が、中国では報道規制が引かれ、その事実自体が中国が米国に屈したことを自ら証明してしまっているともいえる。
米中両政府が13日に公表した貿易協議の「第1段階の合意」を巡り、中国当局が国内での関連情報を厳しく統制している。対米強硬派から「米国に譲りすぎだ」との批判が強まるのを警戒しているとみられる。
「そもそも勝ったの?負けたの?」「恐らく中国が譲歩したのだろう。何がウィンウィンだ」。13日深夜、中国国務院(政府)が緊急記者会見で合意を発表すると、インターネット上にはこんな書き込みがあふれた。
米中合意、情報統制厳しく 中国、報道制限・アナリストリポートも削除
それをビジュアル的に表しているチャートがこちら。
米中の貿易額でブルーの線はアメリカが中国から輸入した額、ライトグリーンの線はアメリカが中国に輸出した額、赤塗りの部分がその差額=アメリカの貿易赤字(つまり中国にとっては黒字)を示している。
これを見ると輸入(つまり中国からみたら中国製品の輸出)もアメリカ製品の輸出も減り、双方血を流してはいるが、中国の出血量の方が遥かに大きかったことがわかる。
逆にアメリカは赤字額を2010年代前半の水準まで縮小することに成功。
肉を切らせて骨を断つ、まさに関税合戦の結果は米中二国間に限れば※アメリカの勝利であろう(※二国間の貿易額自体が減っているので、真の勝者はその恩恵を受けた台湾、メキシコ、ベトナムだともいえる)。
まあそもそもアメリカの輸入額(=アメリカが関税をかけて圧力をかけれる分)が輸出額より圧倒的に多いので、中国は手持ちで切れるカードで圧倒的に不利な戦いだったともいえる。
ちなみに農産品の輸出量の内訳がこちら。合意内容に従って中国が輸入を増やせば、2013年時点を大幅に超える量がアメリカから輸出されることになる。
ただ、これら農産物の輸出拡大は今に限ったことではなく、そもそも土地余りで農産物の過剰在庫を抱えるアメリカは、歴史的にも各国へ政治的圧力を持って売りつけてきた。
第一次世界大戦ではヨーロッパ各国へ売りつけ、
第一次大戦中から戦後にかけて、アメリカの農産物輸出および農業生産は飛躍的に増大した。一九一九年の農産物輸出は実に四一億ドルに達し、アメリカの史上かつてない記録的水準を樹立した。ところで、このアメリカからの農産物輸出を可能ならしめたきわめて大きな要因の一つは、同国の欧州諸国に対する巨額の借款供与であった。その金額は一九一七年から二〇年にかけておよそ一〇〇億ドルに達したといわれる。この借款金額は、アメリカの穀物や肉類、綿花、武器類等に対する購買力として、連合諸国に大きな貢献をなした。
アメリカの農業政策と貿易政策 -過剰農産物問題への歴史的視点-(PDFリンク)
第二次世界大戦では敗戦国の日本へ売りつけ、
戦後、食糧不足の際に、アメリカの小麦と脱脂粉乳で学校給食がスタートし、多くの子どもの命を救ったことは有名である。
ただアメリカは無償で小麦粉を配ったわけではなく、自国の余剰小麦のはけ口として、さらには将来の小麦の客として育成するという戦略を持って取り組んでいた。
「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活
学校給食への浸透は成長期の日本人を洗脳(洗味覚)し、食文化を変えるほどまでになった。
アメリカは特に第2次世界大戦の戦争特需が一段落した後に現れた穀物の過剰在庫の処理に苦慮していた。そこで小麦やトーモロコシなど在庫量の多い穀物の減反政策を進めたが、これに対して農家は減反した畑に大豆を蒔いて収入減に対応したため大豆の在庫も増えていくことになる。1954年には「余剰農産物処理法」を制定し、アメリカ国内で処理しきれなくなった穀物の過剰在庫は戦争の傷跡の消えないヨーロッパやアジアの飢餓解消として払い下げられていくのであった。
我が国に払い下げられた小麦はパン食を中心とする洋食化の推進に、トーモロコシや大豆粕は畜産飼料原料として肉食、乳製品の普及に力となって、それまでの米を中心とする和食を駆逐していくことになる。さらに戦勝国となったアメリカは映画などを通じて豊かなアメリカの食生活を発信し続け、その姿に憧れる貧しかった日本人を肉食生活に誘導していったのであった。これは我が国に限ったことではなく広く世界に肉食を中心としたアメリカ食文化を広めていった。
戦争で拡大したアメリカ農業と大豆
世界中が巻き込まれてきたアメリカの農産物在庫押し売り政策・・・。
今回はその番が中国に回ってきたのであり、日本からしてみれば「いつか来た道」を彼らも通ってるといえる。
なお、合意文書はこちらで全文読むことができる。
ECONOMIC AND TRADE AGREEMENT BETWEEN THE UNITED STATES OF AMERICA AND THE PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA (PDFリンク)
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