで、胃の中でゲル状になる。
つまり、消化効率を高めるため、牛乳の中から20%しかないホエイプロテインを抽出して作られたホエイプロテインの粉末に対して牛乳で溶かして飲むことは、せっかくホエイプロテインだけ取り出して高くした消化吸収効率を、わざわざ自分でカゼインプロテインと混ぜて悪くしていることに他ならない。トレーニング後用のプロテインには、水で割るように指定しているものもある。
また、トレーニング前後というピンポイントの時間帯で摂取することが効果的である※。トレーニング前用、トレーニング後用のアミノ酸サプリメントも市販されている。
��※「Effects of Supplement Timing and Resistance Exercise on Skeletal Muscle Hypertrophy」(筋肥大におけるサプリメント摂取タイミングと負荷トレーニングの効果) オーストラリア ヴィクトリア大学Paul J. Cribbら)
■休養時におけるプロテイン摂取
休養時におけるプロテイン摂取の目的は、筋タンパク質の減少であるカタボリックを防ぐことである。端的に言えば、血中アミノ酸濃度を一定に保つということである。
長時間血中アミノ酸濃度を保つという点で、時間が限定されている運動後のゴールデンタイムとは目的が異なる。
運動直後においては、素早い消化吸収が求められるためホエイプロテインが最適だが、休養時においては、ゆっくり吸収されることで、長い間アミノ酸供給をしてくれるプロテイン、つまりは消化吸収が遅いものが逆に適している。そのため、ホエイプロテインに比べて消化吸収が遅いカゼインプロテインやソイプロテインを摂取することになる。
この点、消化吸収に素早さを求めず、一定のタンパク質を補給するということであれば、肉や魚、豆や牛乳など、食事から摂取することでも十分である。例えば豆乳は豊富なソイプロテイン供給源である。
豆乳には脂肪があるものの、必須脂肪酸を含む不飽和脂肪酸(いわゆる植物性脂肪に多い)が多いので健康にも良い。
自分の場合は、食間にスキムミルクを飲むことで血中アミノ酸濃度の不足を防いでいる。というか毎日スキムミルクをハーフガロン(1.89L)飲んでいる。
ちなみにスキムミルクはいわゆる脱脂粉乳のこと。牛乳は飽和脂肪酸(動物性脂肪)を多量に含む高脂肪食品なので要注意である。例えばこちら、1ガロン(3.78L)だが、ハーフガロン飲むと飽和脂肪酸が一日の摂取量の200%となる。
一方でスキムミルク。同じくハーフガロン飲んだとしても、こちらの飽和脂肪酸は0グラム。一日の摂取量の0%である。脂肪なんて普段の食事で気にしなくても摂りすぎてしまうくらいなので、脂肪をつけずに効率的にプロテインを摂取したいという目的であればその差は歴然である。
とまあいろいろ実際の栄養素表示を出して収集がつかなくなってきたが、要は飢餓状態をなくして、不要なカタボリックを防ぐことである。ちなみに飢餓状態の例を出すと、お腹が減ったと感じたり、腹の虫が鳴っていればすでに飢餓状態になっているまたはなりかけているということである。ロードバイクで言えば、喉の渇きを感じたあとで水分補給しても、水分補給のタイミングとしては遅すぎるのと似ている。つまりは、自覚症状が出る前に防げということである。
アメリカではカゼインのみのプロテイン、ソイのみのプロテインなども販売されている(というかもちろん日本でも販売されていると思う)。が、ホエイもカゼインもソイもアミノ酸スコアは100で、必須アミノ酸における不足はないので、自分に合ったものを選べばよい。逆に乳糖不耐性症の人は、ホエイ、カゼインプロテインを避けたり、大豆アレルギーの人はソイプロテインを避けたりといった選択をすることになると思われる。
幸い自分はどちらでも問題もないので、運動後用の即効用ホエイプロテインと、スキムミルクのコンビが習慣になっている。
アメリカで販売されているプロテインが見られるのは面白いですね、Muscle Milkは実際に飲んでみたくなったのでこれからネットで探してみます。
返信削除大変勉強になりました。
返信削除しかし最近のプロテインは美味しくなりましたね。
不味いと評判のプロテインでも実際に飲んでみたら美味しいと思えるし(まあ嗜好は人それぞれなんですが)。
あとはもう少し安くなれば!
確かに日本では売られてないものもあるので新鮮かもしれません。逆に私は日本のプロテインが手に入らないので試してみたいと思ってます(^^;
返信削除ライカさん、
返信削除こちらでは結構安売りセールがあるのでそのときを狙って購入してます。半額以下になることもあるので重宝してますが、逆に普段は高いので買う気になれず、今回のようにプロテイン切れになると買うしかないので損した気になります。
プロテインでも味の善し悪しはけっこうバラツキがあって、Muscle Milkのように美味しいと思えるものもあれば、(文字通り(笑))吐き気がするものもあります。