朝の高負荷トレーニングということで、今週ユージィさんからもコメントいただいた「起きてすぐの運動の体への負担」について整理してみたい。
■早朝トレーニングのメリット
まず早朝トレーニングの是非については、以前あげた以下エントリをご参考いただきたい。やはり強調したいのは、実際のレースが朝に行われることと、一日の不確定要素(断れない急な飲み会の誘い等々)の影響を受けないこと、安全であることである。
早朝トレーニングをする5つの理由と5つの方法+α
朝の安全面については、(休日の朝に病院に担ぎ込まれた自分が言うのもなんであるが、)交通量や明るさの点から見ても夜(仕事後に)練習する場合とは段違いである。ロードバイクで毎日トレーニングするとなると、週末だけのサイクリングに比べてより速い速度で、頻繁に、長い時間走ることになるので、それだけ事故リスクも高くなる。実際に、練習中に事故に遭って亡くなった例が、日本の競輪選手でもヨーロッパのロード選手でもあるだけに、いかに練習中の事故リスクをヘッジするかも自転車生活を続けるにあたって重要な要素となってくる。
■寝起き後の体について
それらのメリットからトレーニングを早朝に行うのは合理的ではあるのだが、一方で寝起きの体は動きにくく、すんなりとトレーニングに入りにくい状態にあるのも確かである。
まず、一般的には、運動前の準備で体の負担を和らげる方法として思いつくのは、ラジオ体操だったりストレッチだったりするかもしれない。
自分も、まだ自転車を始める前のことであるが、とりあえず朝起きたらラジオ体操第二をしていたことがあった。
なぜラジオ体操第一ではなく第二かというと、第二で冒頭に出てくる「力こぶムンムンがに股ポーズ」が間抜けっぽくて好きだからである。
ただ、ラジオ体操やストレッチはトレーニングにとって逆効果を及ぼすこともあるので注意が必要である。
When to Stretch - Experts Recommend Static Stretching After Exercise
ストレッチがマイナスに作用することがあることはLIVESTRONG MODERATELY.さんが既に詳しく述べられているのでそちらをご参考いただければと思う。
ストレッチとは筋肉と腱を無理に伸ばして引っ張る行為であり、静的ストレッチは筋肉と腱の弾力性を低下させて収縮力を低下させ、動的ストレッチは伸張反射を助長するリスクもある。
そもそも、自転車のペダリング運動に於いては、いわゆるストレッチで行われるような筋肉を伸ばす動作をすることがない。屈伸にしろ、前屈にしろ、屈伸ほど鋭角に膝を曲げることもなければ、前屈ほど膝を伸ばすこともない。ひいては、上記のリスクに加え、朝の貴重な時間をペダリングとは関係ないものに費やしていることになる。例えるなら、サッカーの試合前に投球練習をしているようなものである。
一方で、ここで注意したいのは、「ストレッチとウォームアップは別物」ということである。
ストレッチが筋肉と腱を伸ばして引っ張る行為であれば、ウォームアップはその名の通り、体を温め、筋温を上げる行為である。
早朝トレーニングを継続的にされている方であれば、漕ぎ出し10分~15分くらいまでは脚に力が入らず、「こんな低負荷でこんなに疲れてるなら、この後の高負荷トレーニングは難しいな。オーバートレーニングで疲れが溜まってるのかな」と思ったものの、回しているうちにだんだん楽に回せるようになった経験があると思う。
その過程こそが、ウォームアップによって血流が毛細血管にまで張り巡った証拠であるといえる。そういった経験からも、自分は早朝トレーニングでストレッチは行わないが、ウォームアップは必ず行う。というかウォームアップをトレーニングメニューの中に組み入れているので、既にウォームアップはトレーニングの一部分になっている。
ちなみに、ウォーミングアップとはあくまで自転車に乗ってのEasy Spinningであって、ストレッチではない。サッカーの前に投球練習をするのが無意味なのと一緒で、ペダルを回す高負荷トレーニングの前に必要なのは、同じくペダルを回す筋肉を温めるペダリングである。ペダリングに使う筋温の上昇によって血流の流れを促進し、筋肉の毛細血管にまで血の流れを行き届かせるのである。
自分の場合はそれこそ100ワットのような軽い状態から回し、自然に200ワットくらいまで脚が回ってくるのを待つ。
「The Cyclist's Training Manual: Fitness and Skills for Every Ride」という書籍では、トラックレースでは45分ほどローラーでウォーミングアップを行っている選手を多くみかけること、どのようなトレーニングセッションでも10分間はウォームアップを行うことが推奨されている。
