電子の長城 ~ Great Firewall ~
今回、中国大陸に滞在することには不安もあった。
その不安は深圳の入境を越えてすぐに現実のものとなる。
まずネットがつながらない。もちろん香港のSIMと大陸のSIMは違うので、そもそも電話もかけられない。
それでもWIFIがある場所があり、WIFIでネットに繋げる・・・。
と、自分はブラウザを立ち上げて最初に表示されるホームページをGoogleにしているのだが、いつまでもたってもページが開かない。
そう、中国大陸内からはGoogleが禁止されているのである。
金盾と呼ばれるインターネット検閲システムにより、Googleへのアクセスはもちろん、TwitterやFacebook、LINEも全滅。
そして減りが早い電池残量で気付いたのだが、AndroidのスマホはバッググラウンドでGoogleサービスに接続しているものが多く、Gmailにしろ、Google Mapにしろ、Play Storeにしろ、接続できないとリトライを繰り返して電池を無駄に消費してしまうのである。
つまりGoogleどころかAndroidのスマホ自体が中国大陸で使うのに適していないということに。
通りでショッピングモールで見かけたスマホが見慣れないものばかりだったわけである。
しょうがないのでRoot権限でシステムサービスをどんどん無効にし、代わりに百度(Baidu)という中国ポータルサイトを使ってネット検索。
汕頭市街の地図も百度地図を使って調べる。
というように、Googleは百度(Baidu)、Twitter、Facebookは微博(Weibo)、LINEは微信(WeChat)、YouTubeは优酷(Youku)、Amazonは阿里巴巴(Alibaba)と、代替となる中国国内製サービスが存在している。
ちなみに代替サービスがあるのはネットだけではない。
汕頭を歩いていて、ふとHONDAのロゴがあるオートバイが目に入った・・・。
HDMDAだった!!
そして見覚えのある菱形のエンブレムがついた車を見て、おっ、三菱の自動車か・・・と思ったら・・・。
五菱だった!!
規制と保護と既得権益と
ボーダーレスでグローバル化している現代に生きていると、オープンな市場が当たり前のように思ってしまうが、外国企業の活動を制限して自国産業を発展させるのは国策としては間違っていない。
日本の米にしろ、農協にしろ、トランプの保護政策にしろ、産業や既得権益の保護に絡んで癒着にまみれた世界がアメリカでも日本でも存在するのは事実である。
例えばニューヨーク近郊。
コネチカット州にモヒガンサン、フォックスウッズといった有名な巨大カジノがある。
これらのカジノは保留地に追いやられて迫害を受けたインディアンに対する補償の色合いもあり、インディアン政策におけるアメとムチのアメにあたるもので、インディアン賭博規定法令(IGRA)によって合法的に認められた先住民経営による巨大カジノである。
不毛の保留地に居住区を制限された先住民にとって、カジノ経営は巨大な資金源となっている。
カジノといえば日本もご他聞に漏れず、公営賭博が認められている。
競輪とオートレースは経済産業省が、競艇は国土交通省、競馬は農林水産省、TOTOは文部科学省が所管しており、縦割り行政における各省庁の重要な資金源となり、巨大な利権と天下り構造の温床となっている。
「 サッカーくじ『toto』なぜ文部科学省の所轄なのか 」
ただ公営賭博の「目的」は財源確保でも天下り先確保でもなく、それぞれ「産業の発展と福祉事業」、「船舶の発展と社会事業」、「畜産振興と福祉事業」、「スポーツの振興」と、歯が浮くような大義名分が掲げられている。
先住民繋がりで言えば香港でも同様の利権がある。
「丁權(デンキュン)」と呼ばれる特権制度によって、父方の祖先が1890年代以前から香港の新界に住んでいる男子は、一生に一度だけ地代なしで3階建ての丁屋(デンオッ)と呼ばれる住宅を建設できるというものである。
これも既得権益だと非原住民から非難を受けたり、男子だけに限っていることで国連から女性差別の指摘を受けたり、さらに丁權自体が証券化されたり、不動産開発業者が間に入って違法に権利を売買、虚偽申請して丁屋を建ててしまい裁判沙汰になったりと社会問題化している。(新界小型屋宇政策(中国語))
自分も香港でサイクリングをしたときに新界で3階建ての建物が並んでいるのをよくみかけたものである。
シアワセノカタチ
さて、ホテルへ戻ってホテル内のレストランで地元の知り合いたちとディナー。
30人ほどの大所帯となり、わいわいとバイキング形式で中が凍ったままの刺身を口の中に入れる。
ただ潮州語が話せない自分は全く輪に入れず、広東語が話せる同行者と話すのみ。
「彼は少し普通話(標準中国語)がわかるから」と紹介されるものの、潮州語に交じって話される普通話に対応できるほどの語学力はなく、10年以上前にとった中国語検定2級も全く役に立たず、蚊帳の外状態。
が、30人もいれば同年代の人たちもその中にいて、若い人たちはそれなりに広東語が話せるということでやっと会話ができる。
話を聞くと、どうやら子どもの頃から香港のドラマを見ているらしく、それで広東語を自然に話せるようになったということ。
さらにドラえもんやクレヨンしんちゃんといった定番の日本アニメの力は偉大で、アニメで覚えた片言の日本語を話したりしてくれる。
Bleachが好きな人は、最近覚えた日本語を披露してくれるということで「卍解!(バンカイ!)」と叫んでくれたが、喜んで話してくれるその姿を見ると、「せっかく覚えたその日本語は日常生活で使われることはないよ」とは言えなかった・・・。
日本のソフトパワーはすごいもので、ワンピースや他の漫画の話し、おしんのドラマや山口百恵(ふるい・・・)の話など、こういった部分で親日感情が芽生えているのだとしたら侮れない。
そして子どもにはさらに国境はなく、うちの子は地元の同い年くらいの子と意気投合してはしゃいでいる。
その子のお母さん(といっても見た感じ20代前半)がスマホでダンスミュージックを流してそれに合わせて子どもたちが踊り、それをスマホで写真を撮ってビデオを撮って。
最後にはみんなで記念撮影して撮った写真をお互いに交換。彼らはFacebookもLINEも使ってないが、Bluetoothを使ってお互いのスマホ間で直接データ転送。
なんだ、ぼくらとなんにも変わらないじゃないか。
使っているアプリや制限が少し違うだけで、他はなにも変わらない。
言論が統制され、自由が制限され、生き苦しいんじゃないかと決め付けて、勝手にどこか可哀想といったような感情を抱いていた自分が恥ずかしい。
日本だって香港だって報道の自由が100%あるわけじゃないし、一番「自由」なはずのアメリカでだってトランプ大統領誕生で摩擦が起きている。
特に日本は「報道の自由ランキング」が年々下がっており、2016年は72位と、香港、韓国、台湾や、タンザニア、マラウイといったアフリカの国々よりも下である。
日本の報道の自由度ランク72位、順位10以上後退
住んでる家や街のインフラは古いかもしれないし給料も少ないかもしれないけど、同じように人生を楽しんで、同じかそれ以上に幸せに生きているのかもしれない。
10月下旬、NHKスペシャルのマネー・ワールドという番組で取り上げられていた「最も裕福な62人と、下位36億人の資産が同じ」という超格差社会
22億ドル(2500億円)の資産を持つビリオネアのハバード氏が、番組の最後で2500万ドル(28億円)のボートに乗ってこう語る。
「いろんな大きさのボートがあるね。小さなボート、中くらいのボート。
彼らは私と同じくらい楽しそうだ。もしかしたら私よりもね」
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