自分のペダリングとランの真髄を考察する

でぃすくれいまー


今回はいろいろと考察したことを書き連ねていくものの、以下はあくまで自分個人の認識であって万人にあてはまるわけでもなく、ましてや自分の意見を押し付けるわけでもない点をまず強調させていただきたい。

高回転とトルク型という相反するペダリングスタイルのプロ同士がマイヨジョーヌを取り合ったり、ダンシングとシッティングでクライミングスタイルの異なるプロ同士が山頂勝負をするように、唯一の正解はなく、「個々人にとって最も適した効率の良いスタイル」がその人にとっての「正解」なのだと思う。



よって、「正解」は人の数だけ、個々人の性質の数だけある。

タイトルに「自分の」とつけたのも、それを意識してのことである。

ペダリングもランニングフォームもいろんなアプローチがあるし、そもそもランニング初心者の自分は神学論争に加わる資格すらなく、あくまで個人の戯言として参考程度にとっていただけたら幸いである。

なぜなら、なんでこんなエントリしているかというと、単にランニングシューズ選定エントリの前置きだから・・・(爆)

ということで序文はこれくらいにして考え連ねたことをつらつらと書いていきたい。

「慣性」と「重力」という概念


自転車仲間との会話の中で「できるだけ筋肉を使わないでペダルを踏む」という発言をしたことがある。

このブログでもペダリングスタイルについて何度か触れたことがあるが、自分のペダリングは基本的に「重力で踏む」スタイル

身も蓋もない言い方をすれば、「左右のペダルに体重を乗せてるだけ」なのである。

では何に筋肉を使っているかというと、重力を推進力に活用するための荷重移動であり重心制御。

スピードの本質は慣性で、体重60kgなら60kg(自転車の場合はさらに車体重量も含む)の物体が水平移動している慣性を維持するために重力を、そして重力を「変換」させた推進力を使う。

この「変換」に使うのが重心制御であり、ペダリングであり、駆動系であるわけである。

重心・・・、Center of Gravity。

一般的な「ペダリング教科書」では、時計のように横から見た平面の2次元で説明されるが、実際にはQファクター分左右が離れ、車体も斜めに倒立振子のように振れるし、人体も左右が連動して動くので、重心制御は3次元で考えないといけない

単なる上下動であれば股関節と膝関節の伸展で話しは済むが、3Dだからこそ、内転筋や内側広筋、腹斜筋や中臀筋といった内転、外転、内旋、外旋に関わる筋肉が重要になってくる。

重心制御とペダリングを詳しく分解すると、物理ベクトル上、最も重力を推進力に変換させやすい3時前後の段階で片方のペダルに重心を乗せる一方で、9時前後に位置する逆側のペダルへの荷重がブレーキになるため抜重し、どちらのペダルへの荷重もブレーキになる上下死点前後ではサドル&ハンドル荷重で両ペダルから抜重して回転しているクランクの慣性を維持、さらにトルクが必要であればハンドルを引いて垂直抗力に加重する。

そして、ペダル、サドル、ハンドルの3点間で荷重移動を自由自在に制御するのに使うのが筋肉となるわけである。

そう、筋肉はペダルを押したり引いたりするためではなく重心制御のために使う

ゆえに、抗重力筋であるポステリオール筋肉群(姿勢維持筋)が主動筋になる。

そしてポステリオール筋肉群は遅筋優位であるため、ヒルクライムやマラソンといった長時間有酸素運動との相性も良い。

これらについては以前のエントリでも取り上げ済みなので詳しくはそちらをご参照いただきたい。

ポステリオール筋肉群が遅筋優位なのも、上掲した自動車の話と同じく日常生活の中からその理由がわかる。

ニュートンが重力を見つけたように、我々は常に地球に体重分の重力を引っ張られ、その分だけ垂直抗力を発揮して重力に逆らって生きている。

歩いているときはもちろん、ただ単に立っているだけでも、体重60kgの人であれば60kg分の垂直抗力で地球に対して押し返しているのである。



60kgのバーベルを1時間持ち上げ続けるのがいかに大変かということを考えれば、体重の重力分を常に支えているというのはかなりの長時間筋出力なわけである。

つまり我々は日常生活の中で常に重力に逆らって姿勢を維持しているので、姿勢維持筋が低強度長時間に特化した遅筋繊維優位だというのはむしろ人間の身体構造上当然の帰結なのだと言える。

