バック・トゥ・ザ・フィーバー「2度目の見逃し三振はもう許されない」

 やっとというか下げが来ました。

このところかなりのAIバブルで歪な上昇相場が続いていましたが、期待に届かない2Q決算発表で崩れ出し、金曜の雇用統計で冷水を浴びせられた格好。

さらに週明けに下げ耐性が低い日本の過剰反応で米国市場に引き継ぐ形になりました。

下落幅のブラックマンデー越えがニュースのヘッドラインで踊っていますが、デイトレでもしていない限り日足の下落幅で見るのは意味がなく、下げて上げての往復ビンタもよくある動きなので短期的なクラッシュに惑わされてはいけません。

実際、1987年10月20日の下げ以降に日経平均は回復して1989年12月29日のバブル崩壊前まで上昇基調にありました。

ダウ、S&P500(米国経済)

雇用統計を受けてシカゴ連銀のグールズビー総裁が「単月の数字に過剰反応したくない」と発言しているように、単月の数字が出ただけで過剰反応すぎるというのが足元の所感。

この点、同総裁が「失業率が中立の水準※よりも高くなる場合、それはまさに当局が法律で考慮と対応を義務付られている責務のもう一方に痛みが及んでいることになる」とも指摘している通り、FRB(米連邦準備制度理事会)と日銀(日本銀行)で決定的に違うのは、FRBの政策目標は「最大雇用と物価の安定」という2つの使命(デュアルマンデート)があるということ。一方で日銀に課されている使命はインフレ率2%だけで雇用については入っていません。(※4%の完全雇用水準に対し、足元では4.1%から4.3%に上昇しています)

現在は元々利下げが見込まれていた9月17-18日のFOMCで50bpsの利下げがされるかが注目されていますが、それも8月14日の消費者物価指数(CPI)や9月6日の雇用統計の結果次第といったところがあります。

と考えると、上記指標発表を待たずしてこのままダウやS&P500が下げ続けるのは考えにくく、短期的には持ちこたえるものと見ています。

ちなみに日本の暴落のあとに開いたニューヨーク市場では、窓を開けて下げて始まったものの、日中はもみ合いながらも始値が最安値となる堅調さでした。当地午前10時に発表されたISM非製造業景気指数が市場予想より高かったのも影響していると思います。遅行指標である雇用統計に対して先行指標であるISM非製造業景気指数がよかったのは今後の見通しを改善するものではあったと思います。

ただ長期的には不況入りの蓋然性は高いでしょう(以下グラフは月足ベース)。

過去30年間、利下げ局面では漏れなく株価下落が起こっているという歴史もさることながら、雇用者数は伸びていても増えているのはPart-time WorkerでFull-time Workerがリストラされまくっているという内訳、そしてAIバブルでレバレッジが過去最大にかかりまくってる現在の状況も、相場が逆回転したときのダメージは大きくなります。

まあ満期を引き延ばしてCRE(商業用不動産)の含み損に悲鳴を上げている業界にとっては利下げは願ったりかなったりで、むしろ利下げを加速してもらうのを望んでいるのかもしれません。

日経平均(日本経済)

一方で日本はやっちゃった感が半端ないです。

森永卓郎氏の「世界の景気がどんどん悪化していて、イギリスは利下げ、景気を刺激する方向に金融政策を変えた。アメリカも9月に利下げに行く。その中で日本だけが先週、利上げをするっていう逆噴射、暴挙に出たわけですね。それが背中を押して大暴落につながった」という発言が的を射ていると思います。

これと同じことをやっちゃったのが1990年のバブル崩壊。

アメリカが利下げをしている中で1990年1月に175bpsもの大幅利上げを実施、そこから1年間6%の水準を維持し続けて1991年1月にやっと50bps利下げしています。

そして日経平均はご存じの通り、1989年12月29日の大納会に最高値を付けたあと、34年と2カ月経った今年の2月22日まで当時の水準に戻ることはありませんでした。(その間に消費税も上がり、物価も上がり、日銀が紙幣を擦りまくったことを考えると実質的には戻っていないという感覚ではありますが…)

今回も世界経済に逆行して動いたわけですがまだ値上げ幅は25bps。今後の展開次第ではありますが追加で30年失ってしまったらシャレになりません。

当時よりサプライチェーンのグローバル化も進んでいるのに、この期に及んで欧米の状況を見過ごして逆方向に動いてしまうのか…。

以前炎上した財務省の資料の言葉を借りるなら「2度目の見逃し三振はもう許されない」といったところでしょう。



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