ちなみに人によっては、トレーニングができる場所まで自宅から走っている間がウォーミングアップになることも多い。例えば最寄のサイクリングロードまで自宅から20分かかる等である。
ただ、公道では赤信号だったりで最適なウォームアップができないことがあるので、レースなどここ一番のウォームアップには、あらかじめ検証済みの、自分にあったウォームアップ時間・負荷でローラー等を利用するのがベストな方法だと思う。
そういえば、ベルギーのアマチュアワールドチャンピオンシップでも、タイムトライアル前にローラー台を回す選手たちが印象に残っている。
かのクリス・ホイもローラーでウォーミングアップをしている。
日々の早朝トレーニングによる体への負荷だけでなく、冒頭のメリットで挙げた通り、実際のレースが朝に行われることが多い以上、朝からパフォーマンスを発揮できる自分なりのウォーミングアップ方法を普段から実践、検証して確立することが重要である。
「起きてすぐの運動の体への負担」は自分もちょっと気になってたので安心しました。
返信削除「漕ぎ出し10分~15分くらいまでは脚に力が入らず~」「回しているうちにだんだん楽に~」
なるほど、言われてみれば思い当たるフシが沢山ありますね。
あ、BUSHIDO快適です( ^ω^ )
気になってた静音性もそれほどうるさくなかったし(ミノウラV270と比べれば騒がしいですが)、とても楽しいです!
早速のエントリありがとうございます。
返信削除いつもよりじっくり読みました(笑)
朝のトレーニングについて。
受験生の頃わざわざ朝から模擬試験をやったり、受験日の行動に合わせて数週間前から起床時間を変えていたことを思い出しました。
レースで最大限のパフォーマンスを発揮するためには重要ですね。
体が目覚めるまでのウォーミングアップを入念にして、冬の朝練を乗り切ろうと思います。
それよりも驚いたのはストレッチ。
恥ずかしながら、いつも念入りにやってました(汗)
【水飲むな】【ウサギ跳びで足腰鍛えろ】な時代を笑っていましたが、いつの間にか笑われる側になっていたとは!
自分の場合は前屈の柔軟性が低く、ペダリングを続けるとハムストリング近くの腱が痛くなることがあります。
そのため深い前傾姿勢がとりづらいのですが、これもストレッチしたところで改善されないってことですよね?
その人にとってベストなトレーニングは個人差もあるので、自分の体験、経験によってトライ&エラーを繰り返して自分にベストなトレーニング方法やウォームアップ方法を模索していくというのは大事だと思ってます。実際に自分が何分くらいでいつも脚が回り出すのかがわかってればトレーニング時間の効率化にもつながりますし。
返信削除BUSHIDOは電源系モデルに比べて音が大きいという話しもありましたが、影響がない程度とのことでよかったです。寒い冬ではの「楽しいインドアトレーニング」がモチベーション維持に大事ですよね。
お役に立ちましたようでよかったです。
返信削除ストレッチは体の温まっていないとき(つまり、運動前)に行うと逆効果にすらなるのでお気をつけください。
体の柔軟性のためのストレッチとしては、体が十分に温まったあとに行うと効果的です。本エントリ中に、「When to Stretch」というトレーニング後にストレッチを行う記事へのリンクを貼っておりますのでご参考ください。
ちなみにハムストリング近くの腱の違和感については、柔軟性というよりはペダリングの仕方(どこの筋肉をつかってどのようにペダリングしているか)が原因になっているように思えます。もともと腱に故障や問題がある場合は話しが別ですが、「人より体が硬い」程度であれば、無理に腱を伸ばすストレッチをしなくても、ポジション出しや乗り込みの試行錯誤で改善できる部分もあるかと思いますので、前屈の良し悪しにとらわれず他のアプローチも試されてみると良いかと思います。
あぁ、なんか勘違いしてたようです、ワタクシ。
返信削除ストレッチを【トレーニング前に】行うことは無意味(場合によっては有害?)であって、いつどんなときでもやってはダメってわけではないんですね。
参考ランク先、苦手な英語なのでスルーしてましたが頑張って読んでみます。
♯ カラダだけでなく頭もやわらかくしないと(^◇^;)
確かにストレッチというと運動前に行うイメージが強いですし、ご理解がクリアーになったようで良かったです。やはりトレーニング理論等は英語の資料、文献も多いので、面倒くさいかもしれませんが英語の記事は役に立ったりすることも多いです。
返信削除今後も海外にいることを活かしてそういった英語ベースの資料、情報をお届けできればと思いますのでよろしくお願いいたします。