スクワット型よりデッドリフト型ペダリングへ

ランニングでの「慣性」と「重力」


自分がランをするときの意識も慣性と重力に収斂していく。

自転車が重力を応用したペダリングで慣性を維持するスポーツであれば、ランニングは重力を応用したSSC(伸張―短縮サイクル)で慣性を維持するスポーツである。

伸張―短縮サイクル運動について説明する。人間は、走ったり、跳んだりする時、地面に対して、自らの体重を受 け止め、もとの状態に跳ね戻す能力を持っている。この能力は、着地する時の衝撃から運動器官の損傷を防ぐためだけではなく、様々なスポーツ場面において優れたパフォーマンスを発揮するためにも重要である。例えば、陸上競技の跳躍種目における踏切動作、またはバスケットボールやハンドボール等の球技種目にお けるフットワークは、極めて短い時間のなかで、跳ね返るように方向変換する運動能力が要求される。

このような踏切動作やフットワークを行っている時、ふくらはぎの筋肉がどのように収縮しているのかをみてみよう。ふくらはぎの筋肉の一つである腓腹筋 は、アキレス腱という人間の体のなかで一番大きい腱と直列に付着しており、これを腓腹筋―アキレス腱複合体と定義している。この筋腱複合体は、地面に接地すると同時に強制的に引き伸ばされながら身体のもつ運動エネルギーを受け止め、その後、縮みながらキック動作を行っている。このように筋腱複合体を伸ばしてから縮めるような運動は、伸張―短縮サイクル(Stretch-Shortening Cycle: SSC)運動と呼ばれ、ヨーロッパを中心とした研究グループによって、そのメカニズムが明らかにされてきた。

伸ばしてから縮める:伸張―短縮サイクル運動

ロッキングチェアーのように動くウォーキングと違って、ランニングは反発力を利用して跳ぶ意識に近い。

ストレッチ・ショートニング・サイクル(SSC:Stretch Shortning Cycle)あるいは伸長-短縮サイクルは、エキセントリック(遠心性)な筋収縮から素早くコンセントリック(求心性)収縮へ切り替えて力を発揮する運動で、通常のコンセントリック収縮よりも大きな力を効率よく発揮できる仕組みです。

SSCが通常のコンセントリックな力発揮よりも大きな力を発揮できる要因として、
  • 伸張反射の活用
  • 予備伸長により筋線維束が長くなる
  • 腱などの結合組織と筋に弾性エネルギーを貯蔵・再利用
  • 関節モーメントの増大  etc...
といった要因が考えられています。

有名な例は、「カウンタームーブメントジャンプ(反動をつけたジャンプ)の方がスクワットジャンプ(スクワットの姿勢から跳ぶジャンプ)よりも高く跳べる」というやつですね(しかしこれに関して、カウンタームーブメントジャンプのほうが高く跳べる要因は関節モーメントの増大が主なもので、他の要因は補助的なものにすぎない、とする研究もあります。Bobbert et al. 1996.)。

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別の例を挙げると、連続でジャンプした時や走っているときに感じられるばねのような感覚はSSCによって力を発揮しているためだ、といえます。

瞬間的なパワーの向上のために知っておきたいストレッチ・ショートニング・サイクルとプライオメトリクストレーニング

ランニングの着地時には体重の3~4倍の衝撃がかかると言われるが、それはすなわち体重の3~4倍の垂直抗力が瞬間的に発生しているということである。

デッドリフトやスクワットで体重の3倍の重量を挙重するとなると、トレーニングを積んだ上級者でないと難しく、その場合でも10レップス程度が限度で、体重の3倍を100回連続で挙重するなど不可能に近い

一方で、体重の3倍の垂直抗力は一歩一歩で、180spmなら1分間に180回も発生しているわけである。

こう考えると、この莫大な垂直抗力を利用しない手はない。

となると、おのずと自分が欲しいシューズの特性も決まってくる。

せっかくの衝撃を吸収してしまうよりも、衝撃を利用できる反発力の高いもの。

ドスンドスンと衝撃を受け止めながら走るより、下腿をバネのようにして、SSCを活用して垂直抗力を推進力に変換するのに資するもの。

なんて理論的な概念論をぶちまけても所詮はまだまだランニング初心者。

関節への衝撃がなくコンセントリック収縮が中心の自転車と違って、ランでは筋腱複合体の強化も必要になるし、エキセントリック収縮も必要になる。

シューズもいいが、やはり最重要事項はラン用の体を作り上げることだろう・・・。